2013年 05月 17日
レ・ミゼラブル |
機内で、少し前にかなり話題になった映画「レ・ミゼラブル」を観た。
日本では大絶賛だったこの映画、
何故かフランスの批評では星2つ(満点が4つ星)で、
その上、巷でも全然噂になっている様子がない。
この違いって何かな?と思いながら、
実は自分自身もあんまり観に行く気になれなかった。
「ためらって見逃した」映画が機内で観られるのは、ちょっと嬉しい。
観始めてじきに思った。
なるほど、フランスで人気が出なかった理由がわかるような気がする。
いや、すごく良くできた映画なのである。
舞台は素晴らしく作り上げられているし、
登場する役者がまた、揃いも揃って芸達者で歌が上手い。
観客の心をわしづかみにして揺さぶる感動的な場面もある。
映画作品として、積極的に文句をつける理由は全然ない。
だからこそ、なのかもしれない。
良くできているからこそ、逆に違和感を無視できない。
原因は、ミュージカルの映画化であること、に尽きると思う。
歌で舞台を作り上げる方法では、伝えられる内容はごく限られる。
しかも観客は舞台から遠い。
それと比べると映画はずっと自由度が高いし、お客とも近い。
言葉をたくさん使うこともできれば、沈黙したままでいることもできる。
細かい表情までつぶさに見せることが出来る。
同じ惨めさを伝えるのに、
ミュージカルなら2分歌う必要があるところ、
映画ならほんの一言、ほんの1つの場面、一瞬の表情で足りる。
切々と辛さを歌い上げるファンティーヌに、
もうわかったから、そんなに同じことを繰り返さなくても良いよ、
と言いたくなってしまうのが映画館の観客なのだ。
そりゃあ自分の国の作家の作品だもの、
フランス人が「レ・ミゼラブル」に無関心でいられるわけがない。
でも、2時間半の長い作品の中にあるのは、
ほんのわずかな言葉ばかり。
文豪ユゴーが延々と書き綴った言葉の上澄みにも足りない。
これでは退屈で冗長に感じられても無理はない。
それに、全体的に人物にも革命の様子にも、
フランスよりもアングロサクソンを感じる画面だった。
言葉が英語だということよりも、
文化の違いから来る違和感の方が大きかったかもしれない。
あれは、外人のわたしが言うのも変だけれど、
フランス人の市民革命の様子には到底見えなかったのだ。
ある文化を、その外にいる人が再現する難しさは常にある。
オペラの「蝶々夫人」くらいブッ飛んでしまうと許せる日本人像も、
外国映画ででてくるステレオタイプ的日本人像が許せなかったりするものね。
上手く似せてつくられていればいるほど、
偽物であることのいやらしさが出てきて、受け入れられなくなる。
そんなわけで、
良くできた映画だし、出演者も大熱演だと思うけれど、
個人的にはフランスでの評価に限りなく近い気持ちで観終わったのだった。
日本では大絶賛だったこの映画、
何故かフランスの批評では星2つ(満点が4つ星)で、
その上、巷でも全然噂になっている様子がない。
この違いって何かな?と思いながら、
実は自分自身もあんまり観に行く気になれなかった。
「ためらって見逃した」映画が機内で観られるのは、ちょっと嬉しい。
観始めてじきに思った。
なるほど、フランスで人気が出なかった理由がわかるような気がする。
いや、すごく良くできた映画なのである。
舞台は素晴らしく作り上げられているし、
登場する役者がまた、揃いも揃って芸達者で歌が上手い。
観客の心をわしづかみにして揺さぶる感動的な場面もある。
映画作品として、積極的に文句をつける理由は全然ない。
だからこそ、なのかもしれない。
良くできているからこそ、逆に違和感を無視できない。
原因は、ミュージカルの映画化であること、に尽きると思う。
歌で舞台を作り上げる方法では、伝えられる内容はごく限られる。
しかも観客は舞台から遠い。
それと比べると映画はずっと自由度が高いし、お客とも近い。
言葉をたくさん使うこともできれば、沈黙したままでいることもできる。
細かい表情までつぶさに見せることが出来る。
同じ惨めさを伝えるのに、
ミュージカルなら2分歌う必要があるところ、
映画ならほんの一言、ほんの1つの場面、一瞬の表情で足りる。
切々と辛さを歌い上げるファンティーヌに、
もうわかったから、そんなに同じことを繰り返さなくても良いよ、
と言いたくなってしまうのが映画館の観客なのだ。
そりゃあ自分の国の作家の作品だもの、
フランス人が「レ・ミゼラブル」に無関心でいられるわけがない。
でも、2時間半の長い作品の中にあるのは、
ほんのわずかな言葉ばかり。
文豪ユゴーが延々と書き綴った言葉の上澄みにも足りない。
これでは退屈で冗長に感じられても無理はない。
それに、全体的に人物にも革命の様子にも、
フランスよりもアングロサクソンを感じる画面だった。
言葉が英語だということよりも、
文化の違いから来る違和感の方が大きかったかもしれない。
あれは、外人のわたしが言うのも変だけれど、
フランス人の市民革命の様子には到底見えなかったのだ。
ある文化を、その外にいる人が再現する難しさは常にある。
オペラの「蝶々夫人」くらいブッ飛んでしまうと許せる日本人像も、
外国映画ででてくるステレオタイプ的日本人像が許せなかったりするものね。
上手く似せてつくられていればいるほど、
偽物であることのいやらしさが出てきて、受け入れられなくなる。
そんなわけで、
良くできた映画だし、出演者も大熱演だと思うけれど、
個人的にはフランスでの評価に限りなく近い気持ちで観終わったのだった。
by poirier_AAA
| 2013-05-17 19:14
| 観る・鑑賞する
|
Comments(6)
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saheizi-inokori at 2013-05-17 19:59
よくわかります。私にはある意味ではお伽噺なんですがフランス人にとっては明治維新を英語で日本人が見るような違和感でしょうね。
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Mtonosama at 2013-05-18 06:57
「レ・ミゼラブル」は風邪っぴきで試写を観損ない、
だからといって映画館で観る程の気は起きず、いまだ観ていません。
大体、前宣伝が大きく、周囲が騒げば騒ぐほど、
観たくなくなるというタチでもありまして。
オペラなんかも映画化されますが、あまり食指はそそられませんよね。
「椿姫」も「カルメン」も「ボエーム」もストーリーそのものは
単純なのに映画でもっともらしく見せられてもなぁ・・・
ミュージカルも「サウンド・オブ・ミュージック」「ウェストサイド物語」以外はNGです。
舞台ものの映画化で唯一例外はシネマ歌舞伎。
勘三郎の「らくだ」は最高でした。
彼の舞台がもう観られないことを考えるとシネマ歌舞伎の存在は
本当に貴重です。
だからといって映画館で観る程の気は起きず、いまだ観ていません。
大体、前宣伝が大きく、周囲が騒げば騒ぐほど、
観たくなくなるというタチでもありまして。
オペラなんかも映画化されますが、あまり食指はそそられませんよね。
「椿姫」も「カルメン」も「ボエーム」もストーリーそのものは
単純なのに映画でもっともらしく見せられてもなぁ・・・
ミュージカルも「サウンド・オブ・ミュージック」「ウェストサイド物語」以外はNGです。
舞台ものの映画化で唯一例外はシネマ歌舞伎。
勘三郎の「らくだ」は最高でした。
彼の舞台がもう観られないことを考えるとシネマ歌舞伎の存在は
本当に貴重です。
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poirier_AAA at 2013-05-18 18:43
>saheiziさん、こんにちは。
そうなんですよね。文化の違うあなたたちに何がわかる、と言いたくなってしまう。。。
それぞれの国(民族)が中で共有する歴史認識があって、そういうものはなかなか外からでは理解し難いものがあるのだと思います。だからこそ努力して相手を知らなければいけないはずなのに、最近の日本の政治家の発言って、完全に自分基準でしかなされていない気がして背筋が寒くなるのです。
そうなんですよね。文化の違うあなたたちに何がわかる、と言いたくなってしまう。。。
それぞれの国(民族)が中で共有する歴史認識があって、そういうものはなかなか外からでは理解し難いものがあるのだと思います。だからこそ努力して相手を知らなければいけないはずなのに、最近の日本の政治家の発言って、完全に自分基準でしかなされていない気がして背筋が寒くなるのです。
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poirier_AAA at 2013-05-18 18:53
>mtonosamaさん、こんにちは。
やっぱり。なんとなくとのさんは観ていらっしゃらないんじゃないかな、と思っていました。大当たり〜。
オペラもミュージカルも、多分舞台をそのままフィルムに収めたものなら許容度も大きくなるんだと思います。テレビを通して舞台を見るのと同じですものね。でも、下手に背景だけ限りなく実写にして、表現道具(歌)をそのまま使うというのがマズいんでしょう。映画でも舞台でもない、中途半端なものになってしまいますから。やっぱり、それぞれに適したやり方、というのがあるんだと思います。
舞台の良さは「生もの」であることに尽きると思っているのですが、今はもう見られない人の舞台が映像として残っているのは、ファンとしてはものすごく有難いです。わたしの場合は主にオペラなんですけど。。。勘三郎の「らくだ」も、いつか絶対に観ます。
やっぱり。なんとなくとのさんは観ていらっしゃらないんじゃないかな、と思っていました。大当たり〜。
オペラもミュージカルも、多分舞台をそのままフィルムに収めたものなら許容度も大きくなるんだと思います。テレビを通して舞台を見るのと同じですものね。でも、下手に背景だけ限りなく実写にして、表現道具(歌)をそのまま使うというのがマズいんでしょう。映画でも舞台でもない、中途半端なものになってしまいますから。やっぱり、それぞれに適したやり方、というのがあるんだと思います。
舞台の良さは「生もの」であることに尽きると思っているのですが、今はもう見られない人の舞台が映像として残っているのは、ファンとしてはものすごく有難いです。わたしの場合は主にオペラなんですけど。。。勘三郎の「らくだ」も、いつか絶対に観ます。
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kanafr at 2013-05-20 06:00
私はこの映画を見ていないんですが、日本では相当話題だったみたいですね。
№2に「見に行くの?」と聞いたら「あれは違うでしょ」でした。№2の友人達の様子を聞いても誰も行かなかったみたいです。
私は何と言ってもレ・ミゼラブルはフランスに住み始めた時に偶然TVで放映されていたジャンギャバンの映画が、心に残っています。フランス語もろくに分からないのに声をあげて泣きましたもの。本当に素晴らしい映画でしたよ。
№2に「見に行くの?」と聞いたら「あれは違うでしょ」でした。№2の友人達の様子を聞いても誰も行かなかったみたいです。
私は何と言ってもレ・ミゼラブルはフランスに住み始めた時に偶然TVで放映されていたジャンギャバンの映画が、心に残っています。フランス語もろくに分からないのに声をあげて泣きましたもの。本当に素晴らしい映画でしたよ。
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poirier_AAA at 2013-05-20 22:53
>kanafrさん、こんにちは。
日本で本当にすごい話題になっていましたものね。だから観てからでないと何も言えないだろうと思ったのですが、観てみたらやっぱり薄々感じていた通りでした。よほどのミュージカル好きとかでない限り、フランスでは受け入れられないだろうなぁと思いました。
ギャバンの映画は観ていないのですけれど、原作に対して考えるところがあるので、ハリウッド的(アメリカ的と言っても良いかも)お手軽感動図式に嵌め込まれたくないよと思いながら観ていた、天の邪鬼なわたしです。ギャバンのも、いつか観てみなくては。
日本で本当にすごい話題になっていましたものね。だから観てからでないと何も言えないだろうと思ったのですが、観てみたらやっぱり薄々感じていた通りでした。よほどのミュージカル好きとかでない限り、フランスでは受け入れられないだろうなぁと思いました。
ギャバンの映画は観ていないのですけれど、原作に対して考えるところがあるので、ハリウッド的(アメリカ的と言っても良いかも)お手軽感動図式に嵌め込まれたくないよと思いながら観ていた、天の邪鬼なわたしです。ギャバンのも、いつか観てみなくては。