肩透かしを喰らう

1年半ぶりに婦人科検診に行ったら、小さなポリープが１つ見つかった。ポリープ自体はよくあることなので心配はないが、どの程度の大きさなのか知っておきたいし、必要なら切ってしまった方がいいからと、エコー検査を受けるように言われた。

こういうことはさっさと片付けてしまうに限る。すぐにエコー検査の予約を入れた。

あっさり予約が取れたのは良かったが、検査前の注意書きを読んだところで慌ててしまった。検査の1時間前に水を500ml飲み、以降の排泄を控えて来るように、とあったのだ。

外出前には必ずトイレを済ませておくこと、これはこちらに住む者にとっては鉄則だ。外出先に綺麗なトイレがあるとは限らない、それどころかトイレそものものがあるとは限らない。トイレは可能な時に済ませておくべし。そして外に出るとわかっているときは直前の水分摂取は控えめにすべし。そうやって対策することが身についてしまっている。いくら家から近いラボだといっても、ラボにトイレがあることはまちがいなくとも、なんという無謀な要求をしてくるのか？しかも半リットルとか！

激しく逆らおうとする心の声を圧し潰し、常温の水よりはマシかと思って白湯を500ml、きっちり1時間前に一気飲みした。そうして少しでも体を冷やさないように厚目の靴下とストールで要所をしっかり暖かくしてから出かけた。トイレのことなんて忘れてるんだ。膀胱がたぷたぷとか気にしないんだ。気を逸らそうとすればするほど逆に下腹部に意識が行ってしまい、歩きながらほとほと困った。

ラボには予約の15分前に着いた。必要な事務手続きを済ませ、あとは順番を待つだけというところになって受付のマダムが言った。それではこのままトイレを済ませて待合室でお待ちくださいね。

はぁ〜？顔も声も思いっきり激しく反応してしまった。注意書きに500mlの水を飲んで来いと書いてあったので、その通りにしてきたんです、今トイレに行ってしまっていいんですか？

あぁ、それはですね。マダムは言った。あなたはさっき経膣エコーの同意書にサインしたでしょう？その場合は膀胱をいっぱいにしておく必要はないんですよ。中には経膣エコーを望まない人もいますから（その場合は妊娠時と同じようにお腹の上からエコーをする）、そういう人のためにあの注意書きがあるんです。

なんだ。そうだったの。それならそうと書いておいてくれればいいのに。わたしのあの心配、朝から緊張して準備してきたあの時間、頑張ってトイレのことを考えないようにしながら歩いてきたあの道中、あれは全部全部無意味だったのね。。。。肩透かしを喰らったことにブツブツ文句を（内心で）言いながら、それでも清潔なトイレで、これ以上は1秒も待てないという緊急状態に陥る前に用を済ませられた幸運を（内心は万歳三唱くらいの気分で）かみしめた。

ポリープはごく局所的な小さなものだから放っておいても大丈夫らしい。心も足取りも（ついでに膀胱も）軽く帰ってきたわたしである。

尾篭な話ですみませぬ。