2014年 06月 05日
綺麗ごとでは有り得ない |
今年は第一次世界大戦の勃発から100年ということで、
展覧会や本、テレビ番組などの様々な分野で、
「世界大戦を振り返る」をテーマにしたものを目にします。
そして今日はノルマンディー上陸の記念日です。
この機会に「チボー家の人々」を読もうとわたしも挑戦したのですが、
長編ゆえに読書気分の波にのせるのが難しく、
第一巻目(全3巻)もまだ読み終われずにいます。
「チボー家」を一旦脇に置いて、あらたに手に取ったのが、
去年のゴンクール賞受賞作「Au revoir là-haut」でした。
クリスマスに贈り物として貰っていながら読み始めるタイミングを逃して、
半年も経ってようやく読んでみる気になりました。
550ページほどの厚い本、
果たして上手く食い付けるだろうかと心配していたのですが、
読みはじめてみたら面白い!
細切れ時間を工面して200ページまで辿り着きました。
「チボー家」が第一次世界大戦に向かう時代を描いているとしたら、
この作品は第一次世界大戦が終わるところから話が始まるのです。
まだ半分も読んでいないながらも思ったのは、
戦争というのはグロテスクなものだな、ということでした。
今、「戦争だってやむをえないんじゃない?」というような雰囲気が
ネット上で見る日本社会には漂っているような気がするのですが、
「やむをえない」なんて軽い話だよね、と思われてなりません。
戦争で国を守るとか家族を守るとか、綺麗なことはいくらでも言えます。
でも、実際に戦場に立ったとして、
そこで求められるのは敵を殺すことです。相手を痛め付けることです。
目の前にいる敵国の兵隊1人殺せば国や家族が守られるなんて、
全然理屈にならないことはすぐにわかります。
でも、戦争をするってそういうことです。
普通に考えたらアホらしくてやっていられないことが正当化されてしまうのです。
運良く生き残れたとしても、
そのままするっと戦前の暮らしに戻れるとは限りません。
そもそも五体満足で戻れるかどうかもわからないし、
職場でも家庭でも、留守中に居場所を奪われてしまう人がいます。
戦地に行った人と行かなかった人の間には埋められない溝ができ、
除隊後の兵士たちはみな癒されることのない孤独を抱えて生きるのです。
戦争の持つ非人間的な凶暴さをひしひしと感じ、
それによって翻弄されている登場人物たちが切ないです。
この後、話がどう展開するかわかりませんが、
さすが賞をとっただけの小説、すごい勢いで引き込まれます。
日本語でも読めるようになるといいのですが。
話が面白いので、1章ごとにあらすじを紹介したいくらいです。。。
展覧会や本、テレビ番組などの様々な分野で、
「世界大戦を振り返る」をテーマにしたものを目にします。
そして今日はノルマンディー上陸の記念日です。
この機会に「チボー家の人々」を読もうとわたしも挑戦したのですが、
長編ゆえに読書気分の波にのせるのが難しく、
第一巻目(全3巻)もまだ読み終われずにいます。
「チボー家」を一旦脇に置いて、あらたに手に取ったのが、
去年のゴンクール賞受賞作「Au revoir là-haut」でした。
クリスマスに贈り物として貰っていながら読み始めるタイミングを逃して、
半年も経ってようやく読んでみる気になりました。
550ページほどの厚い本、
果たして上手く食い付けるだろうかと心配していたのですが、
読みはじめてみたら面白い!
細切れ時間を工面して200ページまで辿り着きました。
「チボー家」が第一次世界大戦に向かう時代を描いているとしたら、
この作品は第一次世界大戦が終わるところから話が始まるのです。
まだ半分も読んでいないながらも思ったのは、
戦争というのはグロテスクなものだな、ということでした。
今、「戦争だってやむをえないんじゃない?」というような雰囲気が
ネット上で見る日本社会には漂っているような気がするのですが、
「やむをえない」なんて軽い話だよね、と思われてなりません。
戦争で国を守るとか家族を守るとか、綺麗なことはいくらでも言えます。
でも、実際に戦場に立ったとして、
そこで求められるのは敵を殺すことです。相手を痛め付けることです。
目の前にいる敵国の兵隊1人殺せば国や家族が守られるなんて、
全然理屈にならないことはすぐにわかります。
でも、戦争をするってそういうことです。
普通に考えたらアホらしくてやっていられないことが正当化されてしまうのです。
運良く生き残れたとしても、
そのままするっと戦前の暮らしに戻れるとは限りません。
そもそも五体満足で戻れるかどうかもわからないし、
職場でも家庭でも、留守中に居場所を奪われてしまう人がいます。
戦地に行った人と行かなかった人の間には埋められない溝ができ、
除隊後の兵士たちはみな癒されることのない孤独を抱えて生きるのです。
戦争の持つ非人間的な凶暴さをひしひしと感じ、
それによって翻弄されている登場人物たちが切ないです。
この後、話がどう展開するかわかりませんが、
さすが賞をとっただけの小説、すごい勢いで引き込まれます。
日本語でも読めるようになるといいのですが。
話が面白いので、1章ごとにあらすじを紹介したいくらいです。。。
by poirier_AAA
| 2014-06-05 06:31
| フランス語を読む
|
Comments(8)
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by
fusk
at 2014-06-06 21:59
x
私の2歳か3歳上の人達で、一度も父親に会わなかった人が何人もいます。
病気や事故で亡くしたのでなく。戦場へ殺されにいったのですからね。
敵対ならまだしも、餓えで亡くなった人を思うとさらに悔しいどころの話ではありません。
やむをえない?なら「やむを得る様に」もう少しちゃんと考えるべきなんでしょう。
大岡昇平が戦争に反対して死ぬのは怖かった。しかし反対せずに戦争に行っても殺されるじゃないか。。。と。
病気や事故で亡くしたのでなく。戦場へ殺されにいったのですからね。
敵対ならまだしも、餓えで亡くなった人を思うとさらに悔しいどころの話ではありません。
やむをえない?なら「やむを得る様に」もう少しちゃんと考えるべきなんでしょう。
大岡昇平が戦争に反対して死ぬのは怖かった。しかし反対せずに戦争に行っても殺されるじゃないか。。。と。
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at 2014-06-06 22:58
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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at 2014-06-06 23:04
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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Mtonosama at 2014-06-07 06:46
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poirier_AAA at 2014-06-07 20:55
>fuskさん、こんにちは。
飢えで亡くなるとか、上司の手柄をかさ上げするための捨て駒にされるとか、もういろんな死があったと思います。それが全部、あとになると「名誉の戦死」ですからね。。。。
「やむをえない」なんて軽々しく口にしている人たちは、自分がそんな立場に立たされることはない(誰か他の人がやってくれる)と信じきっているのかもしれません。現実に足がついていないように感じます。
飢えで亡くなるとか、上司の手柄をかさ上げするための捨て駒にされるとか、もういろんな死があったと思います。それが全部、あとになると「名誉の戦死」ですからね。。。。
「やむをえない」なんて軽々しく口にしている人たちは、自分がそんな立場に立たされることはない(誰か他の人がやってくれる)と信じきっているのかもしれません。現実に足がついていないように感じます。
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poirier_AAA at 2014-06-07 21:03
>鍵コメ(22:58)さん、こんにちは。
鍵コメさんが書いて下さった「戦争は、いくら正義を掲げてやったとしても結局のところ殺し合いになって終わる」は、まさにその通りだと思います。そして、その殺し合いをするのは戦争をすることを決断した人ではなくて、決断した人の権力によって集められ闘うことを強制された人たちなんですよね。
第二次世界大戦が終わってからまだ100年も経たないというのに、今の日本はすごい勢いで戦争美化が進んでいる印象です。怖いことだと思います。
鍵コメさんが書いて下さった「戦争は、いくら正義を掲げてやったとしても結局のところ殺し合いになって終わる」は、まさにその通りだと思います。そして、その殺し合いをするのは戦争をすることを決断した人ではなくて、決断した人の権力によって集められ闘うことを強制された人たちなんですよね。
第二次世界大戦が終わってからまだ100年も経たないというのに、今の日本はすごい勢いで戦争美化が進んでいる印象です。怖いことだと思います。
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poirier_AAA at 2014-06-07 21:19
>鍵コメさん(23:04)、こんにちは。
過去に学ぶには強い意志が必要なのだなと最近思います。
フランスにいると折に触れて記憶を蘇らせようとする社会的な努力を感じますが、それでも最近の若者たちにとっては直接関係ない古い話として扱われることがあるそうです。
家族や親戚が集まって食事をする機会が多いこちらでは、それでも自然に一族の年配の人から話を聞くチャンスもあるでしょうが、今の日本はどんどん核家族化が進んで親子の行き来すら減っているようですから、自分が生きる時代を俯瞰するような機会が持てないのでしょうね。そもそも直接人と顔をあわせて話すこともどんどん減って来ていますし。
過去に学ぶには強い意志が必要なのだなと最近思います。
フランスにいると折に触れて記憶を蘇らせようとする社会的な努力を感じますが、それでも最近の若者たちにとっては直接関係ない古い話として扱われることがあるそうです。
家族や親戚が集まって食事をする機会が多いこちらでは、それでも自然に一族の年配の人から話を聞くチャンスもあるでしょうが、今の日本はどんどん核家族化が進んで親子の行き来すら減っているようですから、自分が生きる時代を俯瞰するような機会が持てないのでしょうね。そもそも直接人と顔をあわせて話すこともどんどん減って来ていますし。
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poirier_AAA at 2014-06-07 21:23
>mtonosamaさん、こんにちは。
最近、大人向けのフランス語の本になかなか食い付けなくなってしまって(子どもの簡単な本ばっかり読んでいました)、秘かにピンチ!と思っていたのです。この本では運良くひっかかりがみつかったので、ほんとによかったと胸をなでおろしています。
本当に、なんなんだ、としか言えません。。。。。
夢なら覚めてくれ、という気持ちです。
最近、大人向けのフランス語の本になかなか食い付けなくなってしまって(子どもの簡単な本ばっかり読んでいました)、秘かにピンチ!と思っていたのです。この本では運良くひっかかりがみつかったので、ほんとによかったと胸をなでおろしています。
本当に、なんなんだ、としか言えません。。。。。
夢なら覚めてくれ、という気持ちです。