2015年 05月 30日
しっかり働いてね |
東京で夫とつきあっていた頃のわたしは、
毎日限界に挑戦!みたいな働き方をしていた。
人出不足をみんなで無理して補っているようなところがあって、
まわりにもゼイゼイ言っている人が多かった。
そんな職場だったから、
廊下ですれ違ったときトイレで顔をあわせた時の合い言葉は
「たいへんですね〜。無理しすぎないで下さいね」
「事情はわかるけど、働き過ぎないようにしないと」
そんなのばかりだった。
そのくせがついつい夫(その頃の彼)の前でも出てしまい、
お互いに仕事に向かおうという別れ際、ついこう言ってしまった。
「あんまり働きすぎないでね」
言われた相手は最初はきょとんとして、それから苦笑した。
まだ仕事にも行ってないのに「あんまり働くな」ってなに?
それに仕事をするために行く場所で働かないでどうする?
仕事に向かう相手にはこう言うんだよ。
「Travaille bien !(しっかり働いてね)」
それを聞いて、わたしはへぇ〜と思ったものである。
お国柄が違うとこうも発想が違うものか。
一般的に働き過ぎの傾向がある日本人同士だと、
「無理しすぎないでね」
一般的に必要最小限の労働で済ませようとする傾向のあるフランス人だと
「しっかり働いてね」
もちろん、これは夫の感覚なので、
フランスに住む人が皆が同じように考えているとは思わない。
ただ、この言葉が厭味でも圧力でもなくニュートラルな挨拶として存在する、
そのことにちょっと感動したのだった。
そんな昔のことを思い出したのは、
最近また似たようなことがあったからだ。
夫はいま、前からとりたかった資格のための勉強をしている。
ほぼ90%趣味でしている勉強だが、
わたしなんか端で見ているだけでも蕁麻疹が出そうな難しさ。
それを昼間は普通に仕事をして、夕食後に必死で独学している。
長い1日の終わり、こっくりこっくり本の前で舟を漕ぎ始めることもある。
夜中まで勉強し過ぎて、朝辛そうにしていることもある。
先日、見かねてこう言ってしまった。
「ね、そんなに無理しなくても。。。。」
夫は苦笑して、こう言った。
試験は、必要な勉強をすれば受かるんだよ。
何をどれだけやらなければいけないかは、子どもじゃないからわかっている。
いま勉強しなければ自分は受からない。
それとは別に大事な生活があることもわかっている。
だからね、キミは何も言う必要はないんだよ。
わたしは反省した。
相手はいい大人なのである。自分のことは自分でどうにかする。
世話焼き女房気取りは止めよう。
それに、わたしだって必要以上に踏み込まれたら鬱陶しくていやになる。
わたしは毎日にこにこ笑ってこう言っていればいい。
「Travaille bien !(しっかり働いてね/勉強してね)」
頑張ることでしか乗り越えられないことがある。
どんなに大変でも、とにかく踏ん張って頑張るしかない。
そういうときに「Travaille bien !」って一番ぴったりくるかも。
「しっかりやれ」は「悔いのないようにしてね」だね。
毎日限界に挑戦!みたいな働き方をしていた。
人出不足をみんなで無理して補っているようなところがあって、
まわりにもゼイゼイ言っている人が多かった。
そんな職場だったから、
廊下ですれ違ったときトイレで顔をあわせた時の合い言葉は
「たいへんですね〜。無理しすぎないで下さいね」
「事情はわかるけど、働き過ぎないようにしないと」
そんなのばかりだった。
そのくせがついつい夫(その頃の彼)の前でも出てしまい、
お互いに仕事に向かおうという別れ際、ついこう言ってしまった。
「あんまり働きすぎないでね」
言われた相手は最初はきょとんとして、それから苦笑した。
まだ仕事にも行ってないのに「あんまり働くな」ってなに?
それに仕事をするために行く場所で働かないでどうする?
仕事に向かう相手にはこう言うんだよ。
「Travaille bien !(しっかり働いてね)」
それを聞いて、わたしはへぇ〜と思ったものである。
お国柄が違うとこうも発想が違うものか。
一般的に働き過ぎの傾向がある日本人同士だと、
「無理しすぎないでね」
一般的に必要最小限の労働で済ませようとする傾向のあるフランス人だと
「しっかり働いてね」
もちろん、これは夫の感覚なので、
フランスに住む人が皆が同じように考えているとは思わない。
ただ、この言葉が厭味でも圧力でもなくニュートラルな挨拶として存在する、
そのことにちょっと感動したのだった。
そんな昔のことを思い出したのは、
最近また似たようなことがあったからだ。
夫はいま、前からとりたかった資格のための勉強をしている。
ほぼ90%趣味でしている勉強だが、
わたしなんか端で見ているだけでも蕁麻疹が出そうな難しさ。
それを昼間は普通に仕事をして、夕食後に必死で独学している。
長い1日の終わり、こっくりこっくり本の前で舟を漕ぎ始めることもある。
夜中まで勉強し過ぎて、朝辛そうにしていることもある。
先日、見かねてこう言ってしまった。
「ね、そんなに無理しなくても。。。。」
夫は苦笑して、こう言った。
試験は、必要な勉強をすれば受かるんだよ。
何をどれだけやらなければいけないかは、子どもじゃないからわかっている。
いま勉強しなければ自分は受からない。
それとは別に大事な生活があることもわかっている。
だからね、キミは何も言う必要はないんだよ。
わたしは反省した。
相手はいい大人なのである。自分のことは自分でどうにかする。
世話焼き女房気取りは止めよう。
それに、わたしだって必要以上に踏み込まれたら鬱陶しくていやになる。
わたしは毎日にこにこ笑ってこう言っていればいい。
「Travaille bien !(しっかり働いてね/勉強してね)」
頑張ることでしか乗り越えられないことがある。
どんなに大変でも、とにかく踏ん張って頑張るしかない。
そういうときに「Travaille bien !」って一番ぴったりくるかも。
「しっかりやれ」は「悔いのないようにしてね」だね。
by poirier_AAA
| 2015-05-30 18:23
| 日々の断片
|
Comments(6)
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fusk
at 2015-05-30 21:03
x
私は「真面目」sérieux でしたね。
日本なら真面目と言われると嬉しがるところ。
フランス人たちはみんな嫌ーな顔をして。「違うよ絶対」って言い返す。
働くに関しても。やる時の意気込みの違いなのか?
めりはりの使い方が違うような気がします
日本人はそれこそ「真面目」に働きますが。
持続性に優れているだけで。ここぞという時に能力を出さないような気がする。ハッタリのなさと言うのか。
「結果をだす」ことを想定しにくい性質なんでしょうか?
日本なら真面目と言われると嬉しがるところ。
フランス人たちはみんな嫌ーな顔をして。「違うよ絶対」って言い返す。
働くに関しても。やる時の意気込みの違いなのか?
めりはりの使い方が違うような気がします
日本人はそれこそ「真面目」に働きますが。
持続性に優れているだけで。ここぞという時に能力を出さないような気がする。ハッタリのなさと言うのか。
「結果をだす」ことを想定しにくい性質なんでしょうか?
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らうとら
at 2015-05-30 22:30
x
香港時代、出勤する相手に対する私たちの別れ際の言葉はだいたいいつも“Don't work too hard!”でした。梨の木さんの「あんまり働きすぎないでね」そのまんま! でもこれ、私ではなく夫が言い始めたのです。日本にいた頃ふつうだと思っていた別れ際の挨拶「頑張ってね(=よく働いてね)」とはまるっきり反対の言い方に最初は「へーんなの!」と、かなり戸惑いました。
ワーカホリックな日本人ならともかく、たいして仕事熱心とも思えない北米人がなぜあえて「あんまり働き過ぎるな」などと言うのか? そんなこと言わなくても彼らは過労死するような働き方はしてないぞお、と思いましたが、その後つらつら考えますに、この裏にはどうも階級闘争、資本家vs労働者の対立の図式があるようであります。つまり資本家の思うつぼにはまってせっせと働き、より資本家に利するようなことはするな、と。仕事をさぼれとは言わないが、(だってあくまで"Don't work too hard"であって、"Don't work!"ではありませんから)、自分の身体と生活を壊さない程度にしておけ、仕事は生活のためにやむを得ずやっているだけなんだから、てな感じで。いや半分は冗談ですけどね。でもそういう微かな響きを、私は夫やその他の人たちが言うこの言葉に感じるのです。
それにしても梨の木さんの御主人、ほんとによくもののわかった方ですね。人間、頭ではわかっていても、なかなか実行はできないもの。ご立派だと思います。
ワーカホリックな日本人ならともかく、たいして仕事熱心とも思えない北米人がなぜあえて「あんまり働き過ぎるな」などと言うのか? そんなこと言わなくても彼らは過労死するような働き方はしてないぞお、と思いましたが、その後つらつら考えますに、この裏にはどうも階級闘争、資本家vs労働者の対立の図式があるようであります。つまり資本家の思うつぼにはまってせっせと働き、より資本家に利するようなことはするな、と。仕事をさぼれとは言わないが、(だってあくまで"Don't work too hard"であって、"Don't work!"ではありませんから)、自分の身体と生活を壊さない程度にしておけ、仕事は生活のためにやむを得ずやっているだけなんだから、てな感じで。いや半分は冗談ですけどね。でもそういう微かな響きを、私は夫やその他の人たちが言うこの言葉に感じるのです。
それにしても梨の木さんの御主人、ほんとによくもののわかった方ですね。人間、頭ではわかっていても、なかなか実行はできないもの。ご立派だと思います。
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Ich
at 2015-05-30 23:40
x
フランス語のTravaille bien!って素敵な響きです。
ご主人さまのご成功をお祈りします^^ お二人の出会いが何となく伝わって参りました(^_^)v
ご主人さまのご成功をお祈りします^^ お二人の出会いが何となく伝わって参りました(^_^)v
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poirier_AAA at 2015-06-01 17:30
>fuskさん、こんにちは。
わたしは「真面目」と評されることもあるのですが、それを褒め言葉だと受け取ったことはほとんどないです。「融通が利かない」「ク○真面目で冗談が通じない」「面白みがない」を言い換えてるだけだろうと思っていました。いわれて嬉しくない言葉の一つなのです。そのくせ、やっぱり自分は真面目なんだろうな〜とも思っているのですが。
結果を出すって大事なことだですよね。こっちの、例えば職人さんの仕事の仕方なんかを見ていると、手の抜き方もいざというときの集中の仕方も日本人とはだいぶ違って感心する部分も多いです(がっかりすることももちろんあるんですけど、ね)。
わたしは「真面目」と評されることもあるのですが、それを褒め言葉だと受け取ったことはほとんどないです。「融通が利かない」「ク○真面目で冗談が通じない」「面白みがない」を言い換えてるだけだろうと思っていました。いわれて嬉しくない言葉の一つなのです。そのくせ、やっぱり自分は真面目なんだろうな〜とも思っているのですが。
結果を出すって大事なことだですよね。こっちの、例えば職人さんの仕事の仕方なんかを見ていると、手の抜き方もいざというときの集中の仕方も日本人とはだいぶ違って感心する部分も多いです(がっかりすることももちろんあるんですけど、ね)。
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poirier_AAA at 2015-06-01 18:03
>らうとらさん、こんにちは。
らうとらさんのコメントを拝見して、むか〜し読んだ「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本のことを思い出してしまいました。なんだかいきなり飛躍し過ぎてますけれど。
禁欲的なプロテスタントの倫理が結果的に金儲けを良しとする考え方に繋がり、それが北米での資本主義の発達に大きく寄与したという話なのですが、現状はともかく、北米人には頑張って働いて財を成そうという意識がひょっとしたらあるのかもしれないと思ってしまいました。だから放っておくとみなせっせと働いてしまう。でも、現代は働いても資本家に貢献するだけだから「Don't work too hard」と言わないと無駄に働くことになる。
そこにいくとカトリック系の国(ラテン系の国と言い換えてもいいかも)は、働くのは生活に必要な金を得るためと最初から割り切る傾向があるかもしれません。自分の生活が一番。仕事は二の次。だから余計な労働を率先してすることなど有り得ない。せめて働きに行くときくらいは「Travaille bien」とでもいわないと収入源を失うかもしれない。
夫の親戚のフランス人たち、普段はあんまりぴりっとしてない人もいるのですが、そういう人でも試験前とか大事な仕事の前には「Travaille bien」とか言い合っているので、これはもう「ここぞという時には本気を出すんだぞ!」的な挨拶なのかもしれないと思っています。
らうとらさんのコメントを拝見して、むか〜し読んだ「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本のことを思い出してしまいました。なんだかいきなり飛躍し過ぎてますけれど。
禁欲的なプロテスタントの倫理が結果的に金儲けを良しとする考え方に繋がり、それが北米での資本主義の発達に大きく寄与したという話なのですが、現状はともかく、北米人には頑張って働いて財を成そうという意識がひょっとしたらあるのかもしれないと思ってしまいました。だから放っておくとみなせっせと働いてしまう。でも、現代は働いても資本家に貢献するだけだから「Don't work too hard」と言わないと無駄に働くことになる。
そこにいくとカトリック系の国(ラテン系の国と言い換えてもいいかも)は、働くのは生活に必要な金を得るためと最初から割り切る傾向があるかもしれません。自分の生活が一番。仕事は二の次。だから余計な労働を率先してすることなど有り得ない。せめて働きに行くときくらいは「Travaille bien」とでもいわないと収入源を失うかもしれない。
夫の親戚のフランス人たち、普段はあんまりぴりっとしてない人もいるのですが、そういう人でも試験前とか大事な仕事の前には「Travaille bien」とか言い合っているので、これはもう「ここぞという時には本気を出すんだぞ!」的な挨拶なのかもしれないと思っています。
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poirier_AAA at 2015-06-01 18:07
>Ichさん、こんにちは。
夫への応援、ありがとうございます。
「Travaille bien」って「しっかり真面目に働けよ」という圧力ではなくて、「ベストを尽くせよ」というエールの言葉に聞こえます。
だから言われても全然苦にならないし、ありがとう、と返事をしたくなるんですよ。
夫への応援、ありがとうございます。
「Travaille bien」って「しっかり真面目に働けよ」という圧力ではなくて、「ベストを尽くせよ」というエールの言葉に聞こえます。
だから言われても全然苦にならないし、ありがとう、と返事をしたくなるんですよ。