2013年 08月 28日
この夏のフランス語読書 |
ポルトガルに行く前に読んだ本ばかりなので、
記憶がすっかり消えてしまう前にメモしておこう。
いずれも対象年齢は10歳前後から、だと思う。
フランス語も易しいのでスラスラとストレスなく読めて、話に没頭できるのがいい。
まず1冊目。
Elizabeth Cody Kimmel著
「Esprit, es-tu là ?, Tome 1 : Le fantôme de la bibliothèque」
(すでに邦訳されていた。タイトルは「ある日とつぜん、霊媒師」)
中学生のKateは、母親が霊媒師であることが悩みの種だ。
自宅で変な音が聞こえたり物が突然どさっと落ちたりすることには慣れていても、
それがいつか学校の友達にバレたら、相当困ったことになると思っている。
ところが、困ったことは更にあった。
なんと、Kate自身もその霊媒体質を受け継いでいることがはっきりしたのだ。
13歳の誕生日が過ぎたとたん、彼女は幽霊が歩き回る姿が見えるようになった。
特異な才能を受け継いでしまったことを悩む少女が、
同じように「人とは違う」才能に恵まれた孤独な少女と知り合い、
一緒になって、とある迷える幽霊を救おうとする。
結果的に、その人助け(幽霊助け)が彼女たちに勇気と自信を与える。
なるほど自分は人とは違う、けれどもなんとかそれと折り合って行こうじゃないか、
2人の少女が前向きに自分と向き合えるようになって話は終わる。
小学校も高学年になると、子どもたちにもはっきりと自我が出てくる。
自分と友達の違いが気になって、自分と向き合わざるを得なくなる。
そんな不安定な時期、不安で不安でたまらない時期があったことを、
この本を読みながら久しぶりに思い出した。
ストーリーに破綻がなくて、脇役も上手く描かれている。
不安な主人公をそっと見守るお母さんの描き方もよかった。
続編があるそうなので、見つけたら読んでみたいと思う。
2冊目。
Ulrike Kuckero 著
「Alice au pays des Mongols(モンゴル人の国のアリス)」
全然知らないで借りてしまったのだが、
ダウン症候群のことを、フランス語ではmongolismeと呼んだそうだ。
(今ではこの言葉は使われないー少なくとも公には)
ゾエとアリスは二卵性双生児なので似ていない。
顔だけでなく、アリスはダウン症でゾエはそうでないところも違う。
10代前半のゾエは、アリスの天衣無縫さを愛しながらも、
それによって自分に降り掛かってくる面倒に辟易している。
ある時、通りがかりの人が言う。
「あら、この子はあなたの姉妹なの?ご両親は養子をもらったのかしら?」
その言葉を聞いていたアリスがゾエに問うのだ。
「え、わたしって他所の国から貰われて来たの?」
アリスのことで疲れてイライラしていたゾエは、つい言ってしまう。
「モンゴルから来たんじゃない?」
それからというもの、アリスはモンゴルに行くことを夢見るようになる。
そんなアリスが、街のお祭りのクイズで一等賞を取る。
一等の賞金は「世界中好きなところに行っていい」飛行機チケット。
司会者の人がアリスに訪ねる。キミはどこに行きたいかな?
アリスは迷わず言う。モンゴルよ。家族皆で行くの!
そうして家族全員で夏休みにモンゴル旅行に行くことになる。
ここまででも随分話が上手すぎないか、と思われてならなかったのだけれど、
モンゴルについてからの話は更にすごい。
アリスは、遠い国から特別に遣わされた貴人とみなされ、
(そういうお告げがあったのだ)
下にも置かぬ大歓迎を受けるのである。
そして、アリスのすること、語ることのすべてが、
巡り会ったモンゴル人の共同体のプラスに働き、尊ばれる。
ダウン症の子がいること、
ダウン症の家族を持つ人がいること、
モンゴルという、まったく文化も風習も違う国で生きる人がいること。
それを描いていることは悪くないと思う。
でも、いかんせん話が上手すぎる。
そして、ゾエの心情も中途半端にしか描かれていないので物足りない。
もっと他に話の作りようがあるのではないかとずっと考えながら読了。
わたしは納得できなかったので、人には勧めない。
3冊目。
Rosemary Sutcliff著
「Les trois légions, tome 2 : L'honneur du centurion」
5月に読んだ第一部の続編で邦題は「銀の枝」。
上記の2冊は現代物だしハッピーエンドなので、読むのも気楽。
それにくらべると、最後の1冊は歴史ものだし主題もハードだしで、
少し気合いを入れて読む感じ。
対象年齢も中学生以降くらいになると思う。
第二部では、第一部の主人公の子孫の話が語られる。
3世紀最後の最後、カラウシウスがブリテンの皇帝を称していた時代の話。
先祖を同じくする2人の青年が、カラウシウスに仕えている。
カラウシウスは心の熱い、部下に慕われる皇帝であった。
そのカラウシウスが側近のアレクタスに暗殺されたことを知り、
青年2人は反アレクタスの有志を集めて反乱軍を組織する。
主題はちょっと難しい、と思う。
2人の青年は最後には暗殺された皇帝の復讐をとげる。
けれど、復讐したからそれで良しという単純な話ではない。
自分たちは果たして誰のために、何のために闘ったのか、と自問する。
物事は必ずしも正悪、白黒と簡単に分けられるわけではないこと、
それでも人はどちらかを選ばなければならないこと。
そんなことを考えながら本を閉じた。
第一部はローマ対土着のブリテン文化だったのが、
第二部になるとそこにサクソン人が入ってくる。
ブリテン島を巡って、ローマとサクソンがせめぎ合う。
さて第三部はどうなることか。是非読まなくては。
‥‥というわけで、子ども向きの本は肩に力を入れずに読めるので嬉しい。
すっかり脱力できたので、次に選んだのがぐっとハードな名作。
「まだ読み終わらないの?」と子どもに言われながらも
毎日ちびちび頑張って読んでいる。
早く読み終わって紹介したい!
(これが読み終わったら、一気にお気楽エンタメに走るのだ)
記憶がすっかり消えてしまう前にメモしておこう。
いずれも対象年齢は10歳前後から、だと思う。
フランス語も易しいのでスラスラとストレスなく読めて、話に没頭できるのがいい。
まず1冊目。
Elizabeth Cody Kimmel著
「Esprit, es-tu là ?, Tome 1 : Le fantôme de la bibliothèque」
(すでに邦訳されていた。タイトルは「ある日とつぜん、霊媒師」)
中学生のKateは、母親が霊媒師であることが悩みの種だ。
自宅で変な音が聞こえたり物が突然どさっと落ちたりすることには慣れていても、
それがいつか学校の友達にバレたら、相当困ったことになると思っている。
ところが、困ったことは更にあった。
なんと、Kate自身もその霊媒体質を受け継いでいることがはっきりしたのだ。
13歳の誕生日が過ぎたとたん、彼女は幽霊が歩き回る姿が見えるようになった。
特異な才能を受け継いでしまったことを悩む少女が、
同じように「人とは違う」才能に恵まれた孤独な少女と知り合い、
一緒になって、とある迷える幽霊を救おうとする。
結果的に、その人助け(幽霊助け)が彼女たちに勇気と自信を与える。
なるほど自分は人とは違う、けれどもなんとかそれと折り合って行こうじゃないか、
2人の少女が前向きに自分と向き合えるようになって話は終わる。
小学校も高学年になると、子どもたちにもはっきりと自我が出てくる。
自分と友達の違いが気になって、自分と向き合わざるを得なくなる。
そんな不安定な時期、不安で不安でたまらない時期があったことを、
この本を読みながら久しぶりに思い出した。
ストーリーに破綻がなくて、脇役も上手く描かれている。
不安な主人公をそっと見守るお母さんの描き方もよかった。
続編があるそうなので、見つけたら読んでみたいと思う。
2冊目。
Ulrike Kuckero 著
「Alice au pays des Mongols(モンゴル人の国のアリス)」
全然知らないで借りてしまったのだが、
ダウン症候群のことを、フランス語ではmongolismeと呼んだそうだ。
(今ではこの言葉は使われないー少なくとも公には)
ゾエとアリスは二卵性双生児なので似ていない。
顔だけでなく、アリスはダウン症でゾエはそうでないところも違う。
10代前半のゾエは、アリスの天衣無縫さを愛しながらも、
それによって自分に降り掛かってくる面倒に辟易している。
ある時、通りがかりの人が言う。
「あら、この子はあなたの姉妹なの?ご両親は養子をもらったのかしら?」
その言葉を聞いていたアリスがゾエに問うのだ。
「え、わたしって他所の国から貰われて来たの?」
アリスのことで疲れてイライラしていたゾエは、つい言ってしまう。
「モンゴルから来たんじゃない?」
それからというもの、アリスはモンゴルに行くことを夢見るようになる。
そんなアリスが、街のお祭りのクイズで一等賞を取る。
一等の賞金は「世界中好きなところに行っていい」飛行機チケット。
司会者の人がアリスに訪ねる。キミはどこに行きたいかな?
アリスは迷わず言う。モンゴルよ。家族皆で行くの!
そうして家族全員で夏休みにモンゴル旅行に行くことになる。
ここまででも随分話が上手すぎないか、と思われてならなかったのだけれど、
モンゴルについてからの話は更にすごい。
アリスは、遠い国から特別に遣わされた貴人とみなされ、
(そういうお告げがあったのだ)
下にも置かぬ大歓迎を受けるのである。
そして、アリスのすること、語ることのすべてが、
巡り会ったモンゴル人の共同体のプラスに働き、尊ばれる。
ダウン症の子がいること、
ダウン症の家族を持つ人がいること、
モンゴルという、まったく文化も風習も違う国で生きる人がいること。
それを描いていることは悪くないと思う。
でも、いかんせん話が上手すぎる。
そして、ゾエの心情も中途半端にしか描かれていないので物足りない。
もっと他に話の作りようがあるのではないかとずっと考えながら読了。
わたしは納得できなかったので、人には勧めない。
3冊目。
Rosemary Sutcliff著
「Les trois légions, tome 2 : L'honneur du centurion」
5月に読んだ第一部の続編で邦題は「銀の枝」。
上記の2冊は現代物だしハッピーエンドなので、読むのも気楽。
それにくらべると、最後の1冊は歴史ものだし主題もハードだしで、
少し気合いを入れて読む感じ。
対象年齢も中学生以降くらいになると思う。
第二部では、第一部の主人公の子孫の話が語られる。
3世紀最後の最後、カラウシウスがブリテンの皇帝を称していた時代の話。
先祖を同じくする2人の青年が、カラウシウスに仕えている。
カラウシウスは心の熱い、部下に慕われる皇帝であった。
そのカラウシウスが側近のアレクタスに暗殺されたことを知り、
青年2人は反アレクタスの有志を集めて反乱軍を組織する。
主題はちょっと難しい、と思う。
2人の青年は最後には暗殺された皇帝の復讐をとげる。
けれど、復讐したからそれで良しという単純な話ではない。
自分たちは果たして誰のために、何のために闘ったのか、と自問する。
物事は必ずしも正悪、白黒と簡単に分けられるわけではないこと、
それでも人はどちらかを選ばなければならないこと。
そんなことを考えながら本を閉じた。
第一部はローマ対土着のブリテン文化だったのが、
第二部になるとそこにサクソン人が入ってくる。
ブリテン島を巡って、ローマとサクソンがせめぎ合う。
さて第三部はどうなることか。是非読まなくては。
‥‥というわけで、子ども向きの本は肩に力を入れずに読めるので嬉しい。
すっかり脱力できたので、次に選んだのがぐっとハードな名作。
「まだ読み終わらないの?」と子どもに言われながらも
毎日ちびちび頑張って読んでいる。
早く読み終わって紹介したい!
(これが読み終わったら、一気にお気楽エンタメに走るのだ)
by poirier_AAA
| 2013-08-28 20:57
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