2011年 10月 15日
「The Artist」 |
このポスターからして雰囲気があるので、ワクワクしながら観に行ってきました。
観た感想を言うなら一言、良かった、です。
時代劇まで3Dで作られるこの時代に、なぜか白黒。そのうえ一部を除いて無声です。話のジャンルで言えば、コメディ、メロドラマ、でしょうか。とりたてて目新しいことはないのです。そこにあるのは人生の甘さやほろ苦さ。でも現代風の赤裸々な描写でなく、あの無声映画時代独特の優雅さの中で語られるので、話が終わった後の後味がとても良かったです。
時代は1927年。映画と言えば無声しかない時代です。ジョージ・バレンタインはそんな無声映画の大スターでした。あるとき、劇場から出たところで報道陣に囲まれたジョージの前に、落とし物を拾おうとした拍子に見物人の列から押し出されてしまった若い女性が立ち尽くします。彼女の名前はペピー・ミラー。偶然のなりゆきで大スターと一緒に写真に納まってしまった普通の娘が、それをキッカケに役者の世界に入ろうとします。最初は端役の1人でしかなかった娘ですが、2年もするときちんとした役も貰えるようになって、ジョージとの距離は少しずつ縮まって行きます。
そんな時でした。映画に新しい時代がやってきました。有声映画です。あくまでも無声映画にこだわろうとするジョージはたちまち仕事を失います。一方、ペピーは新しい映画を代表する大女優となります。2人の立場は完全に入れ替わります。
生業が時代に遅れてしまった者の悲哀は、去年の夏に観た「L'Illusionniste」を想わせます。誰が悪いわけでもない、ただ時代が彼を必要としなくなったのです。彼の誇りも日々の糧を得るためにできることも、すべてその前時代に属している。切ないです。
全編ほとんど無声と書きましたが、一部分だけ音が入るところがあります。中程と最後。最後の音の理由を話してしまったら観る楽しみがなくなってしまうので書きません。中程に入る音は、これは上手い使い方だなぁと思いました。
興行会社の社長から有声映画の試作を見せられたジョージ。これからの映画はこうだよ!と沸き立つ社長を、彼は笑い飛ばして相手にしません「こんなの、お話しにならないよ」。しかし、その後でひとり楽屋に戻ってコップの水を飲んだ時、突然はっと気がつくのです。コップを机に置いたら音がするじゃないか!目の前に置いてある化粧道具などだって、触れば音がする。あぁそうだ、世界は音が溢れている。でも、自分は音のない世界にいる!この場面で音を使うのです。すごく上手いですよね。
役者たちがこの20世紀初頭の雰囲気にぴったり合っていて、良かったと思います。特に主演のジャン・デュジャルダン。今年のカンヌで男優賞を取ったと聞いたときはすごく意外に思ったんですが、この作品を観て納得しました。これまでは完全な三枚目俳優だと思っていましたけれど、今後良い作品に恵まれれば、彼は違う魅力をどんどん花開かせて行くかもしれません。
あ、忘れてはいけないことが。このジョージの飼っている犬が名演なのです。名脇役ぶりが認められて、パルム・ドールならぬパルム・ドッグ賞を取ったそうです。
この作品、人気が出そうな気がします。日本にも入るかもしれませんね。
The Artist
監督:Michel Hazanavicius(2011)
観た感想を言うなら一言、良かった、です。
時代劇まで3Dで作られるこの時代に、なぜか白黒。そのうえ一部を除いて無声です。話のジャンルで言えば、コメディ、メロドラマ、でしょうか。とりたてて目新しいことはないのです。そこにあるのは人生の甘さやほろ苦さ。でも現代風の赤裸々な描写でなく、あの無声映画時代独特の優雅さの中で語られるので、話が終わった後の後味がとても良かったです。
時代は1927年。映画と言えば無声しかない時代です。ジョージ・バレンタインはそんな無声映画の大スターでした。あるとき、劇場から出たところで報道陣に囲まれたジョージの前に、落とし物を拾おうとした拍子に見物人の列から押し出されてしまった若い女性が立ち尽くします。彼女の名前はペピー・ミラー。偶然のなりゆきで大スターと一緒に写真に納まってしまった普通の娘が、それをキッカケに役者の世界に入ろうとします。最初は端役の1人でしかなかった娘ですが、2年もするときちんとした役も貰えるようになって、ジョージとの距離は少しずつ縮まって行きます。
そんな時でした。映画に新しい時代がやってきました。有声映画です。あくまでも無声映画にこだわろうとするジョージはたちまち仕事を失います。一方、ペピーは新しい映画を代表する大女優となります。2人の立場は完全に入れ替わります。
生業が時代に遅れてしまった者の悲哀は、去年の夏に観た「L'Illusionniste」を想わせます。誰が悪いわけでもない、ただ時代が彼を必要としなくなったのです。彼の誇りも日々の糧を得るためにできることも、すべてその前時代に属している。切ないです。
全編ほとんど無声と書きましたが、一部分だけ音が入るところがあります。中程と最後。最後の音の理由を話してしまったら観る楽しみがなくなってしまうので書きません。中程に入る音は、これは上手い使い方だなぁと思いました。
興行会社の社長から有声映画の試作を見せられたジョージ。これからの映画はこうだよ!と沸き立つ社長を、彼は笑い飛ばして相手にしません「こんなの、お話しにならないよ」。しかし、その後でひとり楽屋に戻ってコップの水を飲んだ時、突然はっと気がつくのです。コップを机に置いたら音がするじゃないか!目の前に置いてある化粧道具などだって、触れば音がする。あぁそうだ、世界は音が溢れている。でも、自分は音のない世界にいる!この場面で音を使うのです。すごく上手いですよね。
役者たちがこの20世紀初頭の雰囲気にぴったり合っていて、良かったと思います。特に主演のジャン・デュジャルダン。今年のカンヌで男優賞を取ったと聞いたときはすごく意外に思ったんですが、この作品を観て納得しました。これまでは完全な三枚目俳優だと思っていましたけれど、今後良い作品に恵まれれば、彼は違う魅力をどんどん花開かせて行くかもしれません。
あ、忘れてはいけないことが。このジョージの飼っている犬が名演なのです。名脇役ぶりが認められて、パルム・ドールならぬパルム・ドッグ賞を取ったそうです。
この作品、人気が出そうな気がします。日本にも入るかもしれませんね。
The Artist
監督:Michel Hazanavicius(2011)
by poirier_AAA
| 2011-10-15 19:46
| 観る・鑑賞する
|
Comments(2)
Commented
by
coco
at 2011-10-26 03:13
x
実は私もすごくこれ観たいんですよ~。
南に居るときにずっと義母に誘われてたのに断ってたのは
なんとなく旅行中に観るのもね・・って思ってたんだけれど
予告編観てたら観たくなってきちゃったー!!!!
南に居るときにずっと義母に誘われてたのに断ってたのは
なんとなく旅行中に観るのもね・・って思ってたんだけれど
予告編観てたら観たくなってきちゃったー!!!!
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Commented
by
poirier_AAA at 2011-10-26 16:48
>cocoさん、
観て下さいよ〜。これならきっと楽しめますから。それに、日本には何時来るかわかりませんよ〜。
わたしは旅行中に映画観るのって好きなんです。あの旅行の時にこんな映画を観たなぁと、いつまでも記憶に残るんですよ。
観て下さいよ〜。これならきっと楽しめますから。それに、日本には何時来るかわかりませんよ〜。
わたしは旅行中に映画観るのって好きなんです。あの旅行の時にこんな映画を観たなぁと、いつまでも記憶に残るんですよ。