2013年 12月 16日
義父のこと |
日曜日我が家に食事に来た義両親情報によると、
あの可愛かった小ジョアオンが死んでしまったとのこと。
義両親が2週間ほど家を留守にした間ひつじの世話を頼んだ人が、
どうやら間違って子羊に小動物用のえさを与えてしまったらしい。
子羊と言っても体の大きさや必要な栄養量は小動物とは全然違うわけで、
義両親が家に戻った時、小ジョアオンは空腹で立てないくらい弱っていたという。
慌てた義父がなんとか食べさせようと懸命に努力したものの、
結局食欲が回復しないまま、次第に弱っていって力つきてしまった。
息子たちも「ジョアオン、ジョアオン」と呼んで可愛がっていたので、
義両親は切なくてずっとこの話を切り出せなかったらしい。
小ジョアオンの話をしながら、義父の目が赤くなっていた。
よく植物を育てるのが上手い人を「緑の手を持っている」というけれど、
義父には生き物すべてを慈しむまなざしと手が備わっているように感じる。
宗教でも道徳でも社会通念でもなく、そんな理屈とは無縁に
その生き物を一番良い形でまっすぐにのばそうとする手、
生きてそこにあるという理由だけで愛してくれるまなざしだ。
そんな義父の前に出ると、
羊は素直に言うことを聞くし、
気難しい豚も背中を掻いてと体をすりつけてくるし、
野良猫も素直によってくる。
丹誠してもらった果樹はたわわに実を付ける。
そして「まわりと違う」ことを喉にささった小骨のように感じ続けている
異国から来た義娘も、すんなり心を開くことができる。
わたし自身は実に狭量な人間で、
人の些細な言葉や反応に時として過剰に反応してしまうし、
ひとたび不信感を抱いた相手の前ではぴしゃっと心を閉じてしまうことが多い。
そんな者の目から見ると、
義父のような人はほとんど地上の天使みたいに見えるのである。
キリスト教の「天使」ではなくて、超人間的な存在としての「天使」。
宗教のように、信仰するしないで人を区別したりせず、
ただただ、生きて在ることを全面的に肯定して受け入れてくれる。
この世には確かに光さす方を向こうとする力があるのだ、と信じたくなる。
で、そんな地上の天使みたいな義父には猪突猛進のところがあって、
あんまりいろいろ考えないまま行動を起こしてしまう癖がある。
去年は家具を移動しようとして上に乗っていたテレビを落として壊したし、
補聴器に汗は禁物なのに、つけたまま大汗かいて農作業して器械を壊した。何回も。
今年の夏は自動開閉の門を修繕しようとしてレールに指を挟んで大怪我をしたし、
最近は眼鏡を調整しようとビスを緩めて、そのままなくしてしまった。
またやったの〜?
と、家族にウンザリした声を上げさせる名人なのである。
でも、憎めない。
後光が射すような素晴らしい長所とともに、笑っちゃうような欠点もある。
そういうところが実に人間くさくて、
規格品っぽくない健康な感じがして、わたしは大好きなのだ。
いつまでも元気でいてほしい義父なのである。
あの可愛かった小ジョアオンが死んでしまったとのこと。
義両親が2週間ほど家を留守にした間ひつじの世話を頼んだ人が、
どうやら間違って子羊に小動物用のえさを与えてしまったらしい。
子羊と言っても体の大きさや必要な栄養量は小動物とは全然違うわけで、
義両親が家に戻った時、小ジョアオンは空腹で立てないくらい弱っていたという。
慌てた義父がなんとか食べさせようと懸命に努力したものの、
結局食欲が回復しないまま、次第に弱っていって力つきてしまった。
息子たちも「ジョアオン、ジョアオン」と呼んで可愛がっていたので、
義両親は切なくてずっとこの話を切り出せなかったらしい。
小ジョアオンの話をしながら、義父の目が赤くなっていた。
よく植物を育てるのが上手い人を「緑の手を持っている」というけれど、
義父には生き物すべてを慈しむまなざしと手が備わっているように感じる。
宗教でも道徳でも社会通念でもなく、そんな理屈とは無縁に
その生き物を一番良い形でまっすぐにのばそうとする手、
生きてそこにあるという理由だけで愛してくれるまなざしだ。
そんな義父の前に出ると、
羊は素直に言うことを聞くし、
気難しい豚も背中を掻いてと体をすりつけてくるし、
野良猫も素直によってくる。
丹誠してもらった果樹はたわわに実を付ける。
そして「まわりと違う」ことを喉にささった小骨のように感じ続けている
異国から来た義娘も、すんなり心を開くことができる。
わたし自身は実に狭量な人間で、
人の些細な言葉や反応に時として過剰に反応してしまうし、
ひとたび不信感を抱いた相手の前ではぴしゃっと心を閉じてしまうことが多い。
そんな者の目から見ると、
義父のような人はほとんど地上の天使みたいに見えるのである。
キリスト教の「天使」ではなくて、超人間的な存在としての「天使」。
宗教のように、信仰するしないで人を区別したりせず、
ただただ、生きて在ることを全面的に肯定して受け入れてくれる。
この世には確かに光さす方を向こうとする力があるのだ、と信じたくなる。
で、そんな地上の天使みたいな義父には猪突猛進のところがあって、
あんまりいろいろ考えないまま行動を起こしてしまう癖がある。
去年は家具を移動しようとして上に乗っていたテレビを落として壊したし、
補聴器に汗は禁物なのに、つけたまま大汗かいて農作業して器械を壊した。何回も。
今年の夏は自動開閉の門を修繕しようとしてレールに指を挟んで大怪我をしたし、
最近は眼鏡を調整しようとビスを緩めて、そのままなくしてしまった。
またやったの〜?
と、家族にウンザリした声を上げさせる名人なのである。
でも、憎めない。
後光が射すような素晴らしい長所とともに、笑っちゃうような欠点もある。
そういうところが実に人間くさくて、
規格品っぽくない健康な感じがして、わたしは大好きなのだ。
いつまでも元気でいてほしい義父なのである。
by poirier_AAA
| 2013-12-16 22:46
| この人あり
|
Comments(4)
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by
Mtonosama at 2013-12-17 06:58
子羊ジョアオン可哀そうでしたね。
それにしても素敵なお舅さんですね。
私も今姉妹喧嘩が嵩じて、妹に完全に心を閉ざしている状態。
そんな優しいおじいさんに「あんじゃあないよ」(ひいおばあちゃ
んがよく言ってました。多分、「なんてことないよ」って意味だと
思います)と言ってほしい。
それにしても素敵なお舅さんですね。
私も今姉妹喧嘩が嵩じて、妹に完全に心を閉ざしている状態。
そんな優しいおじいさんに「あんじゃあないよ」(ひいおばあちゃ
んがよく言ってました。多分、「なんてことないよ」って意味だと
思います)と言ってほしい。
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saheizi-inokori at 2013-12-17 09:54
ほんとに天使だ、あわてんぼの天使!お酒は飲むの?愉快な酒だろうなあ。
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poirier_AAA at 2013-12-17 17:25
>mtonosamaさん、こんにちは。
心優しい人ですが、良くないことをすると「それはいけない」とぴしっと言いますね。動物も人も、厳しく優しくされているうちに義父に全幅の信頼を寄せるようになるという感じです。
身内のすれ違いはキツいですね。わたしもこちらに来てから電話で父親が口にした言葉にひどく傷ついたことがあって、ずいぶん辛い思いをしました。身内同士だと、どこかでお互いに期待し過ぎてしまうのかもしれません。うまくやりたいと思わないわけではないのに。義父とはお互い他人として距離を保ってつきあっていられるゆえに、これだけ心を寄せられるのかもしれないとも思います。とのさん姉妹に、いつか心が和らぐ日が来ますように。
心優しい人ですが、良くないことをすると「それはいけない」とぴしっと言いますね。動物も人も、厳しく優しくされているうちに義父に全幅の信頼を寄せるようになるという感じです。
身内のすれ違いはキツいですね。わたしもこちらに来てから電話で父親が口にした言葉にひどく傷ついたことがあって、ずいぶん辛い思いをしました。身内同士だと、どこかでお互いに期待し過ぎてしまうのかもしれません。うまくやりたいと思わないわけではないのに。義父とはお互い他人として距離を保ってつきあっていられるゆえに、これだけ心を寄せられるのかもしれないとも思います。とのさん姉妹に、いつか心が和らぐ日が来ますように。
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by
poirier_AAA at 2013-12-17 17:29
>saheiziさん、こんにちは。
お酒、飲みます。食卓で飲む液体はお酒かコーヒーのどちらかしかなく、水という選択肢はない人なのです。そのコーヒーにもリキュールを垂らすのが好きですし。
植物のことや土地のことにものすごく詳しいので、いろんな話を聞かせてもらえて、楽しいお酒ですよ。
お酒、飲みます。食卓で飲む液体はお酒かコーヒーのどちらかしかなく、水という選択肢はない人なのです。そのコーヒーにもリキュールを垂らすのが好きですし。
植物のことや土地のことにものすごく詳しいので、いろんな話を聞かせてもらえて、楽しいお酒ですよ。