2014年 08月 26日
お盆 |
遊びといえば外を駆け回ることだった子どものころ、
お盆の間は虫を採ってはいけません、と家族にきつく言われた。
うちの家族だけの話ではなく、クラスの男の子たちの間でも、
ひそやかにその雰囲気(禁忌の意識)が漂っていたと思う。
お盆の間はカブトムシやクワガタの採取はお休みだったから。
東京で暮らしていた頃は、
そんなことは思い出しもしなかった。
大都会では虫は(嫌われ者の家内害虫を除いて)縁遠い存在だ。
お盆期間中は殺生しない。
そのことをはっきり思い出したのは、こちらに住むようになってから。
もっと言えば、お盆期間をポルトガルで過ごすようになってからである。
ポルトガルも都会ならば話は違ったかもしれない。
でも、わたしにとってのポルトガルは歴然とした「田舎」だ。
牛がいて、羊がいて、豚がいて、鶏が普通にいる。
となると蠅が登場しないわけがない。
義両親のところは畑も屋内も殺虫剤は使わないから、まさに蠅の楽園。
基本的蠅対策は、昔ながらの虫除けすだれと蠅叩きのみ。
人は追い払っても追い払っても入り込んで来る蠅に文句を言いながら生活する。
そういう環境下で殺生を避けるのは、ちょっと難しい。
それでも例年ひっそりと(夫と2人で)「無殺生」を心がけていた。
でも今年は様子が違った。
息子たちが蠅叩き使いをマスターしたのである。
自分から探しに行くことはしないものの、
目の前に蠅がいると叩いてみたくてたまらない。
お盆の初日13日は祖母の命日でもある。
この日の昼、テーブルに着地した蠅を息子Aが狙った。
わたしは思わず言った。
「お願い、その蠅、叩かないで!」
ママン、蠅がいてもイヤじゃないの?
不思議そうな顔をするAに、お盆の習慣を説明した。
死んだ人の魂が戻って来るんだよ。
ひょっとしたら、その目の前の蠅に乗って来ているかもしれない。
半信半疑ながら蠅叩きを断念したAとわたしの前で、
命拾いした蠅はゆうゆうと落ち着き払い、
動いたり飛び立ったりの気配も見せない。
あれ、これは本当におばあちゃんかもしれないよ。
みんなが元気にしているか、見に来てくれたのかもしれない。
そう思って見ると、大嫌いな蠅もなんだか可愛く見えて来る不思議。
後からやってきた息子Bが、
蠅をじっと眺めている母親と兄弟を見つけて「なにしてるの?」と聞く。
息子Aは言った。
日本では死んだ人は虫になるんだよ。
この蠅は大きいおばあちゃんだから叩いちゃいけないんだって。
。。。。。。うーん、ずいぶん思い切った要約だと思うよ。
お盆の間は虫を採ってはいけません、と家族にきつく言われた。
うちの家族だけの話ではなく、クラスの男の子たちの間でも、
ひそやかにその雰囲気(禁忌の意識)が漂っていたと思う。
お盆の間はカブトムシやクワガタの採取はお休みだったから。
東京で暮らしていた頃は、
そんなことは思い出しもしなかった。
大都会では虫は(嫌われ者の家内害虫を除いて)縁遠い存在だ。
お盆期間中は殺生しない。
そのことをはっきり思い出したのは、こちらに住むようになってから。
もっと言えば、お盆期間をポルトガルで過ごすようになってからである。
ポルトガルも都会ならば話は違ったかもしれない。
でも、わたしにとってのポルトガルは歴然とした「田舎」だ。
牛がいて、羊がいて、豚がいて、鶏が普通にいる。
となると蠅が登場しないわけがない。
義両親のところは畑も屋内も殺虫剤は使わないから、まさに蠅の楽園。
基本的蠅対策は、昔ながらの虫除けすだれと蠅叩きのみ。
人は追い払っても追い払っても入り込んで来る蠅に文句を言いながら生活する。
そういう環境下で殺生を避けるのは、ちょっと難しい。
それでも例年ひっそりと(夫と2人で)「無殺生」を心がけていた。
でも今年は様子が違った。
息子たちが蠅叩き使いをマスターしたのである。
自分から探しに行くことはしないものの、
目の前に蠅がいると叩いてみたくてたまらない。
お盆の初日13日は祖母の命日でもある。
この日の昼、テーブルに着地した蠅を息子Aが狙った。
わたしは思わず言った。
「お願い、その蠅、叩かないで!」
ママン、蠅がいてもイヤじゃないの?
不思議そうな顔をするAに、お盆の習慣を説明した。
死んだ人の魂が戻って来るんだよ。
ひょっとしたら、その目の前の蠅に乗って来ているかもしれない。
半信半疑ながら蠅叩きを断念したAとわたしの前で、
命拾いした蠅はゆうゆうと落ち着き払い、
動いたり飛び立ったりの気配も見せない。
あれ、これは本当におばあちゃんかもしれないよ。
みんなが元気にしているか、見に来てくれたのかもしれない。
そう思って見ると、大嫌いな蠅もなんだか可愛く見えて来る不思議。
後からやってきた息子Bが、
蠅をじっと眺めている母親と兄弟を見つけて「なにしてるの?」と聞く。
息子Aは言った。
日本では死んだ人は虫になるんだよ。
この蠅は大きいおばあちゃんだから叩いちゃいけないんだって。
。。。。。。うーん、ずいぶん思い切った要約だと思うよ。
by poirier_AAA
| 2014-08-26 17:47
| ポルトガル
|
Comments(6)
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saheizi-inokori at 2014-08-26 21:50
子供の頃山梨の本家に行くとハエがいっぱい。
果物に止まり、お菓子に止まり、、。
でもおばあちゃん(本家の)いわく、「田舎のハエはきれいなモンダよ」全然平気でしたね。
果物に止まり、お菓子に止まり、、。
でもおばあちゃん(本家の)いわく、「田舎のハエはきれいなモンダよ」全然平気でしたね。
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Mtonosama at 2014-08-27 06:52
またまたお盆に帰省できませんでした。
帰省といっても、家もなく父も母もいませんが・・・
せめてお彼岸には帰ってお墓参りに行きたいと思います。
両親や祖母たちは何になって様子を見に来てくれたんでしょう。
どうぞトカゲやセミではありませんように。
ひかちゃんが狩った生きものの中にはいませんように。
帰省といっても、家もなく父も母もいませんが・・・
せめてお彼岸には帰ってお墓参りに行きたいと思います。
両親や祖母たちは何になって様子を見に来てくれたんでしょう。
どうぞトカゲやセミではありませんように。
ひかちゃんが狩った生きものの中にはいませんように。
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poirier_AAA at 2014-08-27 16:34
>saheiziさん、こんにちは。
確かに、蠅は田舎の方がずっと清潔(?)な気がしました。
パリの蠅はふてぶてしいくらい太っていてミツバチかと思うくらい。羽音もそりゃあ騒々しいです。そこにいくと田舎の蠅はスマートで(運動量の違いか?)、無邪気なもんです。
義両親のところも、蠅を気にしていたら何も食べられません。
今どき貴重な環境かも。
確かに、蠅は田舎の方がずっと清潔(?)な気がしました。
パリの蠅はふてぶてしいくらい太っていてミツバチかと思うくらい。羽音もそりゃあ騒々しいです。そこにいくと田舎の蠅はスマートで(運動量の違いか?)、無邪気なもんです。
義両親のところも、蠅を気にしていたら何も食べられません。
今どき貴重な環境かも。
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poirier_AAA at 2014-08-27 16:44
>Mtonosamaさん、こんにちは。
お彼岸のお墓参り、できるといいですね。
わたしもポルトガルで、今年亡くなった知り合いのお墓参りをしてきました。1年前は話せたのに、と思うと切なかったです。
ふふ、きっとご先祖様たちはひかちゃんの存在をご存知でしょう。狩りは猫の本能ですもんね。ひかちゃんの手の届かないところにお出ましだと思います。
ひかちゃん、暑いけど元気いっぱいなのね。よかった、よかった。
お彼岸のお墓参り、できるといいですね。
わたしもポルトガルで、今年亡くなった知り合いのお墓参りをしてきました。1年前は話せたのに、と思うと切なかったです。
ふふ、きっとご先祖様たちはひかちゃんの存在をご存知でしょう。狩りは猫の本能ですもんね。ひかちゃんの手の届かないところにお出ましだと思います。
ひかちゃん、暑いけど元気いっぱいなのね。よかった、よかった。
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haru_rara at 2014-08-30 23:22
こんにちは。
養老孟司さんの「『自分』の壁」の中のある場面を思い出しました。
ブータンの食堂で、飲み物にハエが入ってきた。現地の人はそれをつまんで助け出してやり、「お前のおじいさんだったかもしれないからな」と著者に笑いながら言った、と。
ブータンには、お互いがつながりあっているという仏教の教えが自然に生きているという話でした。
私は仏教徒ではないけれども、この感覚は共感できます。不思議ですが。
今年もよい夏休み、よかったですね。
日常を離れ違う環境でしばらく過すこと、とてもいいなと思います。
お盆が終れば次はお彼岸。季節はどんどん進んでしまいますねえ。
養老孟司さんの「『自分』の壁」の中のある場面を思い出しました。
ブータンの食堂で、飲み物にハエが入ってきた。現地の人はそれをつまんで助け出してやり、「お前のおじいさんだったかもしれないからな」と著者に笑いながら言った、と。
ブータンには、お互いがつながりあっているという仏教の教えが自然に生きているという話でした。
私は仏教徒ではないけれども、この感覚は共感できます。不思議ですが。
今年もよい夏休み、よかったですね。
日常を離れ違う環境でしばらく過すこと、とてもいいなと思います。
お盆が終れば次はお彼岸。季節はどんどん進んでしまいますねえ。
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poirier_AAA at 2014-09-01 17:19
>haru_raraさん、こんにちは。
わたしもそうですね。文化的な習慣として「命を大事にする、お互いに繋がり合っている」という感覚を持っているんだと思います。キリスト教文化で育った夫に「虫に魂が宿る」という考え方がどこまで通じるだろうと疑問に思うことはありますが、理屈を振り回すこともなく、そういうことならとすんなり受け入れてくれるので、とてもありがたいです。
気分転換って大事ですよね。日頃忙しくしている人には休養は絶対必要ですし、そうでない人にとっても自分や自分の感覚を見つめ直すいいキッカケになると思います。
こちらは今日から新年度が始まります。大人も子どもも気分一新。この感じも好きなんですよ。
わたしもそうですね。文化的な習慣として「命を大事にする、お互いに繋がり合っている」という感覚を持っているんだと思います。キリスト教文化で育った夫に「虫に魂が宿る」という考え方がどこまで通じるだろうと疑問に思うことはありますが、理屈を振り回すこともなく、そういうことならとすんなり受け入れてくれるので、とてもありがたいです。
気分転換って大事ですよね。日頃忙しくしている人には休養は絶対必要ですし、そうでない人にとっても自分や自分の感覚を見つめ直すいいキッカケになると思います。
こちらは今日から新年度が始まります。大人も子どもも気分一新。この感じも好きなんですよ。