2014年 07月 08日
曇天の外出も本次第 |
今週はどうやらお天気が定まらない様子。
いつ雨が降り出してもおかしくないような曇天なので、
外遊びをお休みできるかと思いきや、
公園に玉蹴りしに行きたいと息子たちが言い張る。
雨が降りそうでも気にしない、だって本当のサッカーは雨でも試合するもん。
仕方がないので、折り畳み傘と文庫本を持って外に出た。
持って行った本は、これも図書館から借りて来た本で
若い読者のためのモーパッサン短編集。
「Histoires douces amères(甘くほろ苦い話)」
一番最初にでてきたのが「シモンのパパ」という話だった。
短い話であっという間に読めるのだけれど、
いかにもモーパッサンらしい巧さで、読み終わった後の充実感がある。
下手な短編小説なら一度にいくつでも続けて読めるかもしれないが、
巧い短編は一粒の中に旨味がぎゅうっと詰まっているので、
それを味わい尽くすために、次に取り掛かる前に必ず休みを入れる。
1時間以上公園で過ごすのに、この1作で十分足りた。
何回も頭の中で反芻して、あぁ巧いなぁと感心する。
作家にはいろんなタイプがいて、
中には壮大な物語(フィクション)を紡いでみせてくれる人もいる。
モーパッサンはそういうタイプではなくて、
誰もが見ているごくありふれた日常生活を切り取ってみせる作家だ。
ありふれたシーンが、この人の筆を通すと特別なシーンに変わる。
とにかく描き方がすごいんだ。
登場人物の様子や状況を描くことで、
その人の社会的な立場や気持ちがきちんとわかるようになっている。
例えば、「シモンのパパ」の主人公シモン少年は私生児なのだが、
私生児であるという単純にして明快な言葉は1度も出て来ない。
出て来ないのに数々の別の言葉からそれははっきりと伝わるし、
更にはその母親がどんな人で、どうシモンを育てているかも実によくわかる。
この人は、、、というのはモーパッサンのことだけれど、
どういう風に世界を眺めていたのかなぁ、と想像してみる。
俳句をやる人とやらない人とでは自然の見え方が違うだろうと思うように、
同じ現実を見ていても、モーパッサンのように切り取れる人と、
ありふれたことさ、何の興味も感じないねと通り過ぎてしまう人とでは、
世の中の見え方だって明らかにちがうのではないかな、と思ってしまう。
文字面は読み易くとも、読んで消化するのにしっかりエネルギーが要る。
モーパッサンはわたしにとっては軽く流せない作家の一人だ。
1つずつゆっくり、ぼちぼちと読み続けていきたい。
‥‥ というようなことをずっと考えていたので、
ときおり小雨のぱらつく天気ではあったけれど、
妙に晴れ晴れとしたいい心持ちで帰宅したのだった。
いつ雨が降り出してもおかしくないような曇天なので、
外遊びをお休みできるかと思いきや、
公園に玉蹴りしに行きたいと息子たちが言い張る。
雨が降りそうでも気にしない、だって本当のサッカーは雨でも試合するもん。
仕方がないので、折り畳み傘と文庫本を持って外に出た。
持って行った本は、これも図書館から借りて来た本で
若い読者のためのモーパッサン短編集。
「Histoires douces amères(甘くほろ苦い話)」
一番最初にでてきたのが「シモンのパパ」という話だった。
短い話であっという間に読めるのだけれど、
いかにもモーパッサンらしい巧さで、読み終わった後の充実感がある。
下手な短編小説なら一度にいくつでも続けて読めるかもしれないが、
巧い短編は一粒の中に旨味がぎゅうっと詰まっているので、
それを味わい尽くすために、次に取り掛かる前に必ず休みを入れる。
1時間以上公園で過ごすのに、この1作で十分足りた。
何回も頭の中で反芻して、あぁ巧いなぁと感心する。
作家にはいろんなタイプがいて、
中には壮大な物語(フィクション)を紡いでみせてくれる人もいる。
モーパッサンはそういうタイプではなくて、
誰もが見ているごくありふれた日常生活を切り取ってみせる作家だ。
ありふれたシーンが、この人の筆を通すと特別なシーンに変わる。
とにかく描き方がすごいんだ。
登場人物の様子や状況を描くことで、
その人の社会的な立場や気持ちがきちんとわかるようになっている。
例えば、「シモンのパパ」の主人公シモン少年は私生児なのだが、
私生児であるという単純にして明快な言葉は1度も出て来ない。
出て来ないのに数々の別の言葉からそれははっきりと伝わるし、
更にはその母親がどんな人で、どうシモンを育てているかも実によくわかる。
この人は、、、というのはモーパッサンのことだけれど、
どういう風に世界を眺めていたのかなぁ、と想像してみる。
俳句をやる人とやらない人とでは自然の見え方が違うだろうと思うように、
同じ現実を見ていても、モーパッサンのように切り取れる人と、
ありふれたことさ、何の興味も感じないねと通り過ぎてしまう人とでは、
世の中の見え方だって明らかにちがうのではないかな、と思ってしまう。
文字面は読み易くとも、読んで消化するのにしっかりエネルギーが要る。
モーパッサンはわたしにとっては軽く流せない作家の一人だ。
1つずつゆっくり、ぼちぼちと読み続けていきたい。
‥‥ というようなことをずっと考えていたので、
ときおり小雨のぱらつく天気ではあったけれど、
妙に晴れ晴れとしたいい心持ちで帰宅したのだった。
by poirier_AAA
| 2014-07-08 22:08
| フランス語を読む
|
Comments(6)
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by
saheizi-inokori at 2014-07-08 22:34
モーパッサンのように世界を見られない。
あなたのように小説を味わえない。でも明日も本を読むのです。
あなたのように小説を味わえない。でも明日も本を読むのです。
0
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poirier_AAA at 2014-07-10 00:32
>saheiziさん、こんにちは。
佐平次さんのように重量級の本を読み続ける方が難しそうですよ。。。
政治をやる人も本を読むことがあるだろうか、と思います。
想像力のかけらもなさそうだと感じることばかりで。
佐平次さんのように重量級の本を読み続ける方が難しそうですよ。。。
政治をやる人も本を読むことがあるだろうか、と思います。
想像力のかけらもなさそうだと感じることばかりで。
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poirier_AAA at 2014-07-10 00:44
>とのさん、こんにちは。
わたしも高校生の頃に「脂肪の塊」を1回読んで、ふーんと思っただけでした。それが、今はいちいち身にしみるんですよ。
それだけの時間を過ごして来たということなんだなぁと、自分でもちょっと不思議な感じです。
モーパッサンは43歳で亡くなりました。それも最後の何年かは作品が書けるような状態ではなく、主な作品は(長編も短編も)30代のうちに書いているのです。30代でこれだけのものをこれだけの量書いたのかと考えると、途方もない才能を持った人だったのだなぁとあらためて思います。
わたしも高校生の頃に「脂肪の塊」を1回読んで、ふーんと思っただけでした。それが、今はいちいち身にしみるんですよ。
それだけの時間を過ごして来たということなんだなぁと、自分でもちょっと不思議な感じです。
モーパッサンは43歳で亡くなりました。それも最後の何年かは作品が書けるような状態ではなく、主な作品は(長編も短編も)30代のうちに書いているのです。30代でこれだけのものをこれだけの量書いたのかと考えると、途方もない才能を持った人だったのだなぁとあらためて思います。
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yumiyane at 2014-07-10 10:27
今は編み物が優先で、なかなか長編を読めないでいます。短編は何を伝えたいのか分かりにくい時があってあまり好きではないのですが、特に翻訳本は、今日の記事で短編の読み方が分かりました。
先日は古い記事にコメントしましたのにお返事有難うございました。
スマホ見てて、梨の木さんのページが残ってて、新しい記事、をクリックしたのですが、すでに3週間くらい前の記事でした。冷汗
先日は古い記事にコメントしましたのにお返事有難うございました。
スマホ見てて、梨の木さんのページが残ってて、新しい記事、をクリックしたのですが、すでに3週間くらい前の記事でした。冷汗
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poirier_AAA at 2014-07-10 20:45
>yumiyaneさん、こんにちは。
わたしと逆ですね。わたしは糸はたくさん買ってあるのに、本ばっかり読んでいてなかなか編み始められません。もう2年越しの(ポルトガルで買った)レース糸もあるんですよ。あれ、いつかどうにかしなくっちゃと思っているんですけど。。。。
こちらこそ、yumiyaneさんのところでは読み逃げばかりしていて申し訳ない気持ちです。そうなの、そうなの、と思うことがたくさんあるんですけど、そうなの、そうなの、とただ書くだけでは芸がないよなぁと思ったりして。
それにしても、政治の世界がどんどんおかしなことになっていて、気掛かりです。どうなってしまうんでしょうか?
わたしと逆ですね。わたしは糸はたくさん買ってあるのに、本ばっかり読んでいてなかなか編み始められません。もう2年越しの(ポルトガルで買った)レース糸もあるんですよ。あれ、いつかどうにかしなくっちゃと思っているんですけど。。。。
こちらこそ、yumiyaneさんのところでは読み逃げばかりしていて申し訳ない気持ちです。そうなの、そうなの、と思うことがたくさんあるんですけど、そうなの、そうなの、とただ書くだけでは芸がないよなぁと思ったりして。
それにしても、政治の世界がどんどんおかしなことになっていて、気掛かりです。どうなってしまうんでしょうか?