2010年 08月 04日
人との距離 |
フランス語では「あなた」を意味する言葉は2つあります。
Tu (テュ)と Vous(ヴ)です。
簡単に言うと、tu を使うのは近しい相手(家族、友人)で、vous は距離のある相手(店員と客、上司と部下、ご近所付き合いなど)に使います。日本語では「あんた」と「あなた」のように訳されていることもあります。
tu を使って話すことを tutoyer(テュトワイエ)、 vous で話すことを vouvoyer(ヴヴォワイエ)といいます。
星の王子様が登場する場面の、dessine-moi un mouton?(羊の絵を描いてよ)は
tutoyerですし、フランス語の「お元気ですか」に相当する Comment allez-vous?(コモンタレヴ)は vouvoyerです。
先ほど家族間では「tu」を使うと書きましたが、それなりの家柄の家族では夫婦間、親子間でも「vous」を使って話したりするそうですし、逆に、道でいきなり見ず知らずの人に「tu」と話しかけられてぎょっとすることもあります。
ときどき、この2つの間に挟まれて困ってしまいます。
もっとも苦手なのは、見ず知らずの人から「tu」と話しかけられることです。相手には悪気はなくて、単に親近感の表現のつもりなんだと思いますが(そういう人も結構いるのです)、いつも「あなたにお前呼ばわりされる理由はないぞ。失礼な!」と内心ムッとしてしまうのです。
また、よく顔をあわせる近所のシッターさんが「tu」と呼んでくれるのですけれど、わたしの中では、まだ彼女を「tu」と呼ぶことが出来ません。「tu」と呼ばれても
「vous」で返事をしてしまいます。
うちのお向かいの男性が、夫に「tu」を使い始めましたが、夫はそんなことはできない〜と言って相変わらず「vous」を使っています。
「tu」の側に入ってしまった人に対しては、ぐっと親近感を感じて、わりあい気楽に話せてしまいますが、「vous」の側の人に対しては、立場上超えられない壁があったり、遠慮して距離を保って付き合おうというような自制心が常に働いているような気がします。問題は境界線付近です。
歩み寄りたいという姿勢を見せてくれた人がいても、自分ではどうしても壁が超えられなかったり、逆に近づきたいと思っているのに、相手の「vous」によって牽制されてしまったり、どちらに落ち着くのか、決着がつくまでは毎回困惑します。歩み寄れないまま、一方は「tu」と呼び、もう一方は「vous」と呼ぶことで定着してしまうこともあります。
境界線に近い相手も含めて、「tu」エリアが広い人と「vous」エリアが広い人と、人には2つのタイプがあるのかもしれません。「tu」という呼称をフレンドリーと感じるか失礼と感じるかの違いです。わたしも夫も、迷ったらとりあえず「vous」を使うタイプです。人に失礼をするよりも慇懃で冷たいと思われる方がマシ、と思うからです。
道を歩いていて「あんたの子ども?双子なの?」と聞かれたことも一度ならずあります。注目されることにも質問されることにもコメントされることにも慣れましたが、唯一慣れないのがこの「あんた」呼ばわりなのでした。
Tu (テュ)と Vous(ヴ)です。
簡単に言うと、tu を使うのは近しい相手(家族、友人)で、vous は距離のある相手(店員と客、上司と部下、ご近所付き合いなど)に使います。日本語では「あんた」と「あなた」のように訳されていることもあります。
tu を使って話すことを tutoyer(テュトワイエ)、 vous で話すことを vouvoyer(ヴヴォワイエ)といいます。
星の王子様が登場する場面の、dessine-moi un mouton?(羊の絵を描いてよ)は
tutoyerですし、フランス語の「お元気ですか」に相当する Comment allez-vous?(コモンタレヴ)は vouvoyerです。
先ほど家族間では「tu」を使うと書きましたが、それなりの家柄の家族では夫婦間、親子間でも「vous」を使って話したりするそうですし、逆に、道でいきなり見ず知らずの人に「tu」と話しかけられてぎょっとすることもあります。
ときどき、この2つの間に挟まれて困ってしまいます。
もっとも苦手なのは、見ず知らずの人から「tu」と話しかけられることです。相手には悪気はなくて、単に親近感の表現のつもりなんだと思いますが(そういう人も結構いるのです)、いつも「あなたにお前呼ばわりされる理由はないぞ。失礼な!」と内心ムッとしてしまうのです。
また、よく顔をあわせる近所のシッターさんが「tu」と呼んでくれるのですけれど、わたしの中では、まだ彼女を「tu」と呼ぶことが出来ません。「tu」と呼ばれても
「vous」で返事をしてしまいます。
うちのお向かいの男性が、夫に「tu」を使い始めましたが、夫はそんなことはできない〜と言って相変わらず「vous」を使っています。
「tu」の側に入ってしまった人に対しては、ぐっと親近感を感じて、わりあい気楽に話せてしまいますが、「vous」の側の人に対しては、立場上超えられない壁があったり、遠慮して距離を保って付き合おうというような自制心が常に働いているような気がします。問題は境界線付近です。
歩み寄りたいという姿勢を見せてくれた人がいても、自分ではどうしても壁が超えられなかったり、逆に近づきたいと思っているのに、相手の「vous」によって牽制されてしまったり、どちらに落ち着くのか、決着がつくまでは毎回困惑します。歩み寄れないまま、一方は「tu」と呼び、もう一方は「vous」と呼ぶことで定着してしまうこともあります。
境界線に近い相手も含めて、「tu」エリアが広い人と「vous」エリアが広い人と、人には2つのタイプがあるのかもしれません。「tu」という呼称をフレンドリーと感じるか失礼と感じるかの違いです。わたしも夫も、迷ったらとりあえず「vous」を使うタイプです。人に失礼をするよりも慇懃で冷たいと思われる方がマシ、と思うからです。
道を歩いていて「あんたの子ども?双子なの?」と聞かれたことも一度ならずあります。注目されることにも質問されることにもコメントされることにも慣れましたが、唯一慣れないのがこの「あんた」呼ばわりなのでした。
by poirier_AAA
| 2010-08-04 20:25
| 日々の断片
|
Comments(1)
Commented
at 2010-08-05 13:09
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。