2015年 03月 07日
甘くて切ない接続法「Les Chevaliers du Subjonctif」 |
子どもの学校が始まったら時間も出来て、きっと読書もはかどるだろう、
そんな予想に反して、今週はこの1冊しか読めませんでした。
いくつか前に紹介した Erik Orsenna のフランス語文法シリーズの2冊目、
「Les Chevaliers du Subjonctif(接続法の騎士)」です。
フランス語の基礎を、わたしは日本にいるうちに全部勉強しました。
通っていた学校が直接法(フランス語でフランス語を教える)だったので、
文法事項も全部フランス語で習っています。
それだけで用が足りるなら問題はないのですが、
日本語の文法書で細かいところを詰めようとすると、ハタと困るのです。
文法用語が日仏ごっちゃになって、もうどれがどれやらとんとわからぬ。
接続法とか条件法とか、前過去とか大過去とか、
あーもうわからん、いい加減にして。
文法用語には括弧入りで対応する仏語をつけてほしいよ。。。。
ただでさえ覚えなければいけない動詞の活用が多いのだから、
余計な文法用語で頭を混乱させないで欲しい、
フランス語に限らず、語学学習者の心からの叫びではないでしょうか。
というわけで、接続法とか条件法とか言いだされると、
パブロフの犬的に瞬時に眉間にしわがよってしまうわたしなのですが、
不思議なもので、実生活ではほとんど抵抗もなく使っているのであります。
もう行かなきゃ、とか。
あぁ、子どもがもっと静かだったらいいのになぁ、とか。
つまり、ほとんど無意識に使っているくせに、
文法事項として説明されると拒否反応が起きてしまう、
そんな世の中にたくさんいるであろう文法アレルギー患者のために、
文法の世界と実際の世界の気持ちの良い橋渡しとなってくれるのが、この本です。
接続法は、言ってみれば人間の夢の世界です。
こうだったらいいのになぁ。
こういうことも可能かもしれない。
それは甘い夢かもしれないし、絶望的な叫びかもしれない。
見果てぬ夢かもしれない。叶うかもしれない望みかもしれない。
あるいはまた、独裁に抵抗する根強い希望かもしれない。
人は現実の世界に生きていますが、
現実の世界だけで生きているわけではありません。
こうだったらと思う、その仮定や夢想、希望がどうしても必要なのです。
夢を見る力がなかったら、空を飛ぶこともなかったでしょう。
現実だけでない「何か」がなかったら、絶望を生き延びられないかもしれません。
bien que や avoir peur que 等の後は接続法になる
文法書にはそういった決まり事がたくさん羅列してあります。
それを片っ端から覚えようと思ったらウンザリする勉強にしかなりませんが、
接続法のこころが、どの島(現実)に寄るか考えあぐねて漂っている船だと思えば、
あぁそういうことか、となんだか楽しく思われてきます。
前作と同じ主人公ジャンヌは、
愛とは何かについて調べているうちに、接続法の島に着きます。
そこが気に入って時間の感覚をなくすほど滞在するのですが、
あるとき、やはり直接法の島に戻ろうと決心します。
なぜ?と問う島の住人に、
わたしはやっぱり現実の世界が好きなの、と答えるジャンヌ。
その答えを聞いた島の住人は言いました。
気にしなくていいよ。でも(恋をしたら)きっと君は戻って来る。
そう、恋もまた接続法(あれか、これか)の世界なのです。
文法なんてと思う人は、一度読んでみるといいかもしれません。
接続法、嫌っていたら恋もできなきゃ夢もみられませぬゆえ。
そんな予想に反して、今週はこの1冊しか読めませんでした。
いくつか前に紹介した Erik Orsenna のフランス語文法シリーズの2冊目、
「Les Chevaliers du Subjonctif(接続法の騎士)」です。
フランス語の基礎を、わたしは日本にいるうちに全部勉強しました。
通っていた学校が直接法(フランス語でフランス語を教える)だったので、
文法事項も全部フランス語で習っています。
それだけで用が足りるなら問題はないのですが、
日本語の文法書で細かいところを詰めようとすると、ハタと困るのです。
文法用語が日仏ごっちゃになって、もうどれがどれやらとんとわからぬ。
接続法とか条件法とか、前過去とか大過去とか、
あーもうわからん、いい加減にして。
文法用語には括弧入りで対応する仏語をつけてほしいよ。。。。
ただでさえ覚えなければいけない動詞の活用が多いのだから、
余計な文法用語で頭を混乱させないで欲しい、
フランス語に限らず、語学学習者の心からの叫びではないでしょうか。
というわけで、接続法とか条件法とか言いだされると、
パブロフの犬的に瞬時に眉間にしわがよってしまうわたしなのですが、
不思議なもので、実生活ではほとんど抵抗もなく使っているのであります。
もう行かなきゃ、とか。
あぁ、子どもがもっと静かだったらいいのになぁ、とか。
つまり、ほとんど無意識に使っているくせに、
文法事項として説明されると拒否反応が起きてしまう、
そんな世の中にたくさんいるであろう文法アレルギー患者のために、
文法の世界と実際の世界の気持ちの良い橋渡しとなってくれるのが、この本です。
接続法は、言ってみれば人間の夢の世界です。
こうだったらいいのになぁ。
こういうことも可能かもしれない。
それは甘い夢かもしれないし、絶望的な叫びかもしれない。
見果てぬ夢かもしれない。叶うかもしれない望みかもしれない。
あるいはまた、独裁に抵抗する根強い希望かもしれない。
人は現実の世界に生きていますが、
現実の世界だけで生きているわけではありません。
こうだったらと思う、その仮定や夢想、希望がどうしても必要なのです。
夢を見る力がなかったら、空を飛ぶこともなかったでしょう。
現実だけでない「何か」がなかったら、絶望を生き延びられないかもしれません。
bien que や avoir peur que 等の後は接続法になる
文法書にはそういった決まり事がたくさん羅列してあります。
それを片っ端から覚えようと思ったらウンザリする勉強にしかなりませんが、
接続法のこころが、どの島(現実)に寄るか考えあぐねて漂っている船だと思えば、
あぁそういうことか、となんだか楽しく思われてきます。
前作と同じ主人公ジャンヌは、
愛とは何かについて調べているうちに、接続法の島に着きます。
そこが気に入って時間の感覚をなくすほど滞在するのですが、
あるとき、やはり直接法の島に戻ろうと決心します。
なぜ?と問う島の住人に、
わたしはやっぱり現実の世界が好きなの、と答えるジャンヌ。
その答えを聞いた島の住人は言いました。
気にしなくていいよ。でも(恋をしたら)きっと君は戻って来る。
そう、恋もまた接続法(あれか、これか)の世界なのです。
文法なんてと思う人は、一度読んでみるといいかもしれません。
接続法、嫌っていたら恋もできなきゃ夢もみられませぬゆえ。
by poirier_AAA
| 2015-03-07 21:19
| フランス語を読む
|
Comments(6)
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Mtonosama at 2015-03-08 06:31
梨の木さんもそうなんですか?私も接続法Ⅰ式、Ⅱ式と聞くだけで「ああ、もうダメダメ」と逃げの姿勢に入ります。
大学1年でドイツ語を日本語でやりはしたのですが、それはそれ。時代的に諸般の事情があり、形容詞変化から授業がなくなり日本語によるドイツ語文法を勉強していないのです。その後ドイツ語学校でドイツ語による文法は勉強したのですが、苦手意識はどうしても払拭しきれないまま150歳になってしまいました。
それにしても「接続法の騎士」だなんて素敵なタイトルですね。
大学1年でドイツ語を日本語でやりはしたのですが、それはそれ。時代的に諸般の事情があり、形容詞変化から授業がなくなり日本語によるドイツ語文法を勉強していないのです。その後ドイツ語学校でドイツ語による文法は勉強したのですが、苦手意識はどうしても払拭しきれないまま150歳になってしまいました。
それにしても「接続法の騎士」だなんて素敵なタイトルですね。
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kanafr at 2015-03-08 15:28
>文法用語には括弧入りで対応する仏語をつけてほしいよ
ホント!ホント!そう思いますよね。
それに、日本語で書かれた文法の場合、読んでいるうちに私だけかもしれませんが、その言葉の説明がややこしくて何だか訳が分からなくなってきてしまい....です(苦笑)
ホント!ホント!そう思いますよね。
それに、日本語で書かれた文法の場合、読んでいるうちに私だけかもしれませんが、その言葉の説明がややこしくて何だか訳が分からなくなってきてしまい....です(苦笑)
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fusk
at 2015-03-08 22:14
x
「春」 春ですねえと天気予報のおばちゃん(?)が興奮していました。笑。
ほんと。嬉しい様な日曜日。朝からすっきり晴れて。。。
私は期待して裏切られるのが怖いから超現実派です。
「もしも」は信じない。
ただ。本を読んでいる時。すーっとその話の主人公になっている。夢の中で生きているのですね。
こう言う形の「夢」も有りか。。と思いながら江戸に行ったりはしています。
ほんと。嬉しい様な日曜日。朝からすっきり晴れて。。。
私は期待して裏切られるのが怖いから超現実派です。
「もしも」は信じない。
ただ。本を読んでいる時。すーっとその話の主人公になっている。夢の中で生きているのですね。
こう言う形の「夢」も有りか。。と思いながら江戸に行ったりはしています。
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poirier_AAA at 2015-03-09 17:50
>Mtonosamaさん、こんにちは。
そうなんですか、なんてものじゃございませんよ〜。
文法用語が出て来ると、あぁもうついていけない、とあっさりギブアップ。勉強歴だけは長いのに、本当に情けない有り様なのです。
でも、まず文法ありき、ではないんですよね。まず先に使われている言葉があって、その仕組みを説明するために文法があるのです。用語が学術的であんまり味がないのがいけないかもしれません。現実モード、夢見モードなんて呼んだら、もっとわかりやすいかな〜なんて。
そうなんですか、なんてものじゃございませんよ〜。
文法用語が出て来ると、あぁもうついていけない、とあっさりギブアップ。勉強歴だけは長いのに、本当に情けない有り様なのです。
でも、まず文法ありき、ではないんですよね。まず先に使われている言葉があって、その仕組みを説明するために文法があるのです。用語が学術的であんまり味がないのがいけないかもしれません。現実モード、夢見モードなんて呼んだら、もっとわかりやすいかな〜なんて。
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poirier_AAA at 2015-03-09 18:08
>kanafrさん、こんにちは。
うふふ。kakafrさんもそうですか。仲間がいて嬉しいです。。。
日本語の説明ってややこしいですよね。読んでいるうちに抜け出せない迷宮に迷い込んで眠くなってしまうと言うか。この漢字熟語は何を意味しているんでしょう?と思い始めるともういけません(笑)。
とはいいながら一方では、息子が授業で習っていると言う長ったらしい文法用語を耳にして、「えっ、いま何て言ったの?それってどういうこと?」と聞きまくっているわたしです。結局文法用語が苦手なだけなのかもしれませんね。
うふふ。kakafrさんもそうですか。仲間がいて嬉しいです。。。
日本語の説明ってややこしいですよね。読んでいるうちに抜け出せない迷宮に迷い込んで眠くなってしまうと言うか。この漢字熟語は何を意味しているんでしょう?と思い始めるともういけません(笑)。
とはいいながら一方では、息子が授業で習っていると言う長ったらしい文法用語を耳にして、「えっ、いま何て言ったの?それってどういうこと?」と聞きまくっているわたしです。結局文法用語が苦手なだけなのかもしれませんね。
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poirier_AAA at 2015-03-09 18:16
>fuskさん、こんにちは。
今日は、昨日までの青空はどこに行ってしまった?と思うようなドンヨリした灰色の空ですね。でも暖かいからいいですけど。
わたしはどうかなぁ。わたしは夢見る現実派、かもしれません。
そうそううまくいかないのが現実だよ、と醒めた気持ちで思っている。でもその一方で、物語みたいに寓話みたいに「ひょ〜っ」と思うようなことが起こるかもね、なんて夢も持ち続けているのです。実は夢と現実の境は曖昧なんじゃないか、というような。
fuskさんは江戸時代におでかけでしたか?
わたしは中世フランスを彷徨った週末でした。
今日は、昨日までの青空はどこに行ってしまった?と思うようなドンヨリした灰色の空ですね。でも暖かいからいいですけど。
わたしはどうかなぁ。わたしは夢見る現実派、かもしれません。
そうそううまくいかないのが現実だよ、と醒めた気持ちで思っている。でもその一方で、物語みたいに寓話みたいに「ひょ〜っ」と思うようなことが起こるかもね、なんて夢も持ち続けているのです。実は夢と現実の境は曖昧なんじゃないか、というような。
fuskさんは江戸時代におでかけでしたか?
わたしは中世フランスを彷徨った週末でした。