2011年 10月 06日
祖父の時代 |
幼い頃は三世代が同居する家だった。
田舎だったからなのか、そういう時代だったからなのかはわからないのだけれど、何事においても序列がとても大事にされた。親戚の間でも本家と分家、縁の近い遠いが厳しく決まっている。町会のような地域の集まりでも、役職や年齢、居住年数などによって随分扱いが違ったような印象がある。
それは家の中でも同じこと。家族の中にも序列があって、食卓の席順とかお風呂にはいる順番でもそれは明らかだし、食事やお茶を出す時にももっとも良い部分を家長に出すというようなことが、日常生活の中でごく普通に行われていた。だからといって家長が威張り散らしていたというわけでもなく、ただ女たちがそうやって男を立てるのが普通だったのだ。
わたしが小さい頃は、家長は祖父だった。
夕方仕事から帰ってくるとどっかりと居間の一番良い席に陣取って、居間の守り神のように落ち着くのが祖父の毎日だった。居間に置いてある一家に一台しかないテレビのチャンネル権も、そんなわけで祖父が持っていた。
わたしの子ども時代は、祖父と一緒に見たテレビ番組の記憶で満ちている。
相撲中継は欠かさず見た。北の湖が強い時代だった。
「野生の王国」という動物を追ったドキュメンタリーもよく見ていた。
そして、何より楽しみにしていたのが時代劇。水戸黄門、大岡越前、江戸を斬る、大江戸捜査網、家族揃って見た時代劇番組の数は数知れない。
昨日は、長らく忘れていたそんなことをどっと思い出した。
竹脇無我さんを送る会が開かれたというニュースを読んだから。亡くなられたのは8月のことだったそうだ。
竹脇無我と言えば、わが家族にとっては小石川療養所の医者、榊原伊織。加藤剛とともに時代劇「大岡越前」の看板役だ。あの頃のわたしは膝小僧を擦りむいて遊び回っているような小娘だったけれど、そんな年端の行かぬ子どもの心にも、格好のいい男たちだなぁという気持ちはあった。顔も良かったけれど、2人の声やしゃべり方が好きだった。
「大岡越前」は、今思い返すと良い役者さんがたくさん出ていたなぁと思う。
加藤剛、竹脇無我はいうに及ばず、片岡千恵蔵(越前の父親役)に加藤治子(越前の母親役)、大坂志郎(村上源次郎)、山口崇(将軍吉宗)、松山英太郎(猿の三次←ましらのさんじ、と読みます)、宇津宮雅代(越前の妻、雪絵)。本当に味のある役者ばかりだった。片岡千恵蔵、好きだったなぁ。そして宇都宮雅代が酒井和歌子に変わった時、家の居間では大ブーイングが巻き起こったこともよく覚えている。
そんな、我が家族(特に祖父)が愛した番組の役者たちも、次々と世を去っている。そして昨日は竹脇無我の訃報。あの独特の甘くて落ち着いた声は今でもしっかりと耳の奥に染み付いているけれど、もう姿を見ることがないのかと思うととても寂しい。
少しずつ祖父の時代が遠のいていく。そんな気がして、無性に寂しい。
田舎だったからなのか、そういう時代だったからなのかはわからないのだけれど、何事においても序列がとても大事にされた。親戚の間でも本家と分家、縁の近い遠いが厳しく決まっている。町会のような地域の集まりでも、役職や年齢、居住年数などによって随分扱いが違ったような印象がある。
それは家の中でも同じこと。家族の中にも序列があって、食卓の席順とかお風呂にはいる順番でもそれは明らかだし、食事やお茶を出す時にももっとも良い部分を家長に出すというようなことが、日常生活の中でごく普通に行われていた。だからといって家長が威張り散らしていたというわけでもなく、ただ女たちがそうやって男を立てるのが普通だったのだ。
わたしが小さい頃は、家長は祖父だった。
夕方仕事から帰ってくるとどっかりと居間の一番良い席に陣取って、居間の守り神のように落ち着くのが祖父の毎日だった。居間に置いてある一家に一台しかないテレビのチャンネル権も、そんなわけで祖父が持っていた。
わたしの子ども時代は、祖父と一緒に見たテレビ番組の記憶で満ちている。
相撲中継は欠かさず見た。北の湖が強い時代だった。
「野生の王国」という動物を追ったドキュメンタリーもよく見ていた。
そして、何より楽しみにしていたのが時代劇。水戸黄門、大岡越前、江戸を斬る、大江戸捜査網、家族揃って見た時代劇番組の数は数知れない。
昨日は、長らく忘れていたそんなことをどっと思い出した。
竹脇無我さんを送る会が開かれたというニュースを読んだから。亡くなられたのは8月のことだったそうだ。
竹脇無我と言えば、わが家族にとっては小石川療養所の医者、榊原伊織。加藤剛とともに時代劇「大岡越前」の看板役だ。あの頃のわたしは膝小僧を擦りむいて遊び回っているような小娘だったけれど、そんな年端の行かぬ子どもの心にも、格好のいい男たちだなぁという気持ちはあった。顔も良かったけれど、2人の声やしゃべり方が好きだった。
「大岡越前」は、今思い返すと良い役者さんがたくさん出ていたなぁと思う。
加藤剛、竹脇無我はいうに及ばず、片岡千恵蔵(越前の父親役)に加藤治子(越前の母親役)、大坂志郎(村上源次郎)、山口崇(将軍吉宗)、松山英太郎(猿の三次←ましらのさんじ、と読みます)、宇津宮雅代(越前の妻、雪絵)。本当に味のある役者ばかりだった。片岡千恵蔵、好きだったなぁ。そして宇都宮雅代が酒井和歌子に変わった時、家の居間では大ブーイングが巻き起こったこともよく覚えている。
そんな、我が家族(特に祖父)が愛した番組の役者たちも、次々と世を去っている。そして昨日は竹脇無我の訃報。あの独特の甘くて落ち着いた声は今でもしっかりと耳の奥に染み付いているけれど、もう姿を見ることがないのかと思うととても寂しい。
少しずつ祖父の時代が遠のいていく。そんな気がして、無性に寂しい。
by poirier_AAA
| 2011-10-06 16:52
| 思い出す
|
Comments(7)
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at 2011-10-06 20:52
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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saheizi-inokori at 2011-10-06 22:35
何年か前、近所の寿司屋で竹脇無我の別れた奥さんに遭遇しました。
私の着ていたピンクのテイーシャツを褒めてくれました。
それだけのことですが^^。
私の着ていたピンクのテイーシャツを褒めてくれました。
それだけのことですが^^。
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poirier_AAA at 2011-10-07 01:51
>saheiziさん、こんにちは。
東京生活は結構長かったのに、そういえば芸能人や芸能人関係者と接触したことは一度もありませんでした。
唯一自慢(?)できるのは、麻布十番のスターバックスで、カルロス・ゴーンがわたしと夫の後ろに並んだことくらいです。プライベートだからと思って話しかけませんでしたけど。
東京生活は結構長かったのに、そういえば芸能人や芸能人関係者と接触したことは一度もありませんでした。
唯一自慢(?)できるのは、麻布十番のスターバックスで、カルロス・ゴーンがわたしと夫の後ろに並んだことくらいです。プライベートだからと思って話しかけませんでしたけど。
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mtonosama at 2011-10-07 09:48
なるほど、梨の木さんが時代劇をお好きという背景には
そういうことがあったのですね。
片岡知恵蔵がお気に入りとは、渋いですね。
あのしゃべり方、アップになった顔が、いま、浮かんでいます(笑)
私はテレビの時代劇ではなく、東映のチャンバラ映画をよく見せられました。
映画館もデパートも徒歩5分圏内にあるという超便利な場所に住んでいたので。
そういうことがあったのですね。
片岡知恵蔵がお気に入りとは、渋いですね。
あのしゃべり方、アップになった顔が、いま、浮かんでいます(笑)
私はテレビの時代劇ではなく、東映のチャンバラ映画をよく見せられました。
映画館もデパートも徒歩5分圏内にあるという超便利な場所に住んでいたので。
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poirier_AAA at 2011-10-07 15:49
>mtonosamaさん、こんにちは。
そうなんです。時代劇好きは子ども時代からの反復擦り込みのおかげですね。門前の小僧習わぬ経を読むじゃありませんけれど、小さいときの環境の影響って恐ろしいほど威力がありますねぇ。
殿の映画好きも、映画館徒歩5分という環境の賜物でしょうか。
あれ?でも殿のお歳と合わないような‥‥。
そうなんです。時代劇好きは子ども時代からの反復擦り込みのおかげですね。門前の小僧習わぬ経を読むじゃありませんけれど、小さいときの環境の影響って恐ろしいほど威力がありますねぇ。
殿の映画好きも、映画館徒歩5分という環境の賜物でしょうか。
あれ?でも殿のお歳と合わないような‥‥。
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saheizi-inokori at 2011-10-07 22:30
私は目ざといのかミーハーなのか結構いろんな人を見つけるのが早かった(過去形)。
後ろと言えば大丸の食品売り場のレジで山瀬まみが後ろに並びました。私は彼女が好きなので嬉しかったです^^。
後ろと言えば大丸の食品売り場のレジで山瀬まみが後ろに並びました。私は彼女が好きなので嬉しかったです^^。
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poirier_AAA at 2011-10-08 02:02
>saheiziさん、
わたしもミーハーなんですけど、日頃のおこないで差が出るんでしょうか。
パリに住んでいても、未だにそういう「!」に出会えていません。あ、パリの場合は下ばかり気にして歩いているからかもしれませんね。子連れだと3人分の足下を気にしなきゃならないので、本当に目がいくつあっても足りないんですよ〜。
わたしもミーハーなんですけど、日頃のおこないで差が出るんでしょうか。
パリに住んでいても、未だにそういう「!」に出会えていません。あ、パリの場合は下ばかり気にして歩いているからかもしれませんね。子連れだと3人分の足下を気にしなきゃならないので、本当に目がいくつあっても足りないんですよ〜。