2016年 09月 20日
声が好き |
先日の土曜日だったか、テレビでシュトラウスの「ばらの騎士」の放送を観た。
カルロス・クライバー指揮、
ギネス・ジョーンズの元帥夫人、
ブリギッテ・ファスベンダーのオクタヴィアン
ルチア・ポップのゾフィーという、よく知られた録画だ。
このオペラを全幕観るチャンスなんて滅多にないので、
子どもが他の面白い映画を見たいなぁというのを無視して、
今日ばかりはわたしが見たいものを見るからっ!と頑張った。
息子たちは文句ぶうぶうだ。
曰く、
どうせこんなの、最後はアムールとかベゼ(キス)とかでてきて、
男と女が「あなたなしでは生きられない」とか言うんでしょ。
そういうワンパターンの何が面白いのか、ぜ〜んぜんわかんないよ。
笑ってしまった。
たしかに、ばらの騎士もいきなり後朝の寝室の場面で始まるし、
最後は若い二人が熱っぽく見つめ合い抱き合って終わる。
ワンパターンと言われれば返す言葉がないかな。
でも、考えてみたら、そんなことはどうでもいいのだった。
ハッピーエンドだからとそれを楽しみに見ているわけじゃない。
話の内容なんてもう、最初から最後まで人に語れるくらい知っているのである。
知っていて、それでもしつこく観る(聴く)のである。
歌が聴きたい、それがすべてだ。
極端なことを言えば、演出だってどうでもいいくらい。
最近はオペラも演出の面白さで見せようとする傾向があるけれど、
演出がどんなに面白くたって歌が面白くなかったらオペラは終りだ。
歌にさえ説得力があれば、
演奏会形式で、歌手がパジャマ姿で歌っていたって構わないくらいだ。
‥‥とわたしは思う。
さらにさらに極端なことを言えば、
まったく知らない言葉で歌われているオペラなら、
歌詞(セリフ)ですらどうでもいいような気がするのだ。
例えば男と女が美しい愛の二重唱を歌い上げる場面で、
お互いに「あんたなんか大嫌い」「いいやがったな、このコンコンチキ」
と言い合っていたとしても、多分気にならない。
言葉と関係なく音楽(ハーモニー)は完全に美しいからだ。
オペラの面白さがここにある。
オペラは声と音楽がよければ、それだけで十分に満足出来る。
でも、歌手の容姿が役柄にぴったりだったら、視覚でも楽しめる。
演出がよくできていたらさらに楽しいし、きっと新たな発見もある。
マリア・カラスのように言葉と歌が連動する歌手だと、
劇としての説得力が増す。
ばらの騎士は、音楽がすごくいい。
オットー・シェンクの演出は雰囲気がたっぷりで楽しめる。
長い長い(3時間超)劇がとびきり美しい重唱で終わるのもいい。
耳と目でオペラを楽しんだ後は、
純粋に耳だけでオペラを味わいたくなって、
いろんなCDを引っ張り出してきてたくさんのアリアを聴いた。
特に、釣り合いの取れた二重唱の美しさといったらない。
ステレオで聴いていると天国に昇ったような気分になる。
声はいいなぁ。
by poirier_AAA
| 2016-09-20 19:22
| 聴く
|
Comments(10)
Commented
by
fusk-en25 at 2016-09-20 19:52
昔、フィガロの結婚だったか。たった一度だけオペラを観に行きました。
イタリア語だったからわかったのは後にも先にも「スザンナ」という呼び名だけ。
でも意外と終わるまで楽しめた。
もちろん内容は知ってましたけど。
イタリア語だったからわかったのは後にも先にも「スザンナ」という呼び名だけ。
でも意外と終わるまで楽しめた。
もちろん内容は知ってましたけど。
0
Commented
by
Ich
at 2016-09-20 20:07
x
同感です。AくんBくんお元気になられて良かったー^^ 最近はちょこちょことママンに逆らってきているところが何て可愛いのでしょう(^o^)
Commented
by
echalotelle at 2016-09-20 21:49
息子さんたち、オペラの特徴をちゃーんとつかんでますね。^^
私、まともにオペラを全幕見たことはないけれど
声の美しさというものには、いつも感動します。
以前、poirierさんが紹介していたこれ、Strauss -- Der Rosenkavalier, Final Trio -- K. Battle, F. von Stade, R. Fleming (1992)は、とてもよかったわ!!
天国に昇ったような気分になる・・・というのは、アヴェマリアをカテドラルの中で聴くのと同じような感じね。
私、まともにオペラを全幕見たことはないけれど
声の美しさというものには、いつも感動します。
以前、poirierさんが紹介していたこれ、Strauss -- Der Rosenkavalier, Final Trio -- K. Battle, F. von Stade, R. Fleming (1992)は、とてもよかったわ!!
天国に昇ったような気分になる・・・というのは、アヴェマリアをカテドラルの中で聴くのと同じような感じね。
Commented
by
poirier_AAA at 2016-09-21 17:08
> fuskさん、こんにちは。
わたしが一番最初に生で観たオペラはなんだったかなぁと随分考えて、やっと思い出しました。
「トゥーランドット」でしたよ。あらすじも何も全然知らないまま友達に付いて行って、字幕を見ながら歌を聴いて、それがすごく面白かった。
思えばあそこからオペラ好きが始まったのでした。。。。
わたしが一番最初に生で観たオペラはなんだったかなぁと随分考えて、やっと思い出しました。
「トゥーランドット」でしたよ。あらすじも何も全然知らないまま友達に付いて行って、字幕を見ながら歌を聴いて、それがすごく面白かった。
思えばあそこからオペラ好きが始まったのでした。。。。
Commented
by
poirier_AAA at 2016-09-21 17:14
> Ichさん、こんにちは。
心配していただいて、ありがとうございます。もうすっかり元気になりました。
二人とも、映画や本、オペラでも、恋愛場面が作品を台無しにするといいます。
10年後も同じことを言っているかな?と思うと、ちょっと可笑しいです。
心配していただいて、ありがとうございます。もうすっかり元気になりました。
二人とも、映画や本、オペラでも、恋愛場面が作品を台無しにするといいます。
10年後も同じことを言っているかな?と思うと、ちょっと可笑しいです。
Commented
by
poirier_AAA at 2016-09-21 17:23
> echalotelleさん、こんにちは。
あはは、そう言われてみればその通りですね。特にイタリアオペラなんて、恋愛がなくなったら劇にならない(笑)。わたしもこどもの頃はたしかに、太った男女が絶叫しながら愛してると歌うのを見て何が楽しいのだ?と思っていましたよ。すっかり忘れていたけれど。
先日ご紹介した三重唱、よかったでしょう?あれが「ばらの騎士」の一番最後の場面です。
物語自体は決して清らかなわけではないし、若い男の役を女性歌手が演じるという一種倒錯した世界でもあるのですが、ええい、そんなことはこの際どうでもいいんだよ!といいたくなるような、ほんとに美しい重唱ですよね。
あはは、そう言われてみればその通りですね。特にイタリアオペラなんて、恋愛がなくなったら劇にならない(笑)。わたしもこどもの頃はたしかに、太った男女が絶叫しながら愛してると歌うのを見て何が楽しいのだ?と思っていましたよ。すっかり忘れていたけれど。
先日ご紹介した三重唱、よかったでしょう?あれが「ばらの騎士」の一番最後の場面です。
物語自体は決して清らかなわけではないし、若い男の役を女性歌手が演じるという一種倒錯した世界でもあるのですが、ええい、そんなことはこの際どうでもいいんだよ!といいたくなるような、ほんとに美しい重唱ですよね。
Commented
by
かずひこ
at 2016-09-22 04:40
x
クライバーのばらの騎士なんてテレビでやっていたんですか!!
フランスのテレビって、一週間前くらいまでのなら見ることができるチャンネルが多いので、もし覚えていらしたらどのチャンネルでご覧になったか教えてくださいませんか?
フランスのテレビって、一週間前くらいまでのなら見ることができるチャンネルが多いので、もし覚えていらしたらどのチャンネルでご覧になったか教えてくださいませんか?
Commented
by
poirier_AAA at 2016-09-22 06:19
> かずひこさん、こんばんは。
Mezzoというチャンネルなのです。契約してないと見られないのですが、月額も高くはありません。ひょっとしたら再放送があるかもしれませんね。でも、もしダメでも多分お近くの図書館でDVDを探せるのではないでしょうか。すごく有名なバージョンですから。
今晩は同じチャンネルで「ワルキューレ」を見ながら書いているんですよ(笑)
Mezzoというチャンネルなのです。契約してないと見られないのですが、月額も高くはありません。ひょっとしたら再放送があるかもしれませんね。でも、もしダメでも多分お近くの図書館でDVDを探せるのではないでしょうか。すごく有名なバージョンですから。
今晩は同じチャンネルで「ワルキューレ」を見ながら書いているんですよ(笑)
Commented
by
かずひこ
at 2016-09-23 05:25
x
こんばんは。
あ、Mezzoでしたか!
うちは契約していないんですが、確かに高くないので惹かれますね。でも、クライバーのDVDは、ニューイヤー・コンサートのとかシンフォニーのとかは既にいろいろ持っているので、この際、ばらの騎士も買ってしまおうかな。
あ、Mezzoでしたか!
うちは契約していないんですが、確かに高くないので惹かれますね。でも、クライバーのDVDは、ニューイヤー・コンサートのとかシンフォニーのとかは既にいろいろ持っているので、この際、ばらの騎士も買ってしまおうかな。
Commented
by
poirier_AAA at 2016-09-23 19:55
> かずひこさん、こんにちは。
クライバー、お好きでしたか。それなら買ってしまうという手もありますよね。
きっともうご存知だと思いますが、クライバーの「ばらの騎士」は2種類DVDが出ていて、ひとつはこの記事で紹介したギネス・ジョーンズが元帥夫人を演じたもの、もうひとつはフェリシティ・ロットが元帥夫人を歌っているものです。わたしが初めて聴いた「ばらの騎士」がこのフェリシティ・ロット版でした。歌手3人の外見も役柄によく似合っていて、これも良かったです。15年の間をあけて録画された2本、クライバーの指揮を比べてみるのも楽しいかも。どうせなら2本とも買って聴き比べてみるとか、どうでしょう?
クライバー、お好きでしたか。それなら買ってしまうという手もありますよね。
きっともうご存知だと思いますが、クライバーの「ばらの騎士」は2種類DVDが出ていて、ひとつはこの記事で紹介したギネス・ジョーンズが元帥夫人を演じたもの、もうひとつはフェリシティ・ロットが元帥夫人を歌っているものです。わたしが初めて聴いた「ばらの騎士」がこのフェリシティ・ロット版でした。歌手3人の外見も役柄によく似合っていて、これも良かったです。15年の間をあけて録画された2本、クライバーの指揮を比べてみるのも楽しいかも。どうせなら2本とも買って聴き比べてみるとか、どうでしょう?