2012年 10月 10日
助け舟 |
昨日の記事を書いてから、ネット上ですごいものを見つけてしまいました。
京都大学で言語学を研究されている東郷雄二先生のサイトです。
フランス語学習者の間では有名な白水社の「ふらんす」という雑誌に、
2年にわたって連載された先生の文章が、全部読めるようになっています。
いわゆるフランス語の文法に関する話なのですが、
これが素晴らしく面白い。
文法書をろくに読んだことがないわたしが言うのも変ですが、
もう、目から鱗がぼろぼろ落ちていくのが実感できるほど。
文法に関する文章で、こんなに興奮させられたのは久しぶりです。
例えば、フランス語の冠詞の話。
一般には不定冠詞、定冠詞、部分冠詞の3種類あると教えられるわけですが、
東郷先生はまず、定冠詞と不定冠詞をわけてしまいます。
その後で、数えられるか(可算)か数えられないか(非可算)を考えます。
そして部分冠詞は、不定冠詞の非可算形であるというのです。
なるほど、そう考えれば納得がいきます。
続いて感動的なのが、現在と半過去は時制を支配する二大巨頭という話。
単純過去と現在は,「出来事の語り」という分野においては東 西の横綱であり、
その独立性の強さによって他の時制を圧倒している、だの、
単純過去(現在)が時間軸を指定し、過去(現在)ゾーンを開く、だの、
もう、あまりにも明快すぎる説明でゾクゾクしてしまう。
他にも、
半過去を続けることによって読者を宙ぶらりんにして期待感を高める
条件法はパラレルワールドだ
接続法は現 実か否かを決められるほどの事実性を持たない
だの、これが興奮しないでいられましょうかという面白さ。
文法って、最初の頃は覚えなければならない厄介なものでしかないけれど、
少ししてから見直すと、はっきりと意識できないままに使っていた言語を
きちんと整理してみせてくれる、有難い存在です。
知識の裏付けもないまま、耳から覚えたとおりに使っていた接続法や条件法などが、
なるほど確かにきちんとカテゴライズすることができる、これは感動します。
自分一人で楽しんでいるだけではもったいないので、お知らせしたくて書きました。
フランス語を勉強中の方、時間があったら是非全部読んで見て下さい。
混沌としていた世界が落ち着いて、視野がひらけると思います。
最後になりましたが、
素晴らしい解説をネットで公開して下さる東郷先生に心から感謝の意を表します。
京都大学で言語学を研究されている東郷雄二先生のサイトです。
フランス語学習者の間では有名な白水社の「ふらんす」という雑誌に、
2年にわたって連載された先生の文章が、全部読めるようになっています。
いわゆるフランス語の文法に関する話なのですが、
これが素晴らしく面白い。
文法書をろくに読んだことがないわたしが言うのも変ですが、
もう、目から鱗がぼろぼろ落ちていくのが実感できるほど。
文法に関する文章で、こんなに興奮させられたのは久しぶりです。
例えば、フランス語の冠詞の話。
一般には不定冠詞、定冠詞、部分冠詞の3種類あると教えられるわけですが、
東郷先生はまず、定冠詞と不定冠詞をわけてしまいます。
その後で、数えられるか(可算)か数えられないか(非可算)を考えます。
そして部分冠詞は、不定冠詞の非可算形であるというのです。
なるほど、そう考えれば納得がいきます。
続いて感動的なのが、現在と半過去は時制を支配する二大巨頭という話。
単純過去と現在は,「出来事の語り」という分野においては東 西の横綱であり、
その独立性の強さによって他の時制を圧倒している、だの、
単純過去(現在)が時間軸を指定し、過去(現在)ゾーンを開く、だの、
もう、あまりにも明快すぎる説明でゾクゾクしてしまう。
他にも、
半過去を続けることによって読者を宙ぶらりんにして期待感を高める
条件法はパラレルワールドだ
接続法は現 実か否かを決められるほどの事実性を持たない
だの、これが興奮しないでいられましょうかという面白さ。
文法って、最初の頃は覚えなければならない厄介なものでしかないけれど、
少ししてから見直すと、はっきりと意識できないままに使っていた言語を
きちんと整理してみせてくれる、有難い存在です。
知識の裏付けもないまま、耳から覚えたとおりに使っていた接続法や条件法などが、
なるほど確かにきちんとカテゴライズすることができる、これは感動します。
自分一人で楽しんでいるだけではもったいないので、お知らせしたくて書きました。
フランス語を勉強中の方、時間があったら是非全部読んで見て下さい。
混沌としていた世界が落ち着いて、視野がひらけると思います。
最後になりましたが、
素晴らしい解説をネットで公開して下さる東郷先生に心から感謝の意を表します。
by poirier_AAA
| 2012-10-10 19:02
| 言葉を学ぶ
|
Comments(6)
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らうとら
at 2012-10-10 20:48
x
実は昨日が新移民向けフランス語教室の初日でした。生徒が8人と少ないので初級も中級も一緒の混合クラス、こちらは「こんにちは、私の名前は××です」の段階なので文法も何もあったものではありませんが、今後わが仏語が進歩すれば(するんかいな?)ご紹介くださったサイト、とても役に立つだろうと期待しています。×十年前は条件法の段階で早々につまづきましたからね、わたくし。ああ、過去形も未来形もない(に等しい)中国語がなつかしい・・・
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yumiyane at 2012-10-10 22:38
遭難中だったのに、板切れどころか救命ボートが見つかった、ということなんでしょうか。
フランス語の文法につき、私には全くなんのことだか分かりませんが、
英語の勉強をしているときに、過去分詞とか過去完了とかなんのっこっちゃと思っていたことが、実際会話をしていると度々使わないといけないし、よくよく考えると平気で日本語でも使っている、ということが分かりました。
梨の木さんみたいに哲学的な捉え方は出来ませんが、微妙な時間軸が会話の中にどれだけ必要かで、伝えることの量が増えていきますね。
フランス語の文法につき、私には全くなんのことだか分かりませんが、
英語の勉強をしているときに、過去分詞とか過去完了とかなんのっこっちゃと思っていたことが、実際会話をしていると度々使わないといけないし、よくよく考えると平気で日本語でも使っている、ということが分かりました。
梨の木さんみたいに哲学的な捉え方は出来ませんが、微妙な時間軸が会話の中にどれだけ必要かで、伝えることの量が増えていきますね。
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poirier_AAA at 2012-10-11 16:35
>らうとらさん、こんにちは。
目の調子は如何ですか?目の不調は生活全般に影響を及ぼしますよね。こんな長い文を書いておいてなんですが、どうぞ、くれぐれも大事になさって下さい。
ケベックのフランス語の発音って、フランスのフランス語とはだいぶ違いますよね。教材でフランス発のものを使っているとしたら、いわゆるフランス風発音も勉強しつつケベックの発音も聞いて話さなければいけないわけで、大変そうだなぁと思いました。
中国語の過去も未来も無いに等しいという話は、最近初めて知ってびっくりしていたところです。時制がたくさんあるのも面倒くさいけれど、逆になさすぎるというのも不安になるものですね。前後関係はどうやって判断するんでしょう。いつか、中国語の世界もちょっと覗いてみたい気がします。
目の調子は如何ですか?目の不調は生活全般に影響を及ぼしますよね。こんな長い文を書いておいてなんですが、どうぞ、くれぐれも大事になさって下さい。
ケベックのフランス語の発音って、フランスのフランス語とはだいぶ違いますよね。教材でフランス発のものを使っているとしたら、いわゆるフランス風発音も勉強しつつケベックの発音も聞いて話さなければいけないわけで、大変そうだなぁと思いました。
中国語の過去も未来も無いに等しいという話は、最近初めて知ってびっくりしていたところです。時制がたくさんあるのも面倒くさいけれど、逆になさすぎるというのも不安になるものですね。前後関係はどうやって判断するんでしょう。いつか、中国語の世界もちょっと覗いてみたい気がします。
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poirier_AAA at 2012-10-11 16:54
>yumiyaneさん、こんにちは。
最近、人生における第二のフランス語ブーム(?)が訪れているようで、寝ても覚めてもフランス語のことばかり考えており、ついブログもその方向に向いてしまいます。こんなローカルな話題にコメントまで頂戴して、申し訳ない気持ちです。
むかしむかし、言語学研究室でアルバイトをしたことがあります。そこでの仕事は、ひたすら本や会話や辞書から用例を集めることでした。そういう山のような地道な作業とそれをもとにした考察を経て、この言語はこういうふうに使うらしいという説がでてくるわけで、苦労もなく文法書を読めばいいだけの一般学習者は恵まれてるんだよなぁと思うのです。溺れかけた人に惜しげなく救命艇を送ってくれる、言語学者(文法)って本当に有難い存在だなぁと思ったことでした。‥‥といって、文法用語を覚えるのは今でもスゴく苦手なんですけど(笑)
最近、人生における第二のフランス語ブーム(?)が訪れているようで、寝ても覚めてもフランス語のことばかり考えており、ついブログもその方向に向いてしまいます。こんなローカルな話題にコメントまで頂戴して、申し訳ない気持ちです。
むかしむかし、言語学研究室でアルバイトをしたことがあります。そこでの仕事は、ひたすら本や会話や辞書から用例を集めることでした。そういう山のような地道な作業とそれをもとにした考察を経て、この言語はこういうふうに使うらしいという説がでてくるわけで、苦労もなく文法書を読めばいいだけの一般学習者は恵まれてるんだよなぁと思うのです。溺れかけた人に惜しげなく救命艇を送ってくれる、言語学者(文法)って本当に有難い存在だなぁと思ったことでした。‥‥といって、文法用語を覚えるのは今でもスゴく苦手なんですけど(笑)
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mmemiya at 2012-10-12 06:55
久しぶりにコメントさせていただきます。
私も、ずいぶん前に東郷先生のページを見て、すごい!と感動したのですが、いかんせん、元のフランス語力がなさすぎて、読んでほおーと思って終わってしまったのでした…。梨の木さんほどフランス語がおできになると、きっと役に立つ羅針盤となるのでしょうね。言語学研究室でのアルバイトも興味深いお話でした。私は言語学者になりたくてそういう大学に進みましたが、あまりにも狭い狭い範囲を地道に掘り下げていく作業に、これは私には無理…と早々に挫折してしまいました。
私も、ずいぶん前に東郷先生のページを見て、すごい!と感動したのですが、いかんせん、元のフランス語力がなさすぎて、読んでほおーと思って終わってしまったのでした…。梨の木さんほどフランス語がおできになると、きっと役に立つ羅針盤となるのでしょうね。言語学研究室でのアルバイトも興味深いお話でした。私は言語学者になりたくてそういう大学に進みましたが、あまりにも狭い狭い範囲を地道に掘り下げていく作業に、これは私には無理…と早々に挫折してしまいました。
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poirier_AAA at 2012-10-12 16:34
>mmemiyaさん、こんにちは。
すごくお忙しそうでしたけれど、少しは落ち着かれましたか?
コメントを拝見して、やっぱりと思いました。なんとなくミヤさんからは似た者の匂いを感じていたものですから‥‥。わたしも実は言語学で卒論まで書いた身です。言語学的疑問を解き明かすことに生活をかけるほどの情熱を持てないと気がついて、結局普通の会社員になりました。それなのに、昔とった杵柄というんでしょうか、言葉関係の話になるとつい耳が大きくなってしまうんですよね。
東郷先生の文を読んでから白水社の「コレクション・フランス語・文法」をぱらぱらめくってみたら、ごく似たような事が書いてありました(汗)でも、似ているんだけれど、いまひとつ頭に入って来ないんですよ。東郷先生の説明を読んで、ようやくガチッとダイヤルがあった気がします。もう少し早くこの面白さがわかっていたら良かったのに(条件法的だ!)思う今日この頃です。
すごくお忙しそうでしたけれど、少しは落ち着かれましたか?
コメントを拝見して、やっぱりと思いました。なんとなくミヤさんからは似た者の匂いを感じていたものですから‥‥。わたしも実は言語学で卒論まで書いた身です。言語学的疑問を解き明かすことに生活をかけるほどの情熱を持てないと気がついて、結局普通の会社員になりました。それなのに、昔とった杵柄というんでしょうか、言葉関係の話になるとつい耳が大きくなってしまうんですよね。
東郷先生の文を読んでから白水社の「コレクション・フランス語・文法」をぱらぱらめくってみたら、ごく似たような事が書いてありました(汗)でも、似ているんだけれど、いまひとつ頭に入って来ないんですよ。東郷先生の説明を読んで、ようやくガチッとダイヤルがあった気がします。もう少し早くこの面白さがわかっていたら良かったのに(条件法的だ!)思う今日この頃です。