2022年 01月 24日
求めよ、さらば与えられん |
弟と電話で話しているときに、最近めっきり父が怒りっぽくなった気がする、という話になった。
もともと導火線の短い人で、自分の物理的精神的キャパシティを超えることがあると、すぐにイライラして怒鳴り始める人ではあった。その傾向が年とともに強くなって来たことは、わたしも感じていたことだった。悪い人ではないのだけれど、いつ暴発するかわからないので地雷原を歩くように気をつけながら付き合うしかない。わたしも弟もそうやって父と付き合って来た。
そこに地雷があるとわかっていても、それは違うだろうよと思えば、踏み抜くしかないことだってある。そうして自分が正しいと思うことを主張したせいで、叩かれたこともあれば電話を叩き切られたこともある。短気なわたしはもちろん、わたしよりはずっとのんびりして父をあしらうことがうまい弟も、閾値が違うだけで父とぶつかることはあった。そういう意味でわたしたちは似た者家族だといえる。
ところが、そんなわたしと弟が配偶者として選んだ相手は明らかに毛色が違うタイプだった。
弟の奥さんは本当にできた人で、およそ人に対して悪意を持つことがないように見える。小さなことで目くじらをたてることもないし、父の無神経な言葉にカチンと反応してきつい言葉を吐くこともない。いつもニコニコして「お疲れ様です〜」とお酌してくれるような人である。彼女を前にすると父は牙を抜かれてしまう。
わたしの夫もいつもニコニコして機嫌がいい。自分が何を抱えていたとしても、それを相手にぶつけたりしないし、相手がどんな人でも態度を変えない。人の言葉尻にむかっ腹を立てて激しく言い返すようなこともない。およそ人に文句を言わない。常に機嫌よくマイペースを貫く。わたしが短気を起こしてもスルーしてやりすごすだけの冷静さがある。典型的な日本人男性タイプとはかなり違うため、父もぶつかり方がわからない。
世の中にはさぁ、よくぞこんな人が捻じ曲がることもなく存在していてくれた、って人がいるんだよねぇ。
わたしが言えば、弟も言う。
わかるわかる。僕もいまどき本当にこんな人いるんだ〜ってすごくびっくりしたし。
そうして口を揃える。いや、本当にかけがえのない人たちだよね。
すぐに腹をたてる人を身近に見て育って、わたしたちはそれがどんなものかよく知っているし、なんなら同じことをしてしまえるくらいには馴染んでいる。でも、わたしも弟もそういう怒り直結型ではない人を配偶者に得て、今は自分の容量の足りなさを怒りで解決しようとしないこと、北風型ではなく太陽型で人の心を開くこと、イライラではなく笑顔と共に生活することを日々教えてもらっているところなのかもしれない、なんて思うのだ。ひょっとすると父と同じくらいの年齢になったら、わたしもガミガミ怒りっぽいお婆さんになってしまうかもしれない。それはわからない。でも、せっかくこういう人たちが身近にいるのだから、自分も少しでも穏やかな人間になれたらいいとは思っているのだ。
by poirier_AAA
| 2022-01-24 23:44
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Comments(2)
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Mtonosama at 2022-01-25 06:16
私はできないなぁ。ま、腹を立てた父はもういないし、うまくあしらってくれた母はもうずっと前に、父より先にあちらへ行ってしまったから、もっぱら今は私が怒りまくっています。
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poirier_AAA at 2022-01-25 07:01
> Mtonosamaさん、こんにちは。
わたしもできないんです。でも、自分にはできそうもないことだから余計に憧れるし、そんな例がすぐ近くにあると思うと肖りたくなる。性格なんてそう簡単に変わるもんじゃありませんけど、少しでも自分が気持ち良い方向に変われたら、もう少しうまく生きられるかもなぁなんて夢みたりするのです。
わたしもできないんです。でも、自分にはできそうもないことだから余計に憧れるし、そんな例がすぐ近くにあると思うと肖りたくなる。性格なんてそう簡単に変わるもんじゃありませんけど、少しでも自分が気持ち良い方向に変われたら、もう少しうまく生きられるかもなぁなんて夢みたりするのです。