2013年 05月 23日
図書館にて |
図書館は、我が家にとっては娯楽施設のひとつです。
子どもも大きくなったので、
もう放っておいても本を傷める心配もないし、
1人で字も読めるから親が一緒にいる必要もない。
わたしは(ぼくは)ここらへんにいるからね〜
と、お互いに宣言した後は、それぞれが勝手に楽しみ始めます。
この、それぞれ勝手に、という自由さがとても気に入っています。
図書館には子どもの本のコーナーもあるのですが、
ここが結構面白い。
自分が子どもの頃に学校の図書館で親しんだ本がたくさんあるし、
読んでみたいなぁと思うようなシリーズもたくさんあります。
さらに言えば、フランス語がそんなにできるわけじゃないわたしにとって、
児童文学の“これならわたしでもスラスラわかるじゃない”という喜びが、
凹みがちな自尊心を微妙にくすぐって救済してくれるわけで、
楽しみながら勉強もできてしまうという、有難い教材でもあるのです。
先日は、パトリック・ジュースキンドの「ゾマーさんのこと」という本を、
子ども用の棚に見つけました。
いつか読んでみようと思っていた本だったので、
そのまま借りて帰ろうとぱらぱらとページをめくっていた、その時。
ショックで体温が3度くらい下がったような気がしました。
本文の最後のページの真ん中が、
四角くカッターで切り取られているのを見つけたのです。
証明写真でも本の上で切り抜いたのだろうか?と思いました。
裏側のページを見ると、そこは作者の紹介ページになっていて、
ちょうど作者の写真が載っていたと思われる部分が切り取られています。
誰かがレポートにでも使ったのでしょうか。
そうして無残に切り抜かれた部分には、
わたしの想像では補いきれない言葉がいくつも含まれていて、
作品は最後の大事な言葉を盗まれたまま、
何事もなかったかのように返却され、棚に並んでいたのです。
何とも言えない重苦しい気持ちになりました。
貸出カウンターにいた若い男性職員に、
こんなふうになっているんですよ、と本を見せると、
その人も一瞬言葉を失って、それから
この本は残念ながらお貸しできませんね、と。
図書館は人の良識を前提に成り立っているわけだけれど、
その期待を裏切られるような例もそれはたくさんあるわけで、
図書館の司書をしていたら、
ずいぶん悲しい気持ちになるかもしれないなぁと、
たった一度の経験でどよんと落ち込んでしまったわたしは思いました。
傷んだ本が修復できるかどうかが問題なのじゃないのです。
そういうふうに、本を傷めても平気な人がいることに傷つくのです。
長い年月にわたって公共のトイレを掃除しているという人で、
初めはトイレを汚す人が許せなかったのに、
やがて腹が立たなくなった、という人がいるのだそうです。
わたしは修行が足らないので、どうしてもその気持ちが想像できません。
図書館の本を切り抜く人がいるなんて悲しい、そんな人は許せない、
と思ってしまう。
長い間傷ついた本と向き合って修復を繰り返していたら、
やがてはそういう行動をしてしまった人間もすべてひっくるめて、
受け入れられるようになるのでしょうか?
お気に入りの図書館で遭遇した、ちょっと衝撃的な出来事でした。
子どもも大きくなったので、
もう放っておいても本を傷める心配もないし、
1人で字も読めるから親が一緒にいる必要もない。
わたしは(ぼくは)ここらへんにいるからね〜
と、お互いに宣言した後は、それぞれが勝手に楽しみ始めます。
この、それぞれ勝手に、という自由さがとても気に入っています。
図書館には子どもの本のコーナーもあるのですが、
ここが結構面白い。
自分が子どもの頃に学校の図書館で親しんだ本がたくさんあるし、
読んでみたいなぁと思うようなシリーズもたくさんあります。
さらに言えば、フランス語がそんなにできるわけじゃないわたしにとって、
児童文学の“これならわたしでもスラスラわかるじゃない”という喜びが、
凹みがちな自尊心を微妙にくすぐって救済してくれるわけで、
楽しみながら勉強もできてしまうという、有難い教材でもあるのです。
先日は、パトリック・ジュースキンドの「ゾマーさんのこと」という本を、
子ども用の棚に見つけました。
いつか読んでみようと思っていた本だったので、
そのまま借りて帰ろうとぱらぱらとページをめくっていた、その時。
ショックで体温が3度くらい下がったような気がしました。
本文の最後のページの真ん中が、
四角くカッターで切り取られているのを見つけたのです。
証明写真でも本の上で切り抜いたのだろうか?と思いました。
裏側のページを見ると、そこは作者の紹介ページになっていて、
ちょうど作者の写真が載っていたと思われる部分が切り取られています。
誰かがレポートにでも使ったのでしょうか。
そうして無残に切り抜かれた部分には、
わたしの想像では補いきれない言葉がいくつも含まれていて、
作品は最後の大事な言葉を盗まれたまま、
何事もなかったかのように返却され、棚に並んでいたのです。
何とも言えない重苦しい気持ちになりました。
貸出カウンターにいた若い男性職員に、
こんなふうになっているんですよ、と本を見せると、
その人も一瞬言葉を失って、それから
この本は残念ながらお貸しできませんね、と。
図書館は人の良識を前提に成り立っているわけだけれど、
その期待を裏切られるような例もそれはたくさんあるわけで、
図書館の司書をしていたら、
ずいぶん悲しい気持ちになるかもしれないなぁと、
たった一度の経験でどよんと落ち込んでしまったわたしは思いました。
傷んだ本が修復できるかどうかが問題なのじゃないのです。
そういうふうに、本を傷めても平気な人がいることに傷つくのです。
長い年月にわたって公共のトイレを掃除しているという人で、
初めはトイレを汚す人が許せなかったのに、
やがて腹が立たなくなった、という人がいるのだそうです。
わたしは修行が足らないので、どうしてもその気持ちが想像できません。
図書館の本を切り抜く人がいるなんて悲しい、そんな人は許せない、
と思ってしまう。
長い間傷ついた本と向き合って修復を繰り返していたら、
やがてはそういう行動をしてしまった人間もすべてひっくるめて、
受け入れられるようになるのでしょうか?
お気に入りの図書館で遭遇した、ちょっと衝撃的な出来事でした。
by poirier_AAA
| 2013-05-23 17:13
| 日々の断片
|
Comments(2)
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by
Mtonosama at 2013-05-24 06:53
それはショックですね。
幸せなことに最近そういう事件に遭遇していないので、
お話をきいてびっくり。
そうやって切り取っている人の顔を想像すると悲しくなりますね。
凹みがちな自尊心をふくらませてくれる存在ですか・・・・・
つぶれてしまう前に私もそういうもの見つけなきゃ。
幸せなことに最近そういう事件に遭遇していないので、
お話をきいてびっくり。
そうやって切り取っている人の顔を想像すると悲しくなりますね。
凹みがちな自尊心をふくらませてくれる存在ですか・・・・・
つぶれてしまう前に私もそういうもの見つけなきゃ。
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Commented
by
poirier_AAA at 2013-05-24 17:13
>mtonosamaさん、こんにちは。
そう、ちょっと悲しくなりますよね。
最近あんまりこういったことがなかったので、久しぶりにガツンとショックを受けてしまいました。
同じ時に借りて来た本、図書館のお兄さんが「これは面白いよ〜」と太鼓判を押してくれたので嬉しくって早速読み始めたのですが、毎晩10ページくらいで撃沈してしまいます。自尊心をくすぐるよりも先に夢の世界に誘ってもらってます^^。
そう、ちょっと悲しくなりますよね。
最近あんまりこういったことがなかったので、久しぶりにガツンとショックを受けてしまいました。
同じ時に借りて来た本、図書館のお兄さんが「これは面白いよ〜」と太鼓判を押してくれたので嬉しくって早速読み始めたのですが、毎晩10ページくらいで撃沈してしまいます。自尊心をくすぐるよりも先に夢の世界に誘ってもらってます^^。