2011年 09月 05日
天上の技術 |
「梟通信〜ホンの戯言」の佐平次さんが、興味深い文章を紹介しておられました。佐平次さんの記事リンクだけですと、かえって孫引きになってしまい面倒になるので、ここではダイレクトにその文章が読めるようにしておきます。
藤岡 惇(立命館大学経済学部教授)
福島で進行中の核の大惨事をどう見るか
――「双頭の天龍」を地球生命圏に降下させた危険を見据えよう
かなり長い文章ですが、文末の補説まで含めて、一度目を通しておく価値があると思いました。
大丈夫か大丈夫でないのか、本当のところはどうなのか、日本発のニュースを読んでいると細かい事がたくさんでてくるので、どうしても本質的な部分が見え難くなっているように感じられるのです。そういう枝葉の部分を刈り取って、もう一度少し離れたところからこの事故をきちんと眺めるためにも、この文章は役にたつのではないかと思います。
読んでいてハッとした部分がありました。藤岡教授が文中で引用した高木仁三郎さんの言葉です。念のため、その部分をここにも貼っておきます。高木さんがチェルノブイリ事故直後に書かれた言葉だそうです。
「核技術というのは、いわば天上の技術を地上において手にしたに等しい。・・・核反応という、天体においてのみ存在し、地上の自然の中には実質上存在しなかった自然現象を、地上で利用することの意味は・・・深刻である。あらゆる生命にとって、放射線は、それにたいしてまったく防御の備えのない脅威であり、放射線は地上の生命の営みの原理を撹乱する異物である。私たちの地上の世界は、生物界も含めて基本的に化学物質によって構成され・・・この循環は、基本的に化学物質の結合と分解といった化学過程の範囲で成り立っている。・・・核文明は、そのように破滅の一瞬を、いつも時限爆弾のように、その胎内に宿しながら、存在している。この危機は・・・これまでのものとまったく異質のものではないだろうか。そして今、その時限装置がカチカチと時を刻む音が、いよいよ大きく、私たちの耳に入ってこないだろうか」
(高木仁三郎『チェルノブイリ原発事故 新装版』1986年、七つ森書館)
そう、地球上に生命が誕生したのは、オゾン層が出来て、大気が出来て、宇宙からの放射線をある程度遮れるようになったからです。理屈としてはわかっていたはずなのに、こういうことにはまったく考えが及びませんでした。核って、要するに天体の営みなのです。天体の自然現象を、たまたま地球という一部分に発生したに過ぎない人類が、日々の生活を便利にするためという単純な理由で操ろうとするなんて、なんとういう大それた発想でしょう。畏れを知らないとはこのことです。
噂に聞くだけでまだ著作を読んだことのない高木仁三郎さんですが、彼の科学者としての在り方、科学と哲学を感じる視点に興味を覚えました。機会があれば、是非著作を読んでみたいものです。
藤岡 惇(立命館大学経済学部教授)
福島で進行中の核の大惨事をどう見るか
――「双頭の天龍」を地球生命圏に降下させた危険を見据えよう
かなり長い文章ですが、文末の補説まで含めて、一度目を通しておく価値があると思いました。
大丈夫か大丈夫でないのか、本当のところはどうなのか、日本発のニュースを読んでいると細かい事がたくさんでてくるので、どうしても本質的な部分が見え難くなっているように感じられるのです。そういう枝葉の部分を刈り取って、もう一度少し離れたところからこの事故をきちんと眺めるためにも、この文章は役にたつのではないかと思います。
読んでいてハッとした部分がありました。藤岡教授が文中で引用した高木仁三郎さんの言葉です。念のため、その部分をここにも貼っておきます。高木さんがチェルノブイリ事故直後に書かれた言葉だそうです。
「核技術というのは、いわば天上の技術を地上において手にしたに等しい。・・・核反応という、天体においてのみ存在し、地上の自然の中には実質上存在しなかった自然現象を、地上で利用することの意味は・・・深刻である。あらゆる生命にとって、放射線は、それにたいしてまったく防御の備えのない脅威であり、放射線は地上の生命の営みの原理を撹乱する異物である。私たちの地上の世界は、生物界も含めて基本的に化学物質によって構成され・・・この循環は、基本的に化学物質の結合と分解といった化学過程の範囲で成り立っている。・・・核文明は、そのように破滅の一瞬を、いつも時限爆弾のように、その胎内に宿しながら、存在している。この危機は・・・これまでのものとまったく異質のものではないだろうか。そして今、その時限装置がカチカチと時を刻む音が、いよいよ大きく、私たちの耳に入ってこないだろうか」
(高木仁三郎『チェルノブイリ原発事故 新装版』1986年、七つ森書館)
そう、地球上に生命が誕生したのは、オゾン層が出来て、大気が出来て、宇宙からの放射線をある程度遮れるようになったからです。理屈としてはわかっていたはずなのに、こういうことにはまったく考えが及びませんでした。核って、要するに天体の営みなのです。天体の自然現象を、たまたま地球という一部分に発生したに過ぎない人類が、日々の生活を便利にするためという単純な理由で操ろうとするなんて、なんとういう大それた発想でしょう。畏れを知らないとはこのことです。
噂に聞くだけでまだ著作を読んだことのない高木仁三郎さんですが、彼の科学者としての在り方、科学と哲学を感じる視点に興味を覚えました。機会があれば、是非著作を読んでみたいものです。
by poirier_AAA
| 2011-09-05 06:59
| 世情を考える
|
Comments(4)
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mtonosama at 2011-09-05 09:35
高木仁三郎さんの先見性には驚いています。
でも、彼にとどまらず、原子力発電の危険性に言及している人は
大勢いたのに、なぜ皆それに対して耳をふさいできたのか?
胸が痛くなるような無力感を覚えます。
でも、彼にとどまらず、原子力発電の危険性に言及している人は
大勢いたのに、なぜ皆それに対して耳をふさいできたのか?
胸が痛くなるような無力感を覚えます。
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saheizi-inokori at 2011-09-05 09:39
ご紹介ありがとう。
高木仁三郎は是非お読みになることを薦めます。
ずいぶん前に「今までの考え方を変えなければいけない」みたいなことをここにコメントしたような気がします。
高木さんの本を読むとますますそう思います。
そして高木から宮沢賢治を“紹介”されて今度は宮沢を読もうかと思っています。
高木仁三郎は是非お読みになることを薦めます。
ずいぶん前に「今までの考え方を変えなければいけない」みたいなことをここにコメントしたような気がします。
高木さんの本を読むとますますそう思います。
そして高木から宮沢賢治を“紹介”されて今度は宮沢を読もうかと思っています。
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poirier_AAA at 2011-09-05 18:02
>mtonosamaさん、こんにちは。
本当にそうですね。これだけ真摯な人の言葉を、どうして自分は聞こうとしなかったのか、どうして気がつかなかったのかと思います。せめて、ようやく聞こえるようになった今からは、忘れたり逃げたりすることなく向き合いたいものです。それもすごく難しいことですけれど。
本当にそうですね。これだけ真摯な人の言葉を、どうして自分は聞こうとしなかったのか、どうして気がつかなかったのかと思います。せめて、ようやく聞こえるようになった今からは、忘れたり逃げたりすることなく向き合いたいものです。それもすごく難しいことですけれど。
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poirier_AAA at 2011-09-05 18:07
>saheiziさん、こんにちは。
はい、是非読んでみようと思います。
人間って、基本的に耳に痛いこと自分に都合が悪いことに対しては耳を塞ぎたくなるのが本質なんでしょうか。高木さんの書いていらっしゃることも、実はわたしたち、うっすらと判ってはいたような気がしませんか?高木さん、生前どれだけもどかしい思いをされたことだろうかと思います。申し訳ない思いです。
はい、是非読んでみようと思います。
人間って、基本的に耳に痛いこと自分に都合が悪いことに対しては耳を塞ぎたくなるのが本質なんでしょうか。高木さんの書いていらっしゃることも、実はわたしたち、うっすらと判ってはいたような気がしませんか?高木さん、生前どれだけもどかしい思いをされたことだろうかと思います。申し訳ない思いです。