2015年 06月 10日
読みたい本はこうして増える |
前にも書いたけれど、ディクテを愛好している。
ディクテ(書き取り)という作業が好きなのか、
ディクテによって知らなかった文章や作家と出会うのが楽しいのか、
自分でもよくわからないけれど、とにかく面白くてやめられない。
それも、予備知識なくいきなり書き取りに入るのが断然おもしろい。
今日やったのは、まったく名前もしらない作家の文章だった。
誰か(たぶん男性)が親しい男性に向かって語っている。
相当に親しい関係だと予想がつくのは、
君ならわかるだろう、とか、君だから言えることだが、なんて言葉が、
ところどころに混じるから。相手を信頼しているのだ。
時代もところもわからないまま、話し手は人の辛い状況を語り始める。
食べるものが少なくなり、人がやせ細り、精神も病んで行く。
死を待つばかりの状況だった。
そこに一人の男が現れて彼らに救いの手を差し伸べる。
人々は生き延びたことを知る。
そして、救い主であるこの男をあがめるばかり。
でも、と話し手は続ける。
君だけにいうのだが、この男が真実何者なのか、自分にはわからないのだ。
そう、本当にわからないんだよ。
ここでぷっつりとディクテは終る。
とりあえず書き取りミスはないか答え合わせをするけれど、
それで気が済むわけがない。
だって、わたしは謎の中に取り残されているんだから。
人々を救った、というのだから神様(救世主)に繋がるかと思った。
でも、文章の感じから言って明らかに新しい(古くさくない)書き方だし、
となると、この救い主ってなんだろう?
あれこれ想像力をたくましくして、この抜粋のもとの話を検索してみた。
答えがわかったときは、いっきに背筋が寒くなるような気がした。
ヒントはこれ。
この話が書かれたのが1938年。
主たる人物が2人。アメリカで一緒に画廊を営む男性2人。
1人はドイツ人。もう1人はユダヤ人。
ドイツ人の方は家族を連れて自分の故国に戻ることにする。
そこから、この親友2人の海を越えての手紙のやり取りが始まる。
なるほど、救世主はあの人を指していたのか。
それとわかってからもう一度書き取った抜粋を読み直してみると、
あぁ、思わせぶりな言葉が混じっている!
「Le but que nous poursuivons est-il meilleur que celui d'avant? 」
(いま自分たちが目指している目標は、これまでよりもマシなものなのか?)
「Je les ai vus, ces gens de ma race ......」
(わたしは見たのだ、わたしの race(民族、人種、血筋)の人々を)
1938年にこの話が出版されたということに驚く。
最初は半信半疑に眺めていた者が、どんどん流れに取り込まれていく。
そのこわさ。
昔の話でしょ、では済まないものを感じる。
フランス語のタイトルは「Inconnu à cette adresse(届け先不明)」
原題は「Address Unknown」
日本語の翻訳では「届かなかった手紙」
本を探して読んでみなくては。
ディクテを1本するたびに、読みたい本が1冊ずつ増えて行く。
勉強なのだか自分の首を絞めているのだか、よくわからなくなってきた。
ディクテ(書き取り)という作業が好きなのか、
ディクテによって知らなかった文章や作家と出会うのが楽しいのか、
自分でもよくわからないけれど、とにかく面白くてやめられない。
それも、予備知識なくいきなり書き取りに入るのが断然おもしろい。
今日やったのは、まったく名前もしらない作家の文章だった。
誰か(たぶん男性)が親しい男性に向かって語っている。
相当に親しい関係だと予想がつくのは、
君ならわかるだろう、とか、君だから言えることだが、なんて言葉が、
ところどころに混じるから。相手を信頼しているのだ。
時代もところもわからないまま、話し手は人の辛い状況を語り始める。
食べるものが少なくなり、人がやせ細り、精神も病んで行く。
死を待つばかりの状況だった。
そこに一人の男が現れて彼らに救いの手を差し伸べる。
人々は生き延びたことを知る。
そして、救い主であるこの男をあがめるばかり。
でも、と話し手は続ける。
君だけにいうのだが、この男が真実何者なのか、自分にはわからないのだ。
そう、本当にわからないんだよ。
ここでぷっつりとディクテは終る。
とりあえず書き取りミスはないか答え合わせをするけれど、
それで気が済むわけがない。
だって、わたしは謎の中に取り残されているんだから。
人々を救った、というのだから神様(救世主)に繋がるかと思った。
でも、文章の感じから言って明らかに新しい(古くさくない)書き方だし、
となると、この救い主ってなんだろう?
あれこれ想像力をたくましくして、この抜粋のもとの話を検索してみた。
答えがわかったときは、いっきに背筋が寒くなるような気がした。
ヒントはこれ。
この話が書かれたのが1938年。
主たる人物が2人。アメリカで一緒に画廊を営む男性2人。
1人はドイツ人。もう1人はユダヤ人。
ドイツ人の方は家族を連れて自分の故国に戻ることにする。
そこから、この親友2人の海を越えての手紙のやり取りが始まる。
なるほど、救世主はあの人を指していたのか。
それとわかってからもう一度書き取った抜粋を読み直してみると、
あぁ、思わせぶりな言葉が混じっている!
「Le but que nous poursuivons est-il meilleur que celui d'avant? 」
(いま自分たちが目指している目標は、これまでよりもマシなものなのか?)
「Je les ai vus, ces gens de ma race ......」
(わたしは見たのだ、わたしの race(民族、人種、血筋)の人々を)
1938年にこの話が出版されたということに驚く。
最初は半信半疑に眺めていた者が、どんどん流れに取り込まれていく。
そのこわさ。
昔の話でしょ、では済まないものを感じる。
フランス語のタイトルは「Inconnu à cette adresse(届け先不明)」
原題は「Address Unknown」
日本語の翻訳では「届かなかった手紙」
本を探して読んでみなくては。
ディクテを1本するたびに、読みたい本が1冊ずつ増えて行く。
勉強なのだか自分の首を絞めているのだか、よくわからなくなってきた。
by poirier_AAA
| 2015-06-10 19:59
| フランス語を読む
|
Comments(2)
Commented
by
fusk
at 2015-06-11 21:58
x
この本。読んでみたいような。。ちょっとしんどいような。
今までもこれに近い内容のは読んできているのです。。。
そして欧米にはしっかりとこの話が続いているのも知っていて。忘れてはならないことも判っていて。
だからこそ読みたいような読みにくいような・・・気持ちになります。
今までもこれに近い内容のは読んできているのです。。。
そして欧米にはしっかりとこの話が続いているのも知っていて。忘れてはならないことも判っていて。
だからこそ読みたいような読みにくいような・・・気持ちになります。
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Commented
by
poirier_AAA at 2015-06-11 22:21
>fuskさん、こんにちは。
わかります。読みたいような、読みたくないような。
わたしはフランス語の要約を読んでしまったので狡い立場なのですけど、この話はいわゆる「あの」史実を書いたというよりは、時代に翻弄されて変化して行く人間と人間関係に焦点を絞って書いているようで、その人の心の動きを読んでみたいと思いました。
‥‥とはいいながら、今日のディクテはコレットの抜粋だったので、またコレットの本を引っ張り出して来て拾い読みしたりして、、、、毎日毎日御馳走を前に気の向くままにつまみ食いさせてもらっているような、そんな贅沢な気分です(笑)。
わかります。読みたいような、読みたくないような。
わたしはフランス語の要約を読んでしまったので狡い立場なのですけど、この話はいわゆる「あの」史実を書いたというよりは、時代に翻弄されて変化して行く人間と人間関係に焦点を絞って書いているようで、その人の心の動きを読んでみたいと思いました。
‥‥とはいいながら、今日のディクテはコレットの抜粋だったので、またコレットの本を引っ張り出して来て拾い読みしたりして、、、、毎日毎日御馳走を前に気の向くままにつまみ食いさせてもらっているような、そんな贅沢な気分です(笑)。