2015年 09月 17日
イベリア・ポルトガル語を学ぶには |
ポルトガル語を習いたいと思った時、
まず、大きな選択肢が2つあります。
ポルトガルのポルトガル語か、ブラジルのポルトガル語か。
大きな枠で考えれば同じ言語なのですが、
発音も語彙も微妙にちがうので、
始める時にはどちらが自分の目的に合うか考えて選ぶのが実用的です。
日本はブラジルと縁が深いからでしょう、
必然的にポルトガル語=ブラジル・ポルトガル語と発想されるようで、
ポルトガルのポルトガル語(イベリア・ポルトガル語)関連の語学本は
本屋でもほとんど見つけることができません。
イベリア・ポルトガル語をやろうと思ったとき、
おそらく一番実用的なのはヨーロッパで語学本を探すことです。
スペイン、フランス、イギリス、ドイツ、ベルギーやルクセンブルグ、
こういった国には必ずポルトガル人がいて、
イベリア・ポルトガル語を勉強しようとする一定のニーズがあります。
本屋でも間違いなくイベリアかブラジルかの選択肢があるはずです。
そしてポルトガルに行けば、外国人学習者向けの本がきちんと出ています。
欧州言語がある程度できる人なら、このチャンスを利用しない手はありません。
わたしの場合は、こんなふうに装備を整えました。
まず、勉強の土台となる教科書とワークブック。
ポルトガル語でポルトガル語を勉強するための本です。
写真などはなく、もちろん正書法も反映していません。
今ならもっと現代的で綺麗な(写真いっぱいの)本がたくさん出ていますが、
とりあえず基礎をやるにはこれで十分だろうと思って使っています。
CD付き、練習問題の答えはネットで見ることができます。
これで勉強するには、当然ながら辞書が必須です。
辞書は2冊持っています。
左はポルトガルで買った辞書、右はフランスで買った辞書です。
最初に買ったのは右の、ラルースから出ている辞書でした。
これのいいところは、まず安いこと(千円もしません)。
初級者に必要な単語は過不足なくカヴァーしていること。
発音記号がついているのでわかりやすいこと。
簡単な会話集や動詞活用表もついているので、
旅行や短期滞在のサバイバル用として実用的であること。
左の辞書は、この夏ポルトガルで買いました。
前述のラルースの辞書より新しいので正書法に対応していますし、
仏→葡辞書の語彙説明と例文などがしっかりしているので、
いざ作文しようと思ったときに役に立ちます。
唯一の問題は、フランス語を学ぶポルトガル語話者向けなので、
ポルトガル語の動詞の活用表が載っていないことなのですが、
それは他でどうにでもなるのであまり気にしていません。
教科書だけだとはっきりわからない部分もあるので、助っ人の文法書も買いました。
フランスの文庫本サイズで1000円程度で手軽に買えるのですが、
仏語話者にとって紛らわしい文法事項をきちんと説明してあるので、
そこが知りたかったのよ!という疑問がするっと解けていく、有難い本です。
本を開くと左側に文法の説明、右側に練習問題が載っているので、
手軽に持ち運べる文法書&問題集セットとも言えます。
左側のそれより大きい本は今年ポルトガルで見つけました。
見開きで一つの文法事項を扱うようになっていて、
左ページには説明が、右ページには練習問題がついています。
復習用の問題集が欲しくて求めたものですが、
文法事項も綺麗にまとまっているので、後になっても役に立ちそうです。
ただ読んで書くだけならこれだけでなんとかなりそうですが、
わたしの場合はきちんと話せるようになることが大事なので、
発音に特化した本も探しました。
というのも、ポルトガル語の発音はわたしにはとても難しくて、
耳で聞いただけ、人に「違う、こうだよ」と言われただけではわからず、
きちんと音声学的に説明してあるものが必要だったからです。
一つの音につき、唇や口腔内の形を説明した図と発音記号があり、
その音が発せられる単語例がたくさん載っています。
いまはできない音だけピックアップして練習していますが、
これを一通りきちんとやったら、かなり発音がしっかりするだろうと思います。
ポルトガルの出版社が出している本で、もちろんCD付きです。
日本で出ている本では、こんなのを持っています。
イベリア・ポルトガル語の本がほとんどない日本ですから、
この2冊が出たのは画期的だと思います。
左は基礎の基礎を知るためには役に立ちますし、
右はサヴァイヴァルするのに役に立ちます。
ただ、ポルトガル語の全体像を見渡すには少々物足りなくて、
わたしの場合は日本語の読み物としてパラパラ読むにとどまっています。
ポルトガル語という名こそついているものの、
人数でいっても経済力でいっても、サッカーの強さでいっても、
いまはブラジルの方が圧倒的に影響力があるので、
世界的にみたらポルトガル語=ブラジル語なのだと思います。
ただ、そんな押され気味のイベリア・ポルトガル語でも、
やろうと思ったら道はちゃんとあるんですよ!
それを言いたくて、こんな記事を書いてみました。
この記事には続きがあります(2018年追記)。
イベリア・ポルトガル語の教材をお探しの方は下のリンクをご覧下さい。
by poirier_AAA
| 2015-09-17 17:56
| 言葉を学ぶ
|
Comments(6)
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fusk-en25 at 2015-09-17 19:21
これを読んでいて、一番最初に感じたのは、
梨の木さんのご主人はどんな風にしてポルトガル語を習得されたのか?と言うことでした。
ネイティブだから言葉を話すことには最初から問題はない。
しかし、言語というのはただ話せるだけで終われるなら、どこの国も国語の授業は要らないわけですものね。
そして次に、おお日本はポルトガル語をブラジル語からやるのか?これは驚きでした。
いくら世界に通用する言葉としてブラジル語の方が席巻していたとしても。
日本でフランス語を始めるときにまさかケペックのフランス語を始めないだろう(ケペックに行ってから習うなら別として)
と思ったからでした。
梨の木さんのご主人はどんな風にしてポルトガル語を習得されたのか?と言うことでした。
ネイティブだから言葉を話すことには最初から問題はない。
しかし、言語というのはただ話せるだけで終われるなら、どこの国も国語の授業は要らないわけですものね。
そして次に、おお日本はポルトガル語をブラジル語からやるのか?これは驚きでした。
いくら世界に通用する言葉としてブラジル語の方が席巻していたとしても。
日本でフランス語を始めるときにまさかケペックのフランス語を始めないだろう(ケペックに行ってから習うなら別として)
と思ったからでした。
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poirier_AAA at 2015-09-18 18:50
>fuskさん、こんにちは。
ある言葉を話す読む書くのすべての面でネイティヴ並みにするとしたら、これはどこの国にいても何語でも方法は同じなんじゃないかと思います。まわりにその言葉を話す人が2人以上いること、小さい頃から外的な力で勉強する環境におかれること(学校とか通信教育とか)、中学生高校生くらいになって自分の意思がはっきり出てきたときに本人がその言葉を勉強しようと志向すること。
この夏ポルトガルで、同じように仏葡完全ビラングの人と話したのですが、やっぱり10代はずっとポルトガル語を勉強していたと言っていました。話すだけじゃなく、読み書きでも苦労しないレヴェルまで持って行かないとダメなんでしょうね。
世界的にはブラジル語がはっきりと優勢ですね。少し前にポルトガルで綴りが変わったのですが、それもブラジル仕様に合わせての変化でした(当然ポルトガルでは評判悪し、です)。
日本でブラジル語が優勢なのは、実用面でのニーズも大きいからです。ブラジルから日本に働きに来ている人たちも多いのです。それに比べるとイベリアのポルトガル語はせいぜいが観光旅行ニーズですから、必要度の高さでいっても比べ物にならないんですね。
ある言葉を話す読む書くのすべての面でネイティヴ並みにするとしたら、これはどこの国にいても何語でも方法は同じなんじゃないかと思います。まわりにその言葉を話す人が2人以上いること、小さい頃から外的な力で勉強する環境におかれること(学校とか通信教育とか)、中学生高校生くらいになって自分の意思がはっきり出てきたときに本人がその言葉を勉強しようと志向すること。
この夏ポルトガルで、同じように仏葡完全ビラングの人と話したのですが、やっぱり10代はずっとポルトガル語を勉強していたと言っていました。話すだけじゃなく、読み書きでも苦労しないレヴェルまで持って行かないとダメなんでしょうね。
世界的にはブラジル語がはっきりと優勢ですね。少し前にポルトガルで綴りが変わったのですが、それもブラジル仕様に合わせての変化でした(当然ポルトガルでは評判悪し、です)。
日本でブラジル語が優勢なのは、実用面でのニーズも大きいからです。ブラジルから日本に働きに来ている人たちも多いのです。それに比べるとイベリアのポルトガル語はせいぜいが観光旅行ニーズですから、必要度の高さでいっても比べ物にならないんですね。
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fusk-en25 at 2015-09-18 19:43
イギリスのミステリー女性翻訳家(サラ・デュナント)の中に
チェコ語を翻訳している主人公が
幼年期に父親からチェコ語を教えられ始めた頃。
周囲には他に誰もチェコ語を話す人がいなかったから、
随分長い間、父親が創作した言葉で遊んでいるのかと思ったと回想している場面が出てくるのですが。
子供にとって言葉とはそう言うものかと思ったりしました。
チェコ語を翻訳している主人公が
幼年期に父親からチェコ語を教えられ始めた頃。
周囲には他に誰もチェコ語を話す人がいなかったから、
随分長い間、父親が創作した言葉で遊んでいるのかと思ったと回想している場面が出てくるのですが。
子供にとって言葉とはそう言うものかと思ったりしました。
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poirier_AAA at 2015-09-18 20:36
>fuskさん、こんにちは。
>父親が創作した言葉で遊んでいるのかと思った
これ、面白い発想ですね。この丸くて赤いのがりんごで、赤くてぶつぶつざらざらしているのがイチゴでとか、確かにお互いに暗号で遊んでいるような面白さがあります。
でも1対1で言葉を勉強した場合、おそらくですが限界があると思います。小さな子どもと母親が家庭で話すような内容だけなら大丈夫でしょうが、それ以上のいわゆる大人の会話を望む場合「言葉が使われている社会」がないと感覚がつかみきれない部分があるのです。だから、自分以外に最低2人、その言葉を自在に操れる人が必要。それで小説でも読むようになれば言葉の感覚がめきめき育っていくんだと思います。
>父親が創作した言葉で遊んでいるのかと思った
これ、面白い発想ですね。この丸くて赤いのがりんごで、赤くてぶつぶつざらざらしているのがイチゴでとか、確かにお互いに暗号で遊んでいるような面白さがあります。
でも1対1で言葉を勉強した場合、おそらくですが限界があると思います。小さな子どもと母親が家庭で話すような内容だけなら大丈夫でしょうが、それ以上のいわゆる大人の会話を望む場合「言葉が使われている社会」がないと感覚がつかみきれない部分があるのです。だから、自分以外に最低2人、その言葉を自在に操れる人が必要。それで小説でも読むようになれば言葉の感覚がめきめき育っていくんだと思います。
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fusk-en25 at 2015-09-18 20:49
梨の木さん
度々ですみません。
確かに2人以上の大人が喋るのを聞いてないと駄目ですね。
私と孫の会話。私は日本語、彼はフランス語という変則的な話し方なんですが。いくら無理矢理に私が使い続けても
絶対に伸びません。なんとか雰囲気が判る程度ですね。
対話している状況を聞いてないから、新しい知識が入ってこない。
度々ですみません。
確かに2人以上の大人が喋るのを聞いてないと駄目ですね。
私と孫の会話。私は日本語、彼はフランス語という変則的な話し方なんですが。いくら無理矢理に私が使い続けても
絶対に伸びません。なんとか雰囲気が判る程度ですね。
対話している状況を聞いてないから、新しい知識が入ってこない。
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poirier_AAA at 2015-09-18 21:42
>fuskさん、こんにちは。
コメントじゃなくてチャットしているみたいで、なんだか可笑しいですね。
我が家の日本語とポルトガル語がまさにそうですね。どっちも片親しか話さないから、子どもはどちらの言葉も頭打ちです。補習校にも通わせていないですし、あとは本人のやる気炸裂を待つしかないかと思っています。
ゆうべ夜更かしして本を1冊読みきったから、今日は充実感と倦怠感ごたまぜ状態でダラダラ過ごしています(笑)
コメントじゃなくてチャットしているみたいで、なんだか可笑しいですね。
我が家の日本語とポルトガル語がまさにそうですね。どっちも片親しか話さないから、子どもはどちらの言葉も頭打ちです。補習校にも通わせていないですし、あとは本人のやる気炸裂を待つしかないかと思っています。
ゆうべ夜更かしして本を1冊読みきったから、今日は充実感と倦怠感ごたまぜ状態でダラダラ過ごしています(笑)