2017年 09月 15日
助けてもらう |
先週末、ポルトガルに行ってきた。
金婚式に招待されたからである。
しかし、子どもの学校も始まったばかりで休ませるわけにはいかない。
やむなく土曜日の早朝出発、日曜日の夜帰宅という最短の行程をとった。
陽炎のように儚い、束の間のポルトガル!であった。
しかし、そうは言ってもせっかくポルトガルにいくのである。
この機会を活かさない手はない。
最近また勉強しはじめたポルトガル語を使ってみようと思った。
すごく低いハードルなのだけれども、
例えば飛行機で飲み物の注文をするとか、
金婚式会場で給仕の人に必要なものを頼むとか。
〜をください。
自分の意思を伝えることならわりと簡単にできる。
でもこれが少しでも形をかえると、途端にまごついてしまうのである。
この子には〜を、あの子には〜をお願いします。
これは要らないけれど、こっちの料理は多めにください。
気が変わりました、やっぱりこれも下さい。
こちらも同じようにお願いします。
こうして書いてみると恥ずかしいくらい簡単なことなのだけれど、
これを外国語で言おうとすると意外とスルッと出てこないもので。
どんな簡単なフレーズであっても、
体に染み込んでいないものは瞬間的には出てこない。
独り言でもいい、人を相手でもいい、とにかく使ってみるしかない。
申し訳ないですが、と内心思いながらも、
いろいろな人に練習相手になってもらった。
すらっと出る言葉もあれば、つっかえつっかえしか出ない言葉もある。
拙い言葉であれこれ頼まれるのは、たとえ仕事でも面倒臭いことだろうに、
どの人もみな優しかった。
こちらがポルトガル語を話そうとしているとわかると辛抱強く聞いてくれる。
そして間違っていれば正しい言い方で言い直してくれるし、
それをわたしが鸚鵡のように繰り返せば、
すばらしい、マダムはポルトガル語が上手ですね、などとしっかり褒めてくれる。
いや、おだててくれる、というべきかな。
それを側で見ていた息子たちが言った。
ママン、いっぱい褒めてもらったね。嬉しかったでしょう〜。
そう、嬉しかった。
すごく嬉しかった。
褒められて悪い気がする人なんていないもの。
下手でもなんでも、頑張っているのを認めてもらえるのは嬉しい。
言葉を覚える(覚えさせる)ための秘訣がここにある、と思ったことだった。
まずは使ってみる。
(怖がらせず、まずは言わせてみる)
間違っていたらその場で直してもらう。
(間違っている点はすぐに指摘して言い直させる。繰り返させる)
よく言えたねぇ、よく使えたねぇと褒めてもらう。
(どんなに小さくても頑張りを認めて、惜しまずに褒める)
子どもが少しずつ言葉を覚えて使えるようになっていくのと同じことだ。
それにしても、ポルトガルの人たちは本当に優しかった。
気持ちに余裕があるから、こんなふうに人に優しくできるのかな。
これから先もきっとたくさん助けてもらうことになるだろう。
それはまちがいない。
新しい言語を覚えるって、
もちろん自分の努力が第一に来るけれども、
それだけでは決して完結する、完結できるものではなく、
拙い言葉であっても聞いて応えてくれる他人がいることが、
絶対的に大事なことなのだと強く意識したのだった。
名も知らぬ、その時限りの縁で出会った人に助けてもらう。
そんな数え切れないくらい多くの経験の積み重ねの上に今の自分がいる。
言葉は、人と人との交わりが作り上げた織物のようだ。
by poirier_AAA
| 2017-09-15 23:46
| 言葉を学ぶ
|
Comments(4)
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pallet-sorairo at 2017-09-15 23:59
>ママン、いっぱい褒めてもらったね。嬉しかったでしょう〜。
息子さんたちも、一生懸命なママンが褒められているのを見て
とても嬉しかったんだと思います。
いいなぁ。
息子さんたちも、一生懸命なママンが褒められているのを見て
とても嬉しかったんだと思います。
いいなぁ。
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poirier_AAA at 2017-09-16 01:56
> pallet-sorairoさん、こんにちは。
息子たちはきっと、いつもは偉そうにしている母親が間違いを直されたり、褒められて子どもみたいに喜んだり照れたりしているのを見て、すごく可笑しかったんだと思います。褒められたらそんなに謙遜しないで堂々としていなよ、と注意までされました(笑)
わたしが間違えながらも頑張ってポルトガル語を使っていたら、こどもたちも真似するようになるんじゃないかな〜と、ちょっと淡い期待も抱いているのです。
息子たちはきっと、いつもは偉そうにしている母親が間違いを直されたり、褒められて子どもみたいに喜んだり照れたりしているのを見て、すごく可笑しかったんだと思います。褒められたらそんなに謙遜しないで堂々としていなよ、と注意までされました(笑)
わたしが間違えながらも頑張ってポルトガル語を使っていたら、こどもたちも真似するようになるんじゃないかな〜と、ちょっと淡い期待も抱いているのです。
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stanislowski
at 2017-09-16 16:21
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梨の木さん、いいな。
やはり言葉を話したい!コミュニュヶしたい!という梨の木さんの前向き、強い気持ちが大事。最初が肝心かな。。。
私は自らその機会を放棄しています。
相手に気遣いすぎて、手間を取らせてしまうのが分かるから。
外で働くひとは子どもの送迎や様々な事こと、時間に追われているし。「面倒くさいなー」と、いう表情を必要以上に嗅ぎ取ってしまうの。あと、こちら幼児程度のことでも理解できないでいたら舌打ちされたり、逆に子どもを使って私に説明されたりして以来ダメ。
どこかで開き直らないと自分の風景も変わらないんだけど。変なプライドが邪魔して。苦笑。
やはり言葉を話したい!コミュニュヶしたい!という梨の木さんの前向き、強い気持ちが大事。最初が肝心かな。。。
私は自らその機会を放棄しています。
相手に気遣いすぎて、手間を取らせてしまうのが分かるから。
外で働くひとは子どもの送迎や様々な事こと、時間に追われているし。「面倒くさいなー」と、いう表情を必要以上に嗅ぎ取ってしまうの。あと、こちら幼児程度のことでも理解できないでいたら舌打ちされたり、逆に子どもを使って私に説明されたりして以来ダメ。
どこかで開き直らないと自分の風景も変わらないんだけど。変なプライドが邪魔して。苦笑。
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poirier_AAA at 2017-09-16 17:41
> stanislowskiさん、こんにちは。
わたしの場合はほら、まだまだ超初心者だから、みんなが面白がって相手をしてくれるレベルなんですよ。言葉を習い始めて楽しくて楽しくてたまらない時なのよね。
stanislowskiさんが尻込みしてしまう気持ちはすごくよくわかります。わたしもそうだもの。自分の下手さがわかるから申し訳なくて、ついつい下手に出てしまう。でも、知り合いのウクライナ人の奥さんをみていてわかったのです。どんなに言葉が拙くても、何としてもここで話を聞いてもらわないと困る、何としても知りたい、どうにか状況を改善したいというような強い意志があれば、相手はしぶしぶでも話に引き込まれていくんですね。相手の目をしっかり見て逸らさない、悪びれずに(わたしの言いたいことがわからないのはあなたにも問題があるのよ!くらいの調子で)相手に伝わるまで話し続ける、あくまでも対等の姿勢を崩さない、これがすごく大事だなぁと思って。本当に、目から鱗の気分でした。
人を相手に話すのがハードルが高かったら、独り言で口を慣らすといいみたいです。前に英語のうまい人が仮想恋人を作って練習したと話していました。悪くないアイデアですよね。
わたしの場合はほら、まだまだ超初心者だから、みんなが面白がって相手をしてくれるレベルなんですよ。言葉を習い始めて楽しくて楽しくてたまらない時なのよね。
stanislowskiさんが尻込みしてしまう気持ちはすごくよくわかります。わたしもそうだもの。自分の下手さがわかるから申し訳なくて、ついつい下手に出てしまう。でも、知り合いのウクライナ人の奥さんをみていてわかったのです。どんなに言葉が拙くても、何としてもここで話を聞いてもらわないと困る、何としても知りたい、どうにか状況を改善したいというような強い意志があれば、相手はしぶしぶでも話に引き込まれていくんですね。相手の目をしっかり見て逸らさない、悪びれずに(わたしの言いたいことがわからないのはあなたにも問題があるのよ!くらいの調子で)相手に伝わるまで話し続ける、あくまでも対等の姿勢を崩さない、これがすごく大事だなぁと思って。本当に、目から鱗の気分でした。
人を相手に話すのがハードルが高かったら、独り言で口を慣らすといいみたいです。前に英語のうまい人が仮想恋人を作って練習したと話していました。悪くないアイデアですよね。