2012年 06月 01日
劣等感 |
夫と口論した。
原因はわたしのフランス語。
わたしは自分のフランス語に危機感を持っている。
どうにかしなければ、今のままでは中途半端すぎる。
さびついた頭をクリアにするためにも、まずは学校に行こうと思った。
夫は、それは違うと言う。
キミのフランス語レヴェルなら学校に行く必要はない、とまで言う。
キミはしゃべれるし、読むのも好きだし、あとは一人で書いてみることだ。
それを自分が添削してやる。
それで十分な訓練になる。
わたしは懐疑的だ。
言葉が話せる人がすべて言語の教師になれるわけではない。
夫の関心や語彙が偏っていることもわかっている。
できることなら、第三者の目を通して自分の力を客観的に見てみたい。
ほとんど夫婦喧嘩すれすれの険悪な議論が続いた後、夫がはっとして言った。
キミはひょっとして自分のフランス語に自信がないのか?
あったり前じゃないか。そんなもの、どこを叩いたら出てくるのだ。
口を開けば、多少はしゃべれても間違いばっかり。
文章を書かせたら小学生レヴェルだよ。
それを自覚していながら、どうして自信が持てる?
自分が恥ずかしくて恥ずかしくて、劣等感の塊だよ。
すると夫はまた、それはちがう、と言う。
どうしてキミが自分を恥ずかしく思うのだ?
キミはフランスで義務教育を受けたわけじゃない。
成人になってから勉強したのだ。
不完全なのは当然なことだ。それはキミのせいじゃない。
恥じる必要など全然ない。自信をもつべきだよ。
恥ずかしいのは、この国で教育を受けていながら、大学生や社会人になっても単純な間違いをしてしまう人達だ。
わたしは混乱する。
恥ずかしいと思うのはおかしい?
ここで義務教育を受けなかったからなんて、わたしには言い訳がましく聞こえる。
5年前にフランスに来た移民で、フランスでは学校にも行っていなくて、日本で成人してからフランス語を学んだだけなのですという事情を、わたしはカードに書いて常に胸の前にぶら下げて歩いているわけではない。公的な手紙を書く度に、「当方の事情」という但し書きを添付するわけでもない。相手は、目の前にその瞬間に呈示された物を見て相手を判断する。事情を酌量してくれる余裕のある人ばかりではない。
わたしはずっとそう思ってきた。
自信と劣等感の話は、いつまでたっても並行線のまま。
けれど、その結果、家庭内フランス語教室の話がまとまった。
これから毎日、わたしは日中にフランス語を書く。
文章の要約をしたり、サンテーズという複数の文章の統合をしたり。
それを夫が添削してくれるそうだ。
思わぬなりゆきになって、自分でもちょっと驚いている。
でも、渡りに船、とりあえず続けてみようと思う。
少しは自信を持てるようになるかもしれない。
つらつら考えるに、フランスに来てからというもの自分に自信が持てなくて、いつのまにか卑屈になっていたのかもしれないと思う。日本でなら「フルタイムで責任のある仕事をして、これだけ収入があります」と胸を張れたのに、ここでは何もない。職歴も無ければ学歴も資格(いわゆるフランスで認められるもの、ね)もない。ナイナイ尽くしの専業主婦。そうしてここでは専業主婦に対する風当たりが相当強い。自覚していなかったけれど、積もりに積もった鬱憤を、いつのまにか全部未熟なフランス語のせいにしていたのかもしれないと思う。よく考えれば、自分の小心さと怠惰さのせいでしかないのに。フランス語を上手くなりたいと意地になっていたのは、傷ついていたプライドを修復したかったからだ。‥‥なんとまぁ、ちっぽけなわたし。
P.S. 書いてから思った。フルタイムで責任のある仕事をしているって、育児や主婦業だって立派にそうじゃないか。お金をもらわなきゃ仕事として価値がないなんて、そんなわけないよね。‥‥とは言っても、自分の収入があるってえのは心強いもんだが。
原因はわたしのフランス語。
わたしは自分のフランス語に危機感を持っている。
どうにかしなければ、今のままでは中途半端すぎる。
さびついた頭をクリアにするためにも、まずは学校に行こうと思った。
夫は、それは違うと言う。
キミのフランス語レヴェルなら学校に行く必要はない、とまで言う。
キミはしゃべれるし、読むのも好きだし、あとは一人で書いてみることだ。
それを自分が添削してやる。
それで十分な訓練になる。
わたしは懐疑的だ。
言葉が話せる人がすべて言語の教師になれるわけではない。
夫の関心や語彙が偏っていることもわかっている。
できることなら、第三者の目を通して自分の力を客観的に見てみたい。
ほとんど夫婦喧嘩すれすれの険悪な議論が続いた後、夫がはっとして言った。
キミはひょっとして自分のフランス語に自信がないのか?
あったり前じゃないか。そんなもの、どこを叩いたら出てくるのだ。
口を開けば、多少はしゃべれても間違いばっかり。
文章を書かせたら小学生レヴェルだよ。
それを自覚していながら、どうして自信が持てる?
自分が恥ずかしくて恥ずかしくて、劣等感の塊だよ。
すると夫はまた、それはちがう、と言う。
どうしてキミが自分を恥ずかしく思うのだ?
キミはフランスで義務教育を受けたわけじゃない。
成人になってから勉強したのだ。
不完全なのは当然なことだ。それはキミのせいじゃない。
恥じる必要など全然ない。自信をもつべきだよ。
恥ずかしいのは、この国で教育を受けていながら、大学生や社会人になっても単純な間違いをしてしまう人達だ。
わたしは混乱する。
恥ずかしいと思うのはおかしい?
ここで義務教育を受けなかったからなんて、わたしには言い訳がましく聞こえる。
5年前にフランスに来た移民で、フランスでは学校にも行っていなくて、日本で成人してからフランス語を学んだだけなのですという事情を、わたしはカードに書いて常に胸の前にぶら下げて歩いているわけではない。公的な手紙を書く度に、「当方の事情」という但し書きを添付するわけでもない。相手は、目の前にその瞬間に呈示された物を見て相手を判断する。事情を酌量してくれる余裕のある人ばかりではない。
わたしはずっとそう思ってきた。
自信と劣等感の話は、いつまでたっても並行線のまま。
けれど、その結果、家庭内フランス語教室の話がまとまった。
これから毎日、わたしは日中にフランス語を書く。
文章の要約をしたり、サンテーズという複数の文章の統合をしたり。
それを夫が添削してくれるそうだ。
思わぬなりゆきになって、自分でもちょっと驚いている。
でも、渡りに船、とりあえず続けてみようと思う。
少しは自信を持てるようになるかもしれない。
つらつら考えるに、フランスに来てからというもの自分に自信が持てなくて、いつのまにか卑屈になっていたのかもしれないと思う。日本でなら「フルタイムで責任のある仕事をして、これだけ収入があります」と胸を張れたのに、ここでは何もない。職歴も無ければ学歴も資格(いわゆるフランスで認められるもの、ね)もない。ナイナイ尽くしの専業主婦。そうしてここでは専業主婦に対する風当たりが相当強い。自覚していなかったけれど、積もりに積もった鬱憤を、いつのまにか全部未熟なフランス語のせいにしていたのかもしれないと思う。よく考えれば、自分の小心さと怠惰さのせいでしかないのに。フランス語を上手くなりたいと意地になっていたのは、傷ついていたプライドを修復したかったからだ。‥‥なんとまぁ、ちっぽけなわたし。
P.S. 書いてから思った。フルタイムで責任のある仕事をしているって、育児や主婦業だって立派にそうじゃないか。お金をもらわなきゃ仕事として価値がないなんて、そんなわけないよね。‥‥とは言っても、自分の収入があるってえのは心強いもんだが。
by poirier_AAA
| 2012-06-01 18:35
| 言葉を学ぶ
|
Comments(6)
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by
coco
at 2012-06-02 09:30
x
自分に厳しいね~。
確かにご主人の言うとおり!!と思うし、梨の木さんの反論する
言葉もその通り、とも思うけれど結局は最後に書かれてる結論が
根本にある不安なのかなって。
今まで日本できちんと責任を持って生きてきた方だから今の状況
がなんとも心もとないかもしれないけれど少しは"しょうがない"部分
を認めて自分の気持ちをゆったりさせてあげて下さいね。
ま、私はその"しょうがない"感が多すぎる女ですが・・・
確かにご主人の言うとおり!!と思うし、梨の木さんの反論する
言葉もその通り、とも思うけれど結局は最後に書かれてる結論が
根本にある不安なのかなって。
今まで日本できちんと責任を持って生きてきた方だから今の状況
がなんとも心もとないかもしれないけれど少しは"しょうがない"部分
を認めて自分の気持ちをゆったりさせてあげて下さいね。
ま、私はその"しょうがない"感が多すぎる女ですが・・・
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poirier_AAA at 2012-06-02 15:36
>cocoさん、こんにちは。
こういうのを自分に厳しいと言えるのかよくわからないのだけれど。なんせ、動き出すまでに5年以上かかっているという怠け者ぶりだもの。
でも、夫と話しているうちにようやく自分のことが客観的に見えるようになりました。自分ひとりで考えている時は思いつかないようなことが、人を相手にしゃべっているとひょいっと頭に思い浮かんだりするものですよね。おかげで少し冷静になりました。
いやいや、これまで5年間“しょうがない”を言いまくって来たわけだから‥‥そろそろキリキリ締め上げないと、体も頭もぶくぶくに太ってしまいそうなのです〜。cocoさんみたいに好奇心旺盛でフットワークが軽かったら、わたしもこんなことを考えてる暇もなかったと思います。見習いたいですよ、ほんとに。
こういうのを自分に厳しいと言えるのかよくわからないのだけれど。なんせ、動き出すまでに5年以上かかっているという怠け者ぶりだもの。
でも、夫と話しているうちにようやく自分のことが客観的に見えるようになりました。自分ひとりで考えている時は思いつかないようなことが、人を相手にしゃべっているとひょいっと頭に思い浮かんだりするものですよね。おかげで少し冷静になりました。
いやいや、これまで5年間“しょうがない”を言いまくって来たわけだから‥‥そろそろキリキリ締め上げないと、体も頭もぶくぶくに太ってしまいそうなのです〜。cocoさんみたいに好奇心旺盛でフットワークが軽かったら、わたしもこんなことを考えてる暇もなかったと思います。見習いたいですよ、ほんとに。
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coco
at 2012-06-02 18:32
x
それは自由がきいて、自分が主導を握れる国にいるからですよ~
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poirier_AAA at 2012-06-03 17:49
>cocoさん、こんにちは。
確かに日本にいたときは楽でした〜。全部自分でスルスル動かせるって、ものすごい爽快感ですよね。
そうか、わたしにはフランスでも主導権を握りたいという野望があるのかも(笑)
確かに日本にいたときは楽でした〜。全部自分でスルスル動かせるって、ものすごい爽快感ですよね。
そうか、わたしにはフランスでも主導権を握りたいという野望があるのかも(笑)
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kanafr at 2012-06-08 09:20
私もフランスに来たばかりの頃、凄く悩みました。
一応チーフ職としてブランドを任されて仕事をしてきたのに、この国に来たら、な~ンにもなくなってしまった、空っぽの価値のない私っていう感じがして苦しみました。結婚する事、子供を生む事とは別に、仕事をする事が自分の存在を証明するものだったんです。
さらに滞在許可証だけじゃなく、労許は簡単には手に入らず、それより言葉ができない大きな壁があって、やっと少しづつできるようになっても自分がやってきた仕事ではない仕事しかない。
そんなジレンマに苦しみながらの何十年でした。
梨の木さんのように、苦しんで前に進む努力をすれば、少しはまともになったんじゃないかと今更ながら思いますが、自分に甘い性格ゆえ、ついおざなりになって月日だけが経ってしまいました。
梨の木さん、頑張ってくださいね。
一応チーフ職としてブランドを任されて仕事をしてきたのに、この国に来たら、な~ンにもなくなってしまった、空っぽの価値のない私っていう感じがして苦しみました。結婚する事、子供を生む事とは別に、仕事をする事が自分の存在を証明するものだったんです。
さらに滞在許可証だけじゃなく、労許は簡単には手に入らず、それより言葉ができない大きな壁があって、やっと少しづつできるようになっても自分がやってきた仕事ではない仕事しかない。
そんなジレンマに苦しみながらの何十年でした。
梨の木さんのように、苦しんで前に進む努力をすれば、少しはまともになったんじゃないかと今更ながら思いますが、自分に甘い性格ゆえ、ついおざなりになって月日だけが経ってしまいました。
梨の木さん、頑張ってくださいね。
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poirier_AAA at 2012-06-08 18:07
>kanafrさん、
働くことって大事ですよね。社会に関わっているという実感がわくし、何よりも自分の生活を自力で賄っている満足感があります。主婦や子育てを見下すわけではなくて、並行する別物としての働く自分を持つのがやっぱり理想ですね。
といいながらも、実は自由に自分の時間をオーガナイズできる今の立場にも捨て難いものがあるんです。そんなわけで、フランス語をやるという一番安易なところに落ち着いてしまいました。チャンスに巡り会った時にフランス語のせいで〜と後悔しないように、時間のある今のうちに取り組んでみようと思います。
kanaさんみたいにフランスで働けるよう、頑張ります〜。
働くことって大事ですよね。社会に関わっているという実感がわくし、何よりも自分の生活を自力で賄っている満足感があります。主婦や子育てを見下すわけではなくて、並行する別物としての働く自分を持つのがやっぱり理想ですね。
といいながらも、実は自由に自分の時間をオーガナイズできる今の立場にも捨て難いものがあるんです。そんなわけで、フランス語をやるという一番安易なところに落ち着いてしまいました。チャンスに巡り会った時にフランス語のせいで〜と後悔しないように、時間のある今のうちに取り組んでみようと思います。
kanaさんみたいにフランスで働けるよう、頑張ります〜。