2022年 10月 05日
「日本の」味噌汁 |
息子たちは学校に行く朝はご飯を食べる。こちら風の、パンにバターやジャム、ジュースやホットチョコレートに果物といった朝食では昼食まで保たない、エネルギー切れで頭が働かなくなると言う。そんなわけで、うちの息子たちは朝から白いご飯とタンパク質系のおかず、スープの3点セットをしっかり食してから出かけていく。
スープの種類はその時々で変わる。味噌汁のこともある。ミネストローネ風のこともある。根菜のポタージュにすることもある。ご飯とそれを組み合わせるの?と思うこともないわけではないけれど、目的は朝からしっかり野菜を摂ることなので、洋風だろうが中華風だろうが細かいことは気にしない。
野菜を摂ることが目的なので、とにかく野菜をたくさん使う。18センチの鍋の蓋が閉まるギリギリの量まで野菜を切って入れる。その野菜の隙間に水分を入れ野菜が柔らかくなるまで煮る。野菜の嵩が減ってきたところで適宜水を加え、汁物らしい体裁を整える。これが2人の朝食プラスわたしの昼ご飯分の基本量。出来上がりは、よくいえば具だくさんスープ、悪くいえば野菜の煮物(汁たっぷり)、といった感じ。それでもこれが味噌味仕立てなら、わたしはこれを味噌汁と呼ぶ。
息子たちはたまに、日本の味噌汁が懐かしいなぁと言うことがある。味噌汁なんて1週間に少なくとも3回か4回は食べているじゃないと言えば、そうなんだけど、でもあれじゃないんだ、あれはあれで美味しいから好きなんだけど、そうじゃなくてお椀の中に汁がメインでそこにピラッとワカメとか小さい豆腐が入っているだけの味噌汁が食べたくなるんだよ、あれこそザ・日本の味噌汁って感じがするんだよね、とのこと。そんな彼らだから、日本行きの飛行機の中で供されるミソスープ(わたしに言わせればあれこそナンチャッテ味噌汁だよ)はかなり嬉しいらしい。日本に着く前から気分が高まる〜と言う。人の気も知らないで。家庭料理人としてはおもしろくない。
という話を先ごろ日本にいる叔母にしたところ、うちもそうなのよ〜と大いに盛り上がった。叔母もわたしと同じで味噌汁にはできるだけ野菜をたくさん入れるようにしているという。野菜が摂れるし汁の量が少なくなるぶん味噌の塩分も減らせるから。でも、叔父がボソッと言うことがあるそうだ、たまには料亭の味噌汁みたいなのが食べたくなるよな、と。ちょっと味噌の分量をいつもより多めにしてしまったときには、今日の味噌汁は旨いな、と。そりゃあ気持ちがわからないでもないけれど、仕事がら外食する機会は頻繁にあるんだし、そういうお上品な味噌汁(一口目からしっかり味を感じる塩加減)は外で食べればいいじゃないって思うのよ、うちで出すのは外では絶対に食べられないものなんだから。わたしに負けず劣らず叔母の鼻息も荒い。
日本の味噌汁や吸い物の味わい深さと見た目の美しさはたしかに捨てがたい。たま〜に特別な料理としてなら作ってもいいと思う。でも日常生活の中ではできるだけ野菜たっぷりのままでいきたい。学食での野菜摂取量なんてたかが知れている。たくさんの野菜を苦もなく食べきれる具だくさんスープ、しかも家庭だからこそできる薄味、見た目は田舎っぽくても色々考えるとわりと贅沢な一品だと思うのよ。
寒い朝の根菜たっぷりの味噌汁は体が中からあたたまって嬉しいもの。ピラッと豚肉を入れて豚汁っぽくしてもいいし、豚肉とキムチの汁をちょっとだけ炒めてから野菜を加えて煮れば韓国風のスープになる(朝なのでキムチの汁はほんの少し香りをつける程度にとどめる)。豆やかぼちゃの入った、煮溶けた野菜でとろみがついた塩味だけのスープも美味しい。そこにちらっとポルトガルのチョリソの破片を入れると、そのスモークの香りと豚肉のコクで一層味わい深くなる。いつもの野菜にフェンネル(株)を加えて鶏ガラスープで煮て最後にコリアンダーのざく切りを加えると、今度はちょっとオリエンタルな風味のスープが出来上がる。これにひよこ豆を加えればもう主役級の1皿。最低気温が10度を切るようになった最近、朝のスープはタンパク質系おかずを超える食卓の花形だよな〜と思う。息子たちは賛成しないかも知れないけれど。
by poirier_AAA
| 2022-10-05 17:58
| 味わう
|
Comments(10)
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fusk-en25 at 2022-10-05 18:50
ほんと寒くなりましたね。
野菜たっぷりのごった煮風スープは、
一人でも時々作って。ただし2回か3回に食べる。
1回目は素味(笑)2回目はクリーム入れたり。
炊きすぎてクタッとなったらボタージュに変身させる。
味噌味はやったことないのですが。
うどん入れたらほうとうになるな。なんて思いました。
野菜たっぷりのごった煮風スープは、
一人でも時々作って。ただし2回か3回に食べる。
1回目は素味(笑)2回目はクリーム入れたり。
炊きすぎてクタッとなったらボタージュに変身させる。
味噌味はやったことないのですが。
うどん入れたらほうとうになるな。なんて思いました。
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poirier_AAA at 2022-10-05 19:35
> fusk-en25さん、こんにちは。
わたしはごった煮風スープは基本塩味か味噌味ですね。クリームは絶対に入れない(息子が嫌いだから)。ポタージュは緑色の野菜と人参のオレンジがまざるとヘドロ色になってしまうので、これだけは最初からそのつもりで色合いを考えて作ります(緑系の野菜だけ別に煮て最後に潰さないで加える)。義母はわりと大胆にポタージュを作るので、たまにものすごい色のポタージュが出来上がって皆でびっくりしてしまうのです(でも味はものすごく美味しいから、食べているうちに色を忘れる。笑)。
ほうとうもいいけど、もっと手軽にすいとんにすることが多いです。あの小麦粉でトロッとしたいつもより気持ち濃い目の味噌味、かぼちゃやキノコ、卵なんかが入っているとさらに美味しくって、冬にはご馳走ですね。
わたしはごった煮風スープは基本塩味か味噌味ですね。クリームは絶対に入れない(息子が嫌いだから)。ポタージュは緑色の野菜と人参のオレンジがまざるとヘドロ色になってしまうので、これだけは最初からそのつもりで色合いを考えて作ります(緑系の野菜だけ別に煮て最後に潰さないで加える)。義母はわりと大胆にポタージュを作るので、たまにものすごい色のポタージュが出来上がって皆でびっくりしてしまうのです(でも味はものすごく美味しいから、食べているうちに色を忘れる。笑)。
ほうとうもいいけど、もっと手軽にすいとんにすることが多いです。あの小麦粉でトロッとしたいつもより気持ち濃い目の味噌味、かぼちゃやキノコ、卵なんかが入っているとさらに美味しくって、冬にはご馳走ですね。
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きゃすぴえ
at 2022-10-06 04:12
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わー、奇遇です、私も「久々に味噌汁が朝ごはんに欲しいなあ」と思っていたのでした。日本人に日本食だから、そんな奇遇でもないか。
具沢山でも小さな豆腐にわかめがピラッとでも、朝から鍋を出して野菜を切って汁物を調理するなんていう手間と愛情をかけた朝食を作る人は我が家にはいませんので、うちの汁物は夕飯です。母に「味噌汁は本来朝のもの」と聞いたときは、それは初耳だなあ、うちは朝は電子レンジとヤカン以外の調理器具は稼働しないなあ、と思いましたが。
これからの時期は私は粕汁です。
たっぷり作って温め直して、餅やうどんを入れたりもします。
具沢山でも小さな豆腐にわかめがピラッとでも、朝から鍋を出して野菜を切って汁物を調理するなんていう手間と愛情をかけた朝食を作る人は我が家にはいませんので、うちの汁物は夕飯です。母に「味噌汁は本来朝のもの」と聞いたときは、それは初耳だなあ、うちは朝は電子レンジとヤカン以外の調理器具は稼働しないなあ、と思いましたが。
これからの時期は私は粕汁です。
たっぷり作って温め直して、餅やうどんを入れたりもします。
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Mtonosama at 2022-10-06 05:10
叔母様の話に同感です。夫にお味噌汁で野菜を食べさせようとたくさん入れても汁だけ飲んで具は全部残してあります。そして「具沢山の味噌汁は味噌汁とは言わない!」とほざきます(怒!)
キャスピエさんのおっしゃる粕汁は大好きですが、これも夫は飲みません。嫌いなんですと。
あ、今日は粕汁にしよっと。
キャスピエさんのおっしゃる粕汁は大好きですが、これも夫は飲みません。嫌いなんですと。
あ、今日は粕汁にしよっと。
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ひかり
at 2022-10-06 17:12
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…反対側になってしまいますが…
よく、母が作る具沢山のこれでもか!
というみそ汁に、子どもの頃に辟易とした覚えがあり…
甥っ子が、「母さんのみそ汁は汁が少なくて…」
とぼやいているのに、思わず吹き出して心の中で賛同してしまいました…
わかめピラ…はないですが、汁:具が半々くらいに留めております…
よく、母が作る具沢山のこれでもか!
というみそ汁に、子どもの頃に辟易とした覚えがあり…
甥っ子が、「母さんのみそ汁は汁が少なくて…」
とぼやいているのに、思わず吹き出して心の中で賛同してしまいました…
わかめピラ…はないですが、汁:具が半々くらいに留めております…
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poirier_AAA at 2022-10-06 18:10
> きゃすぴえさん、こんにちは。
わたしたちも(つまり夫とわたしも)、朝はずっとヤカンだけで済む朝食でした。息子たちが学校に行くようになってからですね、朝からご飯を炊いたり調理したりと手をかけなければならなくなったのは。だから朝ごはんを頑張らなくていい日曜日の朝が、わたしにとっては週に1回の極楽なのです。
粕汁ですか〜。たしかに温まりそうですね。温かいものが嬉しい季節になってきました。(余談ですがポルトガルの義両親のところは最近また30度の日があったそうです。信じられない。気候の変化が恐ろしいです)
わたしたちも(つまり夫とわたしも)、朝はずっとヤカンだけで済む朝食でした。息子たちが学校に行くようになってからですね、朝からご飯を炊いたり調理したりと手をかけなければならなくなったのは。だから朝ごはんを頑張らなくていい日曜日の朝が、わたしにとっては週に1回の極楽なのです。
粕汁ですか〜。たしかに温まりそうですね。温かいものが嬉しい季節になってきました。(余談ですがポルトガルの義両親のところは最近また30度の日があったそうです。信じられない。気候の変化が恐ろしいです)
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poirier_AAA at 2022-10-06 18:17
> Mtonosamaさん、こんにちは。
なぬ〜。それはちょっと失礼すぎませんか、ご夫君。お行儀が悪いぞ。
「具沢山の味噌汁は味噌汁とは言わない!」というなら、別の名前をつけてニッコリ笑って供するだけです(気に入らないなら自分で作れや!と、腹の中ではどやしつけながら。ほほほ)。
なぬ〜。それはちょっと失礼すぎませんか、ご夫君。お行儀が悪いぞ。
「具沢山の味噌汁は味噌汁とは言わない!」というなら、別の名前をつけてニッコリ笑って供するだけです(気に入らないなら自分で作れや!と、腹の中ではどやしつけながら。ほほほ)。
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poirier_AAA at 2022-10-06 18:25
> ひかりさん、こんにちは。
あはは。そうか、うちの息子たちもわたしのこれでもか!の具沢山ぶり、汁の少なさぶりに辟易しているんでしょうね。「そういえば、うちの母の味噌汁は汁が少なかったよな、、、、」息子たちが将来そんなふうに思い出すことがあるかもと想像すると、ちょっと可笑しいです。
個人的に「わかめピラ」はやりたくないので、たまには半々くらいのところで妥協してみてもいいかな、なんて。
あはは。そうか、うちの息子たちもわたしのこれでもか!の具沢山ぶり、汁の少なさぶりに辟易しているんでしょうね。「そういえば、うちの母の味噌汁は汁が少なかったよな、、、、」息子たちが将来そんなふうに思い出すことがあるかもと想像すると、ちょっと可笑しいです。
個人的に「わかめピラ」はやりたくないので、たまには半々くらいのところで妥協してみてもいいかな、なんて。
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あみーな
at 2022-10-10 14:58
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お味噌汁、実家は家族構成の都合で薄味だったので、調理実習で指定の味噌の量が倍で驚きました。
お吸い物の実習では、塩分量違いで数パターン作って味を試して、一般的においしいと感じる濃さがあるからきちんと測ろう、でも食べ合わせによっては少し薄めの方が丁度よいことも、って説明に、家政科は理系、を納得したことがあります。
家系ラーメンだと野菜トッピングの時に湯切りの甘さを見込んでスープ濃い目を選ぶことが多いので、梨の木さん宅の場合は野菜のみずみずしさが理由かも、と思いました。
お吸い物の実習では、塩分量違いで数パターン作って味を試して、一般的においしいと感じる濃さがあるからきちんと測ろう、でも食べ合わせによっては少し薄めの方が丁度よいことも、って説明に、家政科は理系、を納得したことがあります。
家系ラーメンだと野菜トッピングの時に湯切りの甘さを見込んでスープ濃い目を選ぶことが多いので、梨の木さん宅の場合は野菜のみずみずしさが理由かも、と思いました。
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poirier_AAA at 2022-10-10 18:18
> あみーなさん、こんにちは。
あぁそうですね、あみーなさんの実習のように、自分で(家族と一緒に)何パターンか試食してみて、塩梅を味噌の量と自分の舌で確認してみればいいのだと思います。そうしたら薄味もすんなり納得してくれそう。。。
わたしが祖母から言われたのは、一口飲んで美味しいと思う塩加減は塩分が多すぎるから家庭料理としてはふさわしくないということでした。外で食べる食事や客人に出す食事はしっかり塩加減しないと美味しく感じられない(他人のつくったものだから気持ち悪く感じる)けれど、家族が家族に作る食事なら少なめの塩分でも十分美味しく感じられる。薄味をいかせるのが家庭料理の特権だ、と。それを折に触れて息子たちにも説明しているのですが、まだあまり実感がわかないみたいです。まぁ、日本の味噌汁は日本の味噌汁で楽しみにとっておく、というのもありかなとは思っているのですが。
あぁそうですね、あみーなさんの実習のように、自分で(家族と一緒に)何パターンか試食してみて、塩梅を味噌の量と自分の舌で確認してみればいいのだと思います。そうしたら薄味もすんなり納得してくれそう。。。
わたしが祖母から言われたのは、一口飲んで美味しいと思う塩加減は塩分が多すぎるから家庭料理としてはふさわしくないということでした。外で食べる食事や客人に出す食事はしっかり塩加減しないと美味しく感じられない(他人のつくったものだから気持ち悪く感じる)けれど、家族が家族に作る食事なら少なめの塩分でも十分美味しく感じられる。薄味をいかせるのが家庭料理の特権だ、と。それを折に触れて息子たちにも説明しているのですが、まだあまり実感がわかないみたいです。まぁ、日本の味噌汁は日本の味噌汁で楽しみにとっておく、というのもありかなとは思っているのですが。