2017年 04月 24日
驚くこと、驚かないこと |
日曜日はフランス大統領選の第1回投票だった。
午後から夜中まで、ヘリコプターの音がひっきりなしに聞こえてきた。
東京と違ってパリの空は静かだ。
こんなふうにヘリコプターの音が聞こえてくるのは年に数回。
特別な行事の時か、何か大きな出来事があった時に限られる。
出口調査の結果も実際の開票結果も予想を裏切るものではなかったが、
静かな夜に聞こえて来るヘリコプターの音だけが、
いつもと同じ夜ではない、と人に注意を促しているような気がした。
マクロンとル・ペンの対立になるだろうことは、
誰を支持するかに拘らず、多くの人が予想していたことだと思う。
個人的に結果には驚きの要素はなかった。
ただ、同じ選挙結果を日本語解説(某放送局)で読んで、ひどく驚いた。
そこにはこうあったのである。
もしル・ペン候補が勝てば、フランス初の女性大統領になります。
それは確かに当たっている。
これまでフランスには女性の大統領はいなかった。
けれど、この大統領選を「女性が大統領になるか」という視点で見ている有権者って
一体どれだけいるのだろうとふっと思ったのである。
結果として女性が大統領になることはあるかもしれない。
でも、勝にしても負けるにしても、勝負どころは政策である。
ル・ペン候補を語るのによもや性別が出てくるとは思わなかった。
びっくりした。
自分が見ているものと自分の同胞が見ているものが、
同じものであるはずなのに全然違って感じられる瞬間である。
そういう経験はこれが初めてではないけれども。
結果が明らかになった今朝、
修学旅行に行くために息子Aが朝早く家を出た。
「すぐに手紙を書くから」
見送りに出た息子Bが力強く請け合っていた。
「選挙結果(トップ以外)を詳しく書いて送るから楽しみにしててね」
どこかで聞いたセリフだよな、と思う。
息子Bが修学旅行に出かける前、息子Aが同じように請け合っていたのである。
「今週末のサッカーの試合の結果と内容、ちゃんと書いて送るから」
小学生の子どもにとって、
大統領選の結果とサッカーの結果と、同じくらいの情報価値があるのか。
それもまた、かなり新鮮な驚きなのだった。
by poirier_AAA
| 2017-04-24 21:43
| 日々の断片
|
Comments(6)
Commented
by
Mtonosama at 2017-04-25 06:00
へえ、確かに女性ではあるけれど、この時期、そんな解説するなんて恥ずかしい。
でも、どうなるのでしょうか。
でも、どうなるのでしょうか。
0
Commented
by
ひかり
at 2017-04-25 06:52
x
Commented
by
きゃすぴえ
at 2017-04-25 10:50
x
日本の報道を見ていると、日本って鎖国してるのかな、と感じることがありますけど、これもそうですね。
ところで選挙当日の我が市のフランス領事館では、フランス市民たちが建物の外まで長い行列を作り、何時間も待っていたのに、投票締め切りの時間がきたら、建物の外の人たちは追い返されたんだそうです。3時間以上待ってたのに投票できなかった人たちが何人もいたそうです。投票に来る人数を考えて、もっと効率よく、、、とか準備するわけはないかな、、でも、国政に参加することを大真面目に捉えているフランス人たちを追い返してタダで済むのかな、とちょっと驚きましたよ。
ところで選挙当日の我が市のフランス領事館では、フランス市民たちが建物の外まで長い行列を作り、何時間も待っていたのに、投票締め切りの時間がきたら、建物の外の人たちは追い返されたんだそうです。3時間以上待ってたのに投票できなかった人たちが何人もいたそうです。投票に来る人数を考えて、もっと効率よく、、、とか準備するわけはないかな、、でも、国政に参加することを大真面目に捉えているフランス人たちを追い返してタダで済むのかな、とちょっと驚きましたよ。
Commented
by
poirier_AAA at 2017-04-25 16:57
> Mtonosamaさん、こんにちは。
この解説員(男性)には、性別が一番先に注目すべき点だったのかもしれませんね。
そういう観点での解説ってフランスでは耳(目)にしたことがなかったので、あ、そうか、女性候補であるという見方もあるのか〜と、ものすごく驚いてしまいました。
たぶん(大きな問題を孕みつつ)マクロンが勝つのでは?と見ています。
この解説員(男性)には、性別が一番先に注目すべき点だったのかもしれませんね。
そういう観点での解説ってフランスでは耳(目)にしたことがなかったので、あ、そうか、女性候補であるという見方もあるのか〜と、ものすごく驚いてしまいました。
たぶん(大きな問題を孕みつつ)マクロンが勝つのでは?と見ています。
Commented
by
poirier_AAA at 2017-04-25 17:20
> ひかりさん、こんにちは。
フランスでもその手の情報はもちろん出回るのですが、それは二次的な情報であって、野次馬記事に近い感じですね。結婚していようと事実婚だろうと、誰かと別れようとくっつこうと、配偶者が20歳年上だろうが年下だろうが、大統領としての仕事さえしてくれるならいいよというのがフランスだと思います。
でも、日本人男性にはショックが大きい情報だったのかもしれないな〜と、少し意地悪く思ってもいるのです(笑)。
フランスでもその手の情報はもちろん出回るのですが、それは二次的な情報であって、野次馬記事に近い感じですね。結婚していようと事実婚だろうと、誰かと別れようとくっつこうと、配偶者が20歳年上だろうが年下だろうが、大統領としての仕事さえしてくれるならいいよというのがフランスだと思います。
でも、日本人男性にはショックが大きい情報だったのかもしれないな〜と、少し意地悪く思ってもいるのです(笑)。
Commented
by
poirier_AAA at 2017-04-25 17:30
> きゃすぴえさん、こんにちは。
えーっ、そんなことがあったんですか。それはひどい。
でもその情報、カナール・オンシェネ紙にでも持ち込んだら、痛烈な批判記事にしてくれそうな気もしますよね。
酷いといえば、日本の在外投票もちょっと酷いよなと思っているのです。
本番の投票の1週間前にはもう投票を終えていないといけないでしょう?公示されてすぐに、まだ公約も出揃わない頃に投票せよってなんだろう?と思っていて。
人の目につきにくいところでは不公平なことも普通にまかり通ってしまうものですね。
えーっ、そんなことがあったんですか。それはひどい。
でもその情報、カナール・オンシェネ紙にでも持ち込んだら、痛烈な批判記事にしてくれそうな気もしますよね。
酷いといえば、日本の在外投票もちょっと酷いよなと思っているのです。
本番の投票の1週間前にはもう投票を終えていないといけないでしょう?公示されてすぐに、まだ公約も出揃わない頃に投票せよってなんだろう?と思っていて。
人の目につきにくいところでは不公平なことも普通にまかり通ってしまうものですね。