2012年 05月 16日
ごはん担当 |
美味しいものを食べるのはいつも嬉しいものだけれど、ではその美味しいものを自宅て再現してみようと思うかというと、そこまでの欲はない。自分で作って食べるものはそこそこ美味しければいいよと、はっきり割り切って考えていると思う。美味しさを追求して日々研究に励むような情熱は、ない。もう言い切っちゃう。
ごはん担当者がこんなで、家族にとっては不運だったと思う。
でも、無理して探すならいいところももある。ギョッとするような組み合わせのキテレツ料理が供され、無理してでも喜んで食べないと料理人の機嫌を損ねるとか、究極の味を追求した料理人が納得するまで毎日同じメニューが続くとか、そういうことは少なくともないわけだから。
とくに、昨年の3月以来、料理にかける意欲はガタガタと落ちた。
もう食べるものなんてどうだっていいじゃないという気持ちでいた。息子や夫が大好きなものはわかっているから、それを中心にメニューを組めばラクチン。買い物も料理も、いつもほぼ決まったパターンで済む。
どんなものを作っても、1ヶ月に3回同じメニューが食卓に上っても、夫はいつも美味しいと食べてくれる。子どもが文句を言いそうになるたびに「こんなに美味しいのに。食べてごらん」と促す。そういうところは、夫は本当に育ちがいいのだ。
日本への旅行に前後して、冷蔵庫内の整理だったり買い物が間に合わなかったりで、ありあわせの食材でメニューをひねり出す日がしばらく続いた。名前の付けようのない「とりあえずの料理」という感じがして、料理人としてはいささか申し訳ない気持ちだった。子どもにははっきりと言われた。今日はこれだけ?美味しいよ、でも明日はいつもみたいに作ってね。
ところが、その「とりあえず料理」を夫は口を極めて褒めてくれた。美味しいよ。キミがこうやっていろいろな料理を試そうとするのが、すごく嬉しい。
そんなものでしょうか?
自分でも適当すぎるよねと思っているメニューをこうして大袈裟に褒められるのは、どうにも居心地が悪い。で、その居心地の悪さを感じながら鈍いわたしもようやくわかったのであった。夫、きっと同じようなメニューが続いてつまらなかったのだ。でも、それを言ったら悪いと思って我慢していたんだ。
思い返せば4年前、夫がコレステロールの高さを医者に指摘されたのをキッカケに、3ヶ月間工夫に工夫を重ねてダイエット・メニューを考えて料理に情熱を傾け、見事に正常値に戻したことがあった。(医者には「教科書に載るような素晴らしい成果です」と褒められて、鼻高々)あの時は、こってり度合いこそ限りなく抑えたけれど、メニュー的にはそりゃあ豪華な毎日だったのだ。夫の頭の中には、あの時の「今日は何かな?」というワクワク感が今でも残っているのだと思う。
あるいはまた、あれ以来頑張る気をすっかりなくした妻の変化を、不安に眺めていたのかもしれない。
なるほど。
わたしが一人で悶々としている間に、家族もいろいろ思うところがあったのだ。
そんなことにようやく気がついて、さすがのわたしもすっかり重くなった腰を上げる気になった。この1年、お客が来るとき以外は開きもしなかった料理本を久しぶりに眺めて想像をふくらませ、いつもなら買わないような食材にも手を伸ばしてみる。
あれから状況は何も変わらないし、ひょっとしたら悪くなっているのかもしれない。
でも、一度日本に行ったことで自分の中の何かが吹っ切れたような気もする。
忘れるのじゃない。放り出すのでもない。
でも、自分と家族の生活にもきちんと目を向けるべし。
どれ、我が家の食卓にも新作キテレツ料理を並べてみましょうかね。
ごはん担当者がこんなで、家族にとっては不運だったと思う。
でも、無理して探すならいいところももある。ギョッとするような組み合わせのキテレツ料理が供され、無理してでも喜んで食べないと料理人の機嫌を損ねるとか、究極の味を追求した料理人が納得するまで毎日同じメニューが続くとか、そういうことは少なくともないわけだから。
とくに、昨年の3月以来、料理にかける意欲はガタガタと落ちた。
もう食べるものなんてどうだっていいじゃないという気持ちでいた。息子や夫が大好きなものはわかっているから、それを中心にメニューを組めばラクチン。買い物も料理も、いつもほぼ決まったパターンで済む。
どんなものを作っても、1ヶ月に3回同じメニューが食卓に上っても、夫はいつも美味しいと食べてくれる。子どもが文句を言いそうになるたびに「こんなに美味しいのに。食べてごらん」と促す。そういうところは、夫は本当に育ちがいいのだ。
日本への旅行に前後して、冷蔵庫内の整理だったり買い物が間に合わなかったりで、ありあわせの食材でメニューをひねり出す日がしばらく続いた。名前の付けようのない「とりあえずの料理」という感じがして、料理人としてはいささか申し訳ない気持ちだった。子どもにははっきりと言われた。今日はこれだけ?美味しいよ、でも明日はいつもみたいに作ってね。
ところが、その「とりあえず料理」を夫は口を極めて褒めてくれた。美味しいよ。キミがこうやっていろいろな料理を試そうとするのが、すごく嬉しい。
そんなものでしょうか?
自分でも適当すぎるよねと思っているメニューをこうして大袈裟に褒められるのは、どうにも居心地が悪い。で、その居心地の悪さを感じながら鈍いわたしもようやくわかったのであった。夫、きっと同じようなメニューが続いてつまらなかったのだ。でも、それを言ったら悪いと思って我慢していたんだ。
思い返せば4年前、夫がコレステロールの高さを医者に指摘されたのをキッカケに、3ヶ月間工夫に工夫を重ねてダイエット・メニューを考えて料理に情熱を傾け、見事に正常値に戻したことがあった。(医者には「教科書に載るような素晴らしい成果です」と褒められて、鼻高々)あの時は、こってり度合いこそ限りなく抑えたけれど、メニュー的にはそりゃあ豪華な毎日だったのだ。夫の頭の中には、あの時の「今日は何かな?」というワクワク感が今でも残っているのだと思う。
あるいはまた、あれ以来頑張る気をすっかりなくした妻の変化を、不安に眺めていたのかもしれない。
なるほど。
わたしが一人で悶々としている間に、家族もいろいろ思うところがあったのだ。
そんなことにようやく気がついて、さすがのわたしもすっかり重くなった腰を上げる気になった。この1年、お客が来るとき以外は開きもしなかった料理本を久しぶりに眺めて想像をふくらませ、いつもなら買わないような食材にも手を伸ばしてみる。
あれから状況は何も変わらないし、ひょっとしたら悪くなっているのかもしれない。
でも、一度日本に行ったことで自分の中の何かが吹っ切れたような気もする。
忘れるのじゃない。放り出すのでもない。
でも、自分と家族の生活にもきちんと目を向けるべし。
どれ、我が家の食卓にも新作キテレツ料理を並べてみましょうかね。
by poirier_AAA
| 2012-05-16 19:33
| 日々の断片
|
Comments(6)
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Mtonosama at 2012-05-17 06:47
いいですね。
作ったものを「おいしい、おいしい」と食べてくださるご家族。
「頭が悪いから、こんなまずいものを作るんだ」とまで言われて
いつの頃からか、料理は自分自身だけのために作るものに。
だって、まずくないんですもん。
日本人夫は思いやりが足りないです。
あ、でも、うちだけだと思いますが。
作ったものを「おいしい、おいしい」と食べてくださるご家族。
「頭が悪いから、こんなまずいものを作るんだ」とまで言われて
いつの頃からか、料理は自分自身だけのために作るものに。
だって、まずくないんですもん。
日本人夫は思いやりが足りないです。
あ、でも、うちだけだと思いますが。
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saheizi-inokori at 2012-05-17 13:35
ごちそうさまでした^^。
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poirier_aaa at 2012-05-17 19:08
>mtonosamaさん、こんにちは。
実家の父や祖父もそうでしたよ。あれこれ好き嫌いがあるし、その日の機嫌によって言うことも違うし。祖母はとても苦労していました。一生懸命作ったものを美味しいと言ってもらえないのはつまらないし、作る意欲もなくなってしまいますよね。
だから、この点に関しては夫に頭が上がりません。褒めて伸ばすって、なにも子どもだけじゃないんだなと思いました。
実家の父や祖父もそうでしたよ。あれこれ好き嫌いがあるし、その日の機嫌によって言うことも違うし。祖母はとても苦労していました。一生懸命作ったものを美味しいと言ってもらえないのはつまらないし、作る意欲もなくなってしまいますよね。
だから、この点に関しては夫に頭が上がりません。褒めて伸ばすって、なにも子どもだけじゃないんだなと思いました。
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poirier_aaa at 2012-05-17 19:11
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coco
at 2012-05-20 14:40
x
相変わらず夫ちゃんは優しい思いやりのある人だねぇ~。
傍目からホカホカと愛情を感じるよ♪
ウチだったら美味しいものが続けば文句は言わないけれど
そうでなかったらはっきり言うだろうなぁ・・・
で、新作料理はどんなものに挑んでるの?
傍目からホカホカと愛情を感じるよ♪
ウチだったら美味しいものが続けば文句は言わないけれど
そうでなかったらはっきり言うだろうなぁ・・・
で、新作料理はどんなものに挑んでるの?
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poirier_AAA at 2012-05-20 20:09
>cocoさん、こんにちは。
わたしがこういうことを言うとのろけに聞こえちゃうのだけれどね、他人な目で見ても優しい人だと思います。もう、この点に関しては頭が上がりません。
新作料理というよりは、いつもと違う素材、同じ食材で違った料理法という感じでヴァリエーションを広げています。魚介類のポワレのレモンソース添えも良かったよ。
わたしがこういうことを言うとのろけに聞こえちゃうのだけれどね、他人な目で見ても優しい人だと思います。もう、この点に関しては頭が上がりません。
新作料理というよりは、いつもと違う素材、同じ食材で違った料理法という感じでヴァリエーションを広げています。魚介類のポワレのレモンソース添えも良かったよ。