2024年 03月 18日
笑顔を引き出す |
ちょっと大きな買い物をした。そろそろ買い替えどきかとタイミングをはかっていたものをいよいよ買う気になったのは、とある店が期間限定のプロモーションで1割のキャッシュバックを始めたからだった。この機を逃してなるものかと早速ネット上で購入手続きをとった。が、肝心のキャッシュバックが有効になっていない。これ、絶対に変だよね?
念の為いろいろと証拠のスクリーンショットを撮って準備してから、実店舗に交渉に行った。平日の昼前だったせいか相談窓口はガラガラ、カウンターにはパッと見た感じたいして機嫌が良さそうでもない、ボサボサの髪をした中年女性が座っていた。不安になりながら事情を説明すると、まずはハーっと盛大なため息が返ってきた。なかなか面倒くさいんですよ、、、その手の問題を片付けるのは、と言う。それは予想していたので、どうやったらこの問題が解決できるでしょうかと、あくまでも相談を持ちかける感じで問えば、そうですねぇとしばし考えた後で、ならばこうしましょうと解決方法を提案してくれた。このようにすれば問題なくキャッシュバックはされるはずです、ただ1週間くらいお待ちいただくことになりますが、と言う。キャッシュバックさえされるなら何も文句はないです!と即答すれば、あぁよかったと相手はにっこり笑顔になって、お互い気持ちよく別れた。
数日後無事に商品が届いたので、指示された通りにその受領書を持って再び相談窓口を訪ねた。カウンターにはまた違う中年女性が座っていた。何かご用ですかと声をかけてくれたものの、外国人が面倒臭いことを言い出すのでは?という警戒心もちらほら見える。ともかく一通り事情を説明をし、自分を指定して受領書のコピーだけ託けてくれれば必要な手続きは全部自分がやる、そう言われたことを伝えた。話し始めたときは眉間にシワが寄っていたのが、事情がはっきりするにつれだいぶ顔つきは和らぎ、コピーを受け取って同僚に渡せば良いのだとわかったときには肩の力はすっかり抜けて口角がキュッと上がった。そして、キャッシュバックまでに時間がかかるという話もきちんと聞いて了解しているから心配しないでと伝えた時にはもう満面の笑顔になって、大丈夫、コピーは間違いなく渡しておきますから安心してくださいね!と、大層機嫌よく請け合ってくれた。
人は見た目で判断してはいけない、という。見た目はもちろん大事だけれど、それはすべてじゃない。フランスではよくそういうことがある。このカウンターで最初に受け付けてくれた女性は、ぱっと見はやる気なさそう事務仕事に強くなさそうと見えたのに、話をきいてみればそのお客様相談窓口の責任者で、事務手続きの処理も手馴れていた。2回目に対応してくれた女性も、最初は相当こちらを警戒していた感じだったので心配したけれど、問題の内容はすぐに理解してくれたし、こちらの話もするっと通じて感じが良かった。どちらも最初はまったく笑顔ではなかった。でも話がすすむにつれてニコニコと感じが良くなった。
一般的に言って、フランス人は意味なく笑顔をふりまかない。だからお客様扱いされることに慣れている日本人はふっと心配になってしまうのだけれど、これは別に機嫌が悪いとか、アジア人が嫌いでぶすっとしているというわけじゃない。ただ、笑う理由がないから笑っていないというだけであることがほとんど。慣れてくると、こういう仏頂面の人を笑顔にする楽しさ?みたいなものに目覚める。ニコッと笑って挨拶してみるとか。こちらの人みたいにちょっと気の利いた言葉を発してみるとか。それだけ相手の印象がガラッと変わるからおもしろい。それに、そうして得た人の笑顔ってお互いのパワーになるような気がする。そういうことがあると1日がほんのすこし運のいい方に傾くような。そうして何回かにっこりしあった人とは、お互いの背景はまったく知らずとも、なんとなく気にし合う知人という関係になれる。そんなやんわりした関係もまた意外と心地よいものだと思う。
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by poirier_AAA
| 2024-03-18 21:36
| 日々の断片
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