2017年 10月 07日
日本人 |
カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した。
いい作家だと思っていたので、このニュースは嬉しかった。
日系英国人のカズオ・イシグロは長崎県の出身だそうだ。
日本語のニュースをネットで読んでいると、
現在の国籍はどうあれ日本出身の人が評価されたということで、
ニュースの扱いも人の関心も、
例えば少し前のモディアーノと比べたらはるかに大きいように見える。
ふっと大学時代の同級生のことを思い出した。
日系ブラジル人の彼女は、留学生枠で選考に通って大学にやって来た。
彼女の両親は日本人だけれども、彼女はブラジルで生まれて日本を知らない。
日本かブラジルか、どちらか一方の国籍を選択する前に、
その目で自分のルーツを見ておきたいと思ったそうだ。
遠い国に憧れて、日本語を一所懸命に勉強して日本にやって来た。
大学で、日本人の学生と同じ講義を聞いてテストを受けていたのである。
友達同士で話していても言葉を加減する必要がない。
ごくごく普通の感覚で、わははは〜と笑いながら話せる人だった。
つまり日本語運用能力でいったら、なんの文句もつけようがないレベル。
しかし彼女は、大学4年間を日本で過ごして、
日本国籍を捨てることを決意して日本を去った。
わたしは永久に日本人にはなれない、と思ったそうである。
どんなになりたくても、国籍はとったとしても、
同じ日本人としては見てもらえない、外国人のままだ、と。
わたしは日本人の顔をしている。
けれども、人はわたしの日本語にほんの少しアクセントがあるとわかると、
なんだ、日本人じゃないんだ、と言う。
アジア系の留学生が一緒にいると警察が身分証明書の提示を求めてくる。
アジア人留学生を前にすると、日本の警官は横柄でとても意地が悪い。
わたしが日本国籍を持っていると言っても鼻で笑う。
日本人のくせにそんな日本語しか喋れないなんて変じゃないか。
そういう奴はさっさと国に帰れ、と言う。
日本に憧れて、恋い焦がれて、遠いところからやってきた。
その日本語もペラペラの日系人の彼女に日本は冷たかった。
日本人として扱うことを断固として拒んだ。
イシグロは日本で生まれたが幼い時に英国に移住し、長じて英国籍を選んだ。
本人曰く、日本語は家庭語のレベルでとどまっている、と。
インタビューも聞いたが、メンタリティは完全に英国寄りとみえる。
そのイシグロが、いまや日本が生んだ英雄のように扱われている。
喜ばしいニュースでありながら、
なにかしらすっぱりと割り切れぬ切なさも感じてしまったのだった。
by poirier_AAA
| 2017-10-07 03:15
| 日々の断片
|
Comments(6)
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fusk-en25 at 2017-10-07 09:43
確かに。。割り切れないような。。
私自身も家内に彼と同じ条件のがいますからねえ。
日本語は話すし、読み書きもできるけど。やっぱりどこか違う。残念ながら。。なんですよ。
私自身も家内に彼と同じ条件のがいますからねえ。
日本語は話すし、読み書きもできるけど。やっぱりどこか違う。残念ながら。。なんですよ。
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poirier_AAA at 2017-10-07 18:07
> fusk-en25さん、こんにちは。
そこで育っていないというのは大きいですよね。どうしても考え方や身にまとう雰囲気が違ってしまいます。我が子を見ていても思いますもの。
といって、逆に日本で生まれて日本語で教育を受けて、どこからどうみても日本人風なのに、外見とかルーツのせいで日本人扱いしてもらえない人もいるんですよね。
血筋だけでもダメ、生まれや育ちだけでもダメ、、、でも世界中に認められる偉業を成し遂げたら君は立派な日本人だよ。。。なんだか背中がもぞもぞする感じです。
そこで育っていないというのは大きいですよね。どうしても考え方や身にまとう雰囲気が違ってしまいます。我が子を見ていても思いますもの。
といって、逆に日本で生まれて日本語で教育を受けて、どこからどうみても日本人風なのに、外見とかルーツのせいで日本人扱いしてもらえない人もいるんですよね。
血筋だけでもダメ、生まれや育ちだけでもダメ、、、でも世界中に認められる偉業を成し遂げたら君は立派な日本人だよ。。。なんだか背中がもぞもぞする感じです。
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stanislowski
at 2017-10-09 15:58
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poirier_AAA at 2017-10-09 21:29
> stanislowskiさん、こんにちは。
この記事の、書き直す前のものでしょうか?
う〜ん、あれは我ながら狡いまとめ方だな、と思って。
今のが一番いいとは思わないけれど、前のよりはしっくりするのです。
stanislowskiさんのいわんとしていることは、なんとなくわかるような気がします。
でも、なんでしょうね、結局ひとりひとりの心の問題なのではないかとわたしは思っているのです。体制が悪い、政治家が悪い、あれが悪い、これが悪い、そうやって何かのせいにしている限り、日本人は絶対に自分に責任があるとは考えないでしょう。政治のような大きな話も、所詮は日常生活の中にある無数の会社、学校、地域の組織やあらゆる人間関係が凝縮して具現したものでしかありません。日常生活でノー!と言えない人たちが、ここはおかしいと思うのでこのように変えてみないかと議論できない人たちが、政治だけは変わってほしいと思う、それって結局人任せで何も変わらないじゃないかと思ってしまうのでした。
この記事の、書き直す前のものでしょうか?
う〜ん、あれは我ながら狡いまとめ方だな、と思って。
今のが一番いいとは思わないけれど、前のよりはしっくりするのです。
stanislowskiさんのいわんとしていることは、なんとなくわかるような気がします。
でも、なんでしょうね、結局ひとりひとりの心の問題なのではないかとわたしは思っているのです。体制が悪い、政治家が悪い、あれが悪い、これが悪い、そうやって何かのせいにしている限り、日本人は絶対に自分に責任があるとは考えないでしょう。政治のような大きな話も、所詮は日常生活の中にある無数の会社、学校、地域の組織やあらゆる人間関係が凝縮して具現したものでしかありません。日常生活でノー!と言えない人たちが、ここはおかしいと思うのでこのように変えてみないかと議論できない人たちが、政治だけは変わってほしいと思う、それって結局人任せで何も変わらないじゃないかと思ってしまうのでした。
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at 2017-10-12 01:25
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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poirier_AAA at 2017-10-12 17:59
> kagikomeさん、こんにちは。
ノーベル文学賞の選考基準はわたしもわかりません。それほどたくさんの作家を知っているわけでもないので、見当もつきません。でも、個人的には村上春樹よりはカズオ・イシグロの方が好きです。村上春樹は短編とエッセイなら好きですが、長編はもう何年も前から読んでいません。イシグロは今度はどんな話を書いてくるだろうと毎回興味がわきますね。映画はまた別物、と思っています。
そうですね、どこが終の住処になるかは、わたしもわかりませんね。自分でも決めてないですし。ここかもしれない、でもあそこかもしれない。ひょっとしたらまったく別な場所に行くかもしれない。でも、どこに住むことになったとしても、たいして変わることなくこんな調子で生きていきそうな気がしますよ。
ハワイですか。。。。わたしは一度も行ったことがないのです。
ノーベル文学賞の選考基準はわたしもわかりません。それほどたくさんの作家を知っているわけでもないので、見当もつきません。でも、個人的には村上春樹よりはカズオ・イシグロの方が好きです。村上春樹は短編とエッセイなら好きですが、長編はもう何年も前から読んでいません。イシグロは今度はどんな話を書いてくるだろうと毎回興味がわきますね。映画はまた別物、と思っています。
そうですね、どこが終の住処になるかは、わたしもわかりませんね。自分でも決めてないですし。ここかもしれない、でもあそこかもしれない。ひょっとしたらまったく別な場所に行くかもしれない。でも、どこに住むことになったとしても、たいして変わることなくこんな調子で生きていきそうな気がしますよ。
ハワイですか。。。。わたしは一度も行ったことがないのです。