2018年 01月 30日
通勤読書 |
ある日、帰ってくるなり夫が言った。
穏やかで分別のある人道主義者のようなタイプを想像してしまっても、 無理ないではないかと思うのである。
が、夫の説明によると、まったく違ったらしい。 数々の女性と関係があっただけでなく、 政治活動にも意欲を見せ、 また政治的な過激な発言ゆえに亡命するはめに陥ったり。 そもそも文筆活動だけを見ても十分に精力的だった。 「穏やか」どころか相当に波乱万丈の人生だったのだ。
そのエネルギーに溢れた生活ぶりと、 たとえば「Demain, dès aube」の詩の静かな哀しみが、 どうやって同じ1人の人の中に共存し得たのだろうかと 不思議に思わずにはいられない。
ちょっと聞いてよ、ひどすぎるんだよ。
どきりとした。
おもわず悪い事態を想像して、覚悟した。
知ってる?
ヴィクトル・ユゴーは夫婦揃って外に恋人を作っていたんだよ。
こういう話って、やりきれないよね。
あぁ、本の話だったか。
去年の夫の誕生日に子どもの1人がユゴーの伝記を贈った。
夫はいま通勤のメトロの中でそれを読んでいて、
帰ってくるなり感想を口にしたというわけ。
でも、前置き無しで始めるのはやめてほしい。
心臓に悪い。
しかし、一時の緊張と脱力から回復して話を聞いてみれば、
たしかにいささか驚くような話ではあった。
わたしはフランス文学のことはほとんど何も知らない。
作家に対して抱くイメージは、限りなく根拠のない想像図でしかない。
その独断と偏見に満ちたイメージでは、
ユゴーは知性と愛情に満ちた好好爺、だった。(笑わないでね)
なんといっても「レ・ミゼラブル」を書いた人である。
「死刑囚最後の日」という作品も読んだことがある。
そして「Demain, dès aube」を詩を書いた人でもある。
さらに、よく使われる写真がこれである。
こんなことがあってからじきに、夫は「ユゴー伝」を読み終えた。
さて次は?と、もうひとりの子から贈られた本をみれば、これが重い。
ソルジェニーツィンの「収容所群島」。
こ、これは。。。なぜこの本なの?と子どもに聞けば、
歴史で「グラーグ(強制収容所)」という言葉を習ったから、と。
(えっ、それだけ?)
夫はこれに手をだす決心がつかず(覚悟がきまらず)、
わたしが贈ったブラッドベリの「華氏451度」を手に取った。
ただいま。
あのさ、この本に出てくる消防士は、
火を消すんじゃなくて火をつけるんだよねぇ。
また感想を聞く日々である。
by poirier_AAA
| 2018-01-30 23:56
| 日々の断片
|
Comments(8)
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fusk-en25 at 2018-01-31 00:52
いいですねえ、
こんな会話。
夫がいた頃は。毎朝起きるとその前の晩に読んでいた本の話をしていました。
特に色っぽいものを読んだ時には。
そこのさわりをちょっこっと話してやる。
夫は色めき立って(笑)。あっそれ読むは。。と読み出して。
だいたいぼやきます。
ちっとも色っぽくない。
うふふ。いいとこだけ かいつまんで濃縮して話しているのがわからん
か?
大佛次郎のパリ燃ゆを読んでいたので。
ユゴーは好々爺のイメージより熱血漢と言うか
ちょっと調子にのる感じを持っていたのでした。
こんな会話。
夫がいた頃は。毎朝起きるとその前の晩に読んでいた本の話をしていました。
特に色っぽいものを読んだ時には。
そこのさわりをちょっこっと話してやる。
夫は色めき立って(笑)。あっそれ読むは。。と読み出して。
だいたいぼやきます。
ちっとも色っぽくない。
うふふ。いいとこだけ かいつまんで濃縮して話しているのがわからん
か?
大佛次郎のパリ燃ゆを読んでいたので。
ユゴーは好々爺のイメージより熱血漢と言うか
ちょっと調子にのる感じを持っていたのでした。
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Mtonosama at 2018-01-31 10:15
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poirier_AAA at 2018-01-31 18:33
> fusk-en25さん、こんにちは。
ははは、色っぽい話、ですか。
たしかに、色恋沙汰が出てくる話はすごい速さで読めちゃったりしますね。とにかく先が知りたくてたまらなくなる。馬力がでるのです(あぁ単純〜)。
「パリ燃ゆ」は名前しか知りませんでした。読んでみようとも思ったことがなくて。
さっき調べたのですが、パリ・コミューンの話なのですね。これは是非読んでみなくては。
ははは、色っぽい話、ですか。
たしかに、色恋沙汰が出てくる話はすごい速さで読めちゃったりしますね。とにかく先が知りたくてたまらなくなる。馬力がでるのです(あぁ単純〜)。
「パリ燃ゆ」は名前しか知りませんでした。読んでみようとも思ったことがなくて。
さっき調べたのですが、パリ・コミューンの話なのですね。これは是非読んでみなくては。
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poirier_AAA at 2018-01-31 18:38
> Mtonosamaさん、こんにちは。
そうなんですよねぇ。歴史に名を残している人には、奥さん以外に、という人がかなり多いです。どんな分野の人でもエネルギーが満ち溢れていると、そのエネルギーを流し込む先を本業以外のところでも無意識に探してしまうものなのかな?などと思ったりします。
婚外の関わりを複数持つなんて面倒くさくてやってられないよ、と思ってしまうわたしや夫は、だからエネルギーもほどほどにしかないってことかもしれません(笑)
そうなんですよねぇ。歴史に名を残している人には、奥さん以外に、という人がかなり多いです。どんな分野の人でもエネルギーが満ち溢れていると、そのエネルギーを流し込む先を本業以外のところでも無意識に探してしまうものなのかな?などと思ったりします。
婚外の関わりを複数持つなんて面倒くさくてやってられないよ、と思ってしまうわたしや夫は、だからエネルギーもほどほどにしかないってことかもしれません(笑)
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echalotelles at 2018-01-31 20:46
きっと魅力的な人だったんじゃないかな~
内なる情熱と、外に向かう情熱と…
ちょっと会ってみたかった気がします。
Demain, dès l’aubeは、とても好きな詩です。
ユーゴーの長女のLéopoldineが19歳でセーヌ河での舟の事故で亡くなった後に書かれた詩ね。とても悲しい出来事…
詩人としてのユーゴー、素晴らしいと思います。
通勤読書の続編、楽しみにしています♪
内なる情熱と、外に向かう情熱と…
ちょっと会ってみたかった気がします。
Demain, dès l’aubeは、とても好きな詩です。
ユーゴーの長女のLéopoldineが19歳でセーヌ河での舟の事故で亡くなった後に書かれた詩ね。とても悲しい出来事…
詩人としてのユーゴー、素晴らしいと思います。
通勤読書の続編、楽しみにしています♪
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poirier_AAA at 2018-02-01 16:20
> echalotellesさん、こんにちは。
あぁそうですね。魅力的な人だったかもしれませんね。
夫が(つまりわたしは全部夫から情報を得ていたので)、この人は不幸だったのじゃないかと言うのです。両親もうまくいっていない家庭で育ち、自分の結婚生活もうまくいかなくて、最愛の娘まで亡くすことになって。公の姿(名声を得てパンテオンに眠る作家)とは裏腹に、私生活は恵まれない人だったのではないか、と。たしかにそういうふうに感じる部分はあるのですけれど、それは人間的な魅力とはまた別な話ですものね。
わたしも詩人のユゴーが好きです。ユゴーが詩人だったなんて、こんなにいい詩を書いていたなんて、フランスに来てから初めて知りました。フランス語がわかってよかった、と、こんな出会いがあると思いますね。
あぁそうですね。魅力的な人だったかもしれませんね。
夫が(つまりわたしは全部夫から情報を得ていたので)、この人は不幸だったのじゃないかと言うのです。両親もうまくいっていない家庭で育ち、自分の結婚生活もうまくいかなくて、最愛の娘まで亡くすことになって。公の姿(名声を得てパンテオンに眠る作家)とは裏腹に、私生活は恵まれない人だったのではないか、と。たしかにそういうふうに感じる部分はあるのですけれど、それは人間的な魅力とはまた別な話ですものね。
わたしも詩人のユゴーが好きです。ユゴーが詩人だったなんて、こんなにいい詩を書いていたなんて、フランスに来てから初めて知りました。フランス語がわかってよかった、と、こんな出会いがあると思いますね。
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germanmed at 2018-02-07 05:44
ソルジェニーツィンの「収容所群島」とは、素晴らしい直感!息子くんと将来語りたい~。
これを読むと、ドストエフスキーの「死の家」なんて保養所みたい。今の自分の生活が極楽みたいに思えます。
ああ、落ち着いたらまた読みたいわ。
本当かどうか知りませんが、エミールを書いたルソーが自分の子どもは孤児院に捨てていたとか、クリストファー・ロビンのモデルになったミルンの息子は淋しい子ども時代を送らされていたとか、ピカソが「おれはピカソだ。おれと寝ろ」と声を掛けていたとか、色々聞きますよね・・・まったく、男って。
これを読むと、ドストエフスキーの「死の家」なんて保養所みたい。今の自分の生活が極楽みたいに思えます。
ああ、落ち着いたらまた読みたいわ。
本当かどうか知りませんが、エミールを書いたルソーが自分の子どもは孤児院に捨てていたとか、クリストファー・ロビンのモデルになったミルンの息子は淋しい子ども時代を送らされていたとか、ピカソが「おれはピカソだ。おれと寝ろ」と声を掛けていたとか、色々聞きますよね・・・まったく、男って。
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poirier_AAA at 2018-02-07 18:40
> germanmedさん、こんにちは。
えっ、しろくまさんは「収容所群島」を読んだのですか!う〜む、それはすごい。わたしは夫の本をパラパラ拾い読みしただけですが、読むのは相当覚悟(と時間と根気)が要りそうだと腰がひけていました。でも、こういうコメントをもらうとモチベーションがアップしますね。この本を呆れるほど単純な理由で選んだ息子も、いつか読んでくれるといいのですが。
あらあら、そんなにいろいろ出て来ますか。これはこれ、それはそれ、なんですね。医者だけどヘビースモーカー、みたいなものかしら?(←我が家の主治医)
それにしても「おれはピカソだ。おれと寝ろ」って。あはは、これはすごいわ。でもこういう人、現代にもいそうな感じはしますね。
えっ、しろくまさんは「収容所群島」を読んだのですか!う〜む、それはすごい。わたしは夫の本をパラパラ拾い読みしただけですが、読むのは相当覚悟(と時間と根気)が要りそうだと腰がひけていました。でも、こういうコメントをもらうとモチベーションがアップしますね。この本を呆れるほど単純な理由で選んだ息子も、いつか読んでくれるといいのですが。
あらあら、そんなにいろいろ出て来ますか。これはこれ、それはそれ、なんですね。医者だけどヘビースモーカー、みたいなものかしら?(←我が家の主治医)
それにしても「おれはピカソだ。おれと寝ろ」って。あはは、これはすごいわ。でもこういう人、現代にもいそうな感じはしますね。