2010年 11月 02日
フランス語は甘くなぞない |
フランス語というと、日本では
甘くってほわ〜んとしていて素敵♡
鼻母音が柔らかいのよね。
すごく耳に心地良く響くから、愛を囁くのにぴったり。
などと言う人が非常に多く、わたしは自分が考えているフランス語のイメージとの違いに愕然とすることが多いのであります。最近日本のCMで津軽弁がフランス語みたいに聞こえると評判になっているものがあるとのニュースを読み、またしてもビックリ仰天してしまいました。フランス語ってやさしく聞こえますか?わたしには非情なまでに非常に厳しく聞こえるんですよ。
きちんと発音しないとわかってもらえない
きちんと発音しようとすると口許と頬の筋肉が吊りそうになる
ピロートークには絶対に日本語のもごもごした話し方の方が似合う
なんと申しましょうか、踊りといえば長閑な盆踊りしか知らなかった人が、いきなりマイケル・ジャクソンの真似をしようとするような、日本語とフランス語の発音にはそのくらいの運動量の差があると思うのです。テレビのニュースを見てみて下さい。フランス人のキャスターの口許って、もの凄い勢いで横に開いたりとんがったりしていますから。対して日本語の場合は、頬の筋肉が動くほど口を動かしている人ってほとんど存在しないと思うのです。(舞台の役者の台詞に違和感を覚えるのは、彼らが口をきちんと動かしてしゃべっているからだと思います)
最近は子どもたちもフランス語を解するようになってきたので、夫の家庭内フランス語講座にもだんだん熱が入ってきました。で、これまで注意されなかったわたしの発音にまで細かいチェックが入るようになりました。
例えばこれです。
une (ユヌ)
不定冠詞「un」の女性形で、バゲット1本、インゲンをひとつかみというように、お店の人を相手にしょっちゅう使っているのです。これが、わたしの発音は日本語のユになっていると言われました。フランス語の発音記号[y]で表される音は、[i]を発音しながら唇だけ[u]の形(つまり口笛を吹く時の形)にしなければならないのです。気をつけているつもりなんだけれど、気を抜くと口が慣れているユの音を出しちゃうのです。
それからもうひとつ。
deux (ドゥ)
アン・ドゥ・トロワのドゥ、要するに数字の2の発音です。子どもと一緒に数を数えていたら、夫にすかさず注意されました。今「deux(2)」じゃなくて「doux(やわらかい)」って言わなかった?
カタカナで書くとどちらもドゥなんですけれどね、やわらかいのドゥは日本人に一般的なドゥ(つまり英語の「do」の発音)で、数字の2のドゥは、発音記号で言えばお団子1個の串刺しのような記号[ø]で表される音なのです。辞書の説明によると、狭いオ[o]の口の形で狭いエ[e]を言おうとする時に出る、アとウの中間のような音、なんだそうです。指摘されるまで全然意識していませんでした。ありゃ〜、これは相当人を混乱させていたってことだなぁ。
もちろんわたしが下手なせいもあるのですが、それでもフランス語の発音は結構厳しいと思うのです。日本人にはわかりにくい曖昧な母音もあって、でもそれを使い分けないことには正しい言葉が通じない。甘い愛の言葉を考えるより先に、正しい言葉に聞こえるように発音練習を繰り返さないとなりません。
フランス語が甘く聞こえる?優雅に聞こえる?そうなのかもしれません。
しかし、現実は厳しい。
シンクロの選手が、水の上でにこやかに笑いながらも水面下でせっせと足を動かしてバランスを保っているように、
うっとりする音を奏でるハープ奏者が、実は足下で数本のペダルを人知れず激しく踏み替えているように、
優雅さの陰には苛酷な運動が続けられているのであります。
フランス語の美しさ、わたしはその硬質さだと思います。
発音も文法も、とても明確。‘なんとなく’を許さない堅さです。
そこには「優しい、甘い」などという形容詞の入る余地はない。
きわめつけのクールビューティと見えるのです。
甘くってほわ〜んとしていて素敵♡
鼻母音が柔らかいのよね。
すごく耳に心地良く響くから、愛を囁くのにぴったり。
などと言う人が非常に多く、わたしは自分が考えているフランス語のイメージとの違いに愕然とすることが多いのであります。最近日本のCMで津軽弁がフランス語みたいに聞こえると評判になっているものがあるとのニュースを読み、またしてもビックリ仰天してしまいました。フランス語ってやさしく聞こえますか?わたしには非情なまでに非常に厳しく聞こえるんですよ。
きちんと発音しないとわかってもらえない
きちんと発音しようとすると口許と頬の筋肉が吊りそうになる
ピロートークには絶対に日本語のもごもごした話し方の方が似合う
なんと申しましょうか、踊りといえば長閑な盆踊りしか知らなかった人が、いきなりマイケル・ジャクソンの真似をしようとするような、日本語とフランス語の発音にはそのくらいの運動量の差があると思うのです。テレビのニュースを見てみて下さい。フランス人のキャスターの口許って、もの凄い勢いで横に開いたりとんがったりしていますから。対して日本語の場合は、頬の筋肉が動くほど口を動かしている人ってほとんど存在しないと思うのです。(舞台の役者の台詞に違和感を覚えるのは、彼らが口をきちんと動かしてしゃべっているからだと思います)
最近は子どもたちもフランス語を解するようになってきたので、夫の家庭内フランス語講座にもだんだん熱が入ってきました。で、これまで注意されなかったわたしの発音にまで細かいチェックが入るようになりました。
例えばこれです。
une (ユヌ)
不定冠詞「un」の女性形で、バゲット1本、インゲンをひとつかみというように、お店の人を相手にしょっちゅう使っているのです。これが、わたしの発音は日本語のユになっていると言われました。フランス語の発音記号[y]で表される音は、[i]を発音しながら唇だけ[u]の形(つまり口笛を吹く時の形)にしなければならないのです。気をつけているつもりなんだけれど、気を抜くと口が慣れているユの音を出しちゃうのです。
それからもうひとつ。
deux (ドゥ)
アン・ドゥ・トロワのドゥ、要するに数字の2の発音です。子どもと一緒に数を数えていたら、夫にすかさず注意されました。今「deux(2)」じゃなくて「doux(やわらかい)」って言わなかった?
カタカナで書くとどちらもドゥなんですけれどね、やわらかいのドゥは日本人に一般的なドゥ(つまり英語の「do」の発音)で、数字の2のドゥは、発音記号で言えばお団子1個の串刺しのような記号[ø]で表される音なのです。辞書の説明によると、狭いオ[o]の口の形で狭いエ[e]を言おうとする時に出る、アとウの中間のような音、なんだそうです。指摘されるまで全然意識していませんでした。ありゃ〜、これは相当人を混乱させていたってことだなぁ。
もちろんわたしが下手なせいもあるのですが、それでもフランス語の発音は結構厳しいと思うのです。日本人にはわかりにくい曖昧な母音もあって、でもそれを使い分けないことには正しい言葉が通じない。甘い愛の言葉を考えるより先に、正しい言葉に聞こえるように発音練習を繰り返さないとなりません。
フランス語が甘く聞こえる?優雅に聞こえる?そうなのかもしれません。
しかし、現実は厳しい。
シンクロの選手が、水の上でにこやかに笑いながらも水面下でせっせと足を動かしてバランスを保っているように、
うっとりする音を奏でるハープ奏者が、実は足下で数本のペダルを人知れず激しく踏み替えているように、
優雅さの陰には苛酷な運動が続けられているのであります。
フランス語の美しさ、わたしはその硬質さだと思います。
発音も文法も、とても明確。‘なんとなく’を許さない堅さです。
そこには「優しい、甘い」などという形容詞の入る余地はない。
きわめつけのクールビューティと見えるのです。
by poirier_AAA
| 2010-11-02 20:50
| 言葉を学ぶ
|
Comments(2)
Commented
by
bluerose
at 2010-11-03 15:38
x
はじめまして。blueroseと申します。
少し前にこちらのブログを知りました。いつも更新を楽しみにしております。
>フランス語の美しさ、わたしはその硬質さだと思います
わたしがフランス語に興味を持ったのは、ドパルデューとマルコヴィッチが共演した「レ・ミゼラブル」を見てからです。偶然、インターナショナルバージョン(英語)とオリジナル(仏語)の両方を観る機会があったのですが、英語版で見た個所を仏語版で見ると、その雰囲気や受ける印象があまりに違うのでびっくりしました。それ以来少しずつ勉強しています。私の周囲でも「仏語は優雅」と言う人が多いですが、このドラマを観ていると「硬さ」という言葉がしっくりきます(内容も関係しますが^^;)。
少し前にこちらのブログを知りました。いつも更新を楽しみにしております。
>フランス語の美しさ、わたしはその硬質さだと思います
わたしがフランス語に興味を持ったのは、ドパルデューとマルコヴィッチが共演した「レ・ミゼラブル」を見てからです。偶然、インターナショナルバージョン(英語)とオリジナル(仏語)の両方を観る機会があったのですが、英語版で見た個所を仏語版で見ると、その雰囲気や受ける印象があまりに違うのでびっくりしました。それ以来少しずつ勉強しています。私の周囲でも「仏語は優雅」と言う人が多いですが、このドラマを観ていると「硬さ」という言葉がしっくりきます(内容も関係しますが^^;)。
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by
poirier_AAA at 2010-11-03 22:08
blueroseさん、はじめまして。
「レ・ミゼラブル」ご覧になったのですね。わたしも少し前にTVで見ました。マルコビッチのジャベール警部は好演だったと思うのですが、イヤになるくらい執拗でしたよね。途中で何回も裏番組に逃げたくなりました(笑)
日本人が抱くフランスやフランス語に対するイメージって、現実と随分かけ離れている気がするんです。勝手に理想像を作り上げないで、目の前のわたしを見てちょうだい!というような老婆心から書きました。
>いつも更新を楽しみにしております。
相変わらずの細々ブログですが、こう言っていただけるととても励みになります。コメント、どうもありがとうございました。
「レ・ミゼラブル」ご覧になったのですね。わたしも少し前にTVで見ました。マルコビッチのジャベール警部は好演だったと思うのですが、イヤになるくらい執拗でしたよね。途中で何回も裏番組に逃げたくなりました(笑)
日本人が抱くフランスやフランス語に対するイメージって、現実と随分かけ離れている気がするんです。勝手に理想像を作り上げないで、目の前のわたしを見てちょうだい!というような老婆心から書きました。
>いつも更新を楽しみにしております。
相変わらずの細々ブログですが、こう言っていただけるととても励みになります。コメント、どうもありがとうございました。