2013年 11月 13日
外務省コメディ 〜 Quai d'Orsay |
今でこそバリバリの専業主婦をしているわたしですが、
子どもができるまでは絵に描いたような企業戦士でありました。
朝から晩までオフィスにこもりっぱなしで、
お昼も外に食べに行く暇がない。
そんな生活を何年も続けていたので、すっかり色白のもやし女になりました。
そんな時代もあったっけ、と久しぶりにしみじみと思い出してしまったのは、
先週公開が始まった外務省コメディ映画「Quai d'Orsay」を観たからでした。
Quai d'Orsay(ケ・ドルセー)はパリ市内の地名です。
オルセーという名前のセーヌの河岸なのです。
そして、この名前はそこに住所をおく外務省の別名でもあります。
タイトルが示す通り、外務省、それも外務大臣まわりの人達を中心に据えた
内情暴露的な要素を持つコメディで、
もともとは漫画として発表された作品の映画化です。
外務大臣(モデルはド・ヴィルパン)のスピーチ・ライターとして雇われた
青年アルチュールの怒濤の日々が綴られるのですが、
出て来る人がそれぞれ曲者で、アルチュールはすっかり翻弄されます。
そして何と言っても最大の曲者が大臣ご本人であります。
弁舌爽やか、立て板に水で話し続けるお方なのですが、
内容は「????」ということばかり。
結局どうしたらいいのか、自分の原稿の何が問題なのか、
アルチュールには理解不能なことばかり。
組織の在り方として、よく2つのタイプが挙げられます。
1つ目は、トップが優秀で、すべての物事がトップダウンで動く組織。
2つ目は全くその逆で、
上が良くも悪くも現実的でないために、部下が頑張ってトップを支える組織。
この映画で描かれる外務省は、間違いなく2つ目のタイプの組織なのです。
外務大臣が、とにかくぶっ飛んでいる。
押し出しも好いし口も達者なので、国の渉外担当としては理想的なのです。
でも、現実的な物事の処理にはまったく向いていないし、
何をどうやったらどういう結果が出るかというような細部には考えが及ばない。
その大臣が、実に堂々とこう言い放つのです、
自分には24時間態勢で働いてくれるコマンド部隊が必要なのだ!
言われるまでもなく、自分たちが頑張るしかないことは皆わかっています。
大臣の思いつきや発言を右から左へと聞き流しながら、
せっせと額に汗し、夜を徹してサポートする優秀な部下たちなのです。
そして、そんな縁の下の力持ちたちのおかげで、なんとか国が動いている。
最後は、あの有名な2003年の国連安全保障理事会でのスピーチ、
会場に拍手が鳴り響く場面で幕を閉じます。
これが本当の話だとしたら、この世界の政治すべて、
ものすごく微妙なバランスの上に成り立っているわけですね。。。。
これを真面目な政治の話と考えると腹が立つかもしれない。
なにせ戦争をするかどうかの瀬戸際の話ですから。
原作を知っている人も、自分のイメージと違うと言いたくなるかもしれない。
でも、いわゆる一般的な組織ストーリーと考えると、笑えました。
どこの組織でもそれぞれ苦労があるんだよな〜
そして実にいろんなタイプの人がいるんだよな〜、なんて思ったりして。
ぶっとんだ大臣役のThierry Lhermitte、
翻弄されるアルチュール役のRaphaël Personnaz、
この人のおかげで国がまともに動いているんだよ!と感謝したくなる
しっかり者の官房長官役、Niels Arestrup、
それぞれいい味を出していて楽しめました。
この映画の大臣、蛍光ペンで文章をマークするのが大好き。
蛍光ペンはフランスでは Stabilo(スタビロ)と呼ばれます。
蛍光ペン(Stabilo)で線を引くという意味の動詞が stabiloter(スタビロテ) 。
この映画で初めて耳にしました。
同じ意味で、stabilobosser というのもあるそうです。
Quai d'Orsay(2013)
監督:Bertrand Tavernier
子どもができるまでは絵に描いたような企業戦士でありました。
朝から晩までオフィスにこもりっぱなしで、
お昼も外に食べに行く暇がない。
そんな生活を何年も続けていたので、すっかり色白のもやし女になりました。
そんな時代もあったっけ、と久しぶりにしみじみと思い出してしまったのは、
先週公開が始まった外務省コメディ映画「Quai d'Orsay」を観たからでした。
Quai d'Orsay(ケ・ドルセー)はパリ市内の地名です。
オルセーという名前のセーヌの河岸なのです。
そして、この名前はそこに住所をおく外務省の別名でもあります。
タイトルが示す通り、外務省、それも外務大臣まわりの人達を中心に据えた
内情暴露的な要素を持つコメディで、
もともとは漫画として発表された作品の映画化です。
外務大臣(モデルはド・ヴィルパン)のスピーチ・ライターとして雇われた
青年アルチュールの怒濤の日々が綴られるのですが、
出て来る人がそれぞれ曲者で、アルチュールはすっかり翻弄されます。
そして何と言っても最大の曲者が大臣ご本人であります。
弁舌爽やか、立て板に水で話し続けるお方なのですが、
内容は「????」ということばかり。
結局どうしたらいいのか、自分の原稿の何が問題なのか、
アルチュールには理解不能なことばかり。
組織の在り方として、よく2つのタイプが挙げられます。
1つ目は、トップが優秀で、すべての物事がトップダウンで動く組織。
2つ目は全くその逆で、
上が良くも悪くも現実的でないために、部下が頑張ってトップを支える組織。
この映画で描かれる外務省は、間違いなく2つ目のタイプの組織なのです。
外務大臣が、とにかくぶっ飛んでいる。
押し出しも好いし口も達者なので、国の渉外担当としては理想的なのです。
でも、現実的な物事の処理にはまったく向いていないし、
何をどうやったらどういう結果が出るかというような細部には考えが及ばない。
その大臣が、実に堂々とこう言い放つのです、
自分には24時間態勢で働いてくれるコマンド部隊が必要なのだ!
言われるまでもなく、自分たちが頑張るしかないことは皆わかっています。
大臣の思いつきや発言を右から左へと聞き流しながら、
せっせと額に汗し、夜を徹してサポートする優秀な部下たちなのです。
そして、そんな縁の下の力持ちたちのおかげで、なんとか国が動いている。
最後は、あの有名な2003年の国連安全保障理事会でのスピーチ、
会場に拍手が鳴り響く場面で幕を閉じます。
これが本当の話だとしたら、この世界の政治すべて、
ものすごく微妙なバランスの上に成り立っているわけですね。。。。
これを真面目な政治の話と考えると腹が立つかもしれない。
なにせ戦争をするかどうかの瀬戸際の話ですから。
原作を知っている人も、自分のイメージと違うと言いたくなるかもしれない。
でも、いわゆる一般的な組織ストーリーと考えると、笑えました。
どこの組織でもそれぞれ苦労があるんだよな〜
そして実にいろんなタイプの人がいるんだよな〜、なんて思ったりして。
ぶっとんだ大臣役のThierry Lhermitte、
翻弄されるアルチュール役のRaphaël Personnaz、
この人のおかげで国がまともに動いているんだよ!と感謝したくなる
しっかり者の官房長官役、Niels Arestrup、
それぞれいい味を出していて楽しめました。
この映画の大臣、蛍光ペンで文章をマークするのが大好き。
蛍光ペンはフランスでは Stabilo(スタビロ)と呼ばれます。
蛍光ペン(Stabilo)で線を引くという意味の動詞が stabiloter(スタビロテ) 。
この映画で初めて耳にしました。
同じ意味で、stabilobosser というのもあるそうです。
Quai d'Orsay(2013)
監督:Bertrand Tavernier
by poirier_AAA
| 2013-11-13 18:20
| 観る・鑑賞する
|
Comments(4)
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kanafr at 2013-11-14 02:11
あの国連でのスピーチを聞いてその明快な論理にすっかり打たれ、それだけでド・ヴイルパンのファンになった単純な私です。
ところが、実は...のお話というのを聞いて、とちょっとガックリしてます。
やっぱりミッテランの方が優秀かも..。
確かにどんな組織にもこういう人いますよね。
気分次第で言う事がコロコロ変わる。その度に振りまわされる人は溜まったもんじゃない、それに少しでも抵抗すればジワ~っと連日皮肉攻撃をくらうので黙るしかない-私の前の仏人上司がそのタイプでした。
日本本社の事ばかり気になって、自分で何も決められない上司もいました。そんな中で現地の平社員は本社社員とかなりの待遇差がある中でやって行かなきゃいけない訳ですよ。
しかも、生活の為に仕方がないとは思いながら仕事に向いていないなあと思える人もかなりいる。
外務省ばかりじゃない、どこにでもある!って言う事で、今回の映画も見たくなりました。
ところが、実は...のお話というのを聞いて、とちょっとガックリしてます。
やっぱりミッテランの方が優秀かも..。
確かにどんな組織にもこういう人いますよね。
気分次第で言う事がコロコロ変わる。その度に振りまわされる人は溜まったもんじゃない、それに少しでも抵抗すればジワ~っと連日皮肉攻撃をくらうので黙るしかない-私の前の仏人上司がそのタイプでした。
日本本社の事ばかり気になって、自分で何も決められない上司もいました。そんな中で現地の平社員は本社社員とかなりの待遇差がある中でやって行かなきゃいけない訳ですよ。
しかも、生活の為に仕方がないとは思いながら仕事に向いていないなあと思える人もかなりいる。
外務省ばかりじゃない、どこにでもある!って言う事で、今回の映画も見たくなりました。
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Mtonosama at 2013-11-14 06:53
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poirier_AAA at 2013-11-14 17:36
>kanafrさん、こんにちは。
たしかに、あのド・ヴィルパンは格好よかったですよね。わたしもテレビの前でウルウルしながら聞きましたもの。果たして映画の大臣が本当に彼の姿を写しているかと言うと、たぶん違うんでしょうね。フランスらしい誇張やおふざけでかなりデフォルメされているんだと思います。
で、思ったのは、実際にトップに立つ人とその下で働く実務部隊が同じ種類の有能さを発揮する必要はないんだよな、ということでした。同じ種類の頭からは同じような発想しか生まれないわけで、そうすると組織としては単純になってしまう。でも、トップが(この映画の大臣のように)実務的でなければ、部下は自由に力を発揮できますし、いざとなれば大臣の立て板に水の演説で相手を煙にまくこともできる(笑)だから、部下は苦労していましたけれど、下手に実務に詳しくて口を出してくる上司よりは、よほどスムーズに仕事ができているんじゃないかなと思いました。
とはいえ、職場は能力だけの話では済みませんし。組織で働くって、涙あり笑いあり汗あり、大変な事ですよね。
面白かったので、もし機会がありましたら是非ごらん下さい。
たしかに、あのド・ヴィルパンは格好よかったですよね。わたしもテレビの前でウルウルしながら聞きましたもの。果たして映画の大臣が本当に彼の姿を写しているかと言うと、たぶん違うんでしょうね。フランスらしい誇張やおふざけでかなりデフォルメされているんだと思います。
で、思ったのは、実際にトップに立つ人とその下で働く実務部隊が同じ種類の有能さを発揮する必要はないんだよな、ということでした。同じ種類の頭からは同じような発想しか生まれないわけで、そうすると組織としては単純になってしまう。でも、トップが(この映画の大臣のように)実務的でなければ、部下は自由に力を発揮できますし、いざとなれば大臣の立て板に水の演説で相手を煙にまくこともできる(笑)だから、部下は苦労していましたけれど、下手に実務に詳しくて口を出してくる上司よりは、よほどスムーズに仕事ができているんじゃないかなと思いました。
とはいえ、職場は能力だけの話では済みませんし。組織で働くって、涙あり笑いあり汗あり、大変な事ですよね。
面白かったので、もし機会がありましたら是非ごらん下さい。
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poirier_AAA at 2013-11-14 17:41
>mtonosamaさん、こんにちは。
このアルチュール青年、しょっぱなから周りの人に翻弄されっぱなしで、困って目がキョロキョロ泳いでいる姿が印象的でした。
最近、いろんなところでこの俳優さんをみかけます。ここにきて一気に知名度が上がった感じですよね。コメディでもいい味を出していたので、幅の広い役者さんになって欲しいです。
日本に来るでしょうか?来るかもしれませんね。
そのときにはぜひ!
このアルチュール青年、しょっぱなから周りの人に翻弄されっぱなしで、困って目がキョロキョロ泳いでいる姿が印象的でした。
最近、いろんなところでこの俳優さんをみかけます。ここにきて一気に知名度が上がった感じですよね。コメディでもいい味を出していたので、幅の広い役者さんになって欲しいです。
日本に来るでしょうか?来るかもしれませんね。
そのときにはぜひ!