2012年 04月 07日
医者と薬と |
国によって医療事情は結構違う。特に日本からフランスに来た時は、あまりの感覚の違いにがーんとショックを受けた。今日は中耳炎になった息子Aを例に、フランスの医療事情についての話なぞ。
息子A、中耳炎の激痛でぎゃあぎゃあ叫んでいた水曜日の朝、慌てて耳鼻科に連絡した。普通はよほどのことでもない限り当日に予約を受け付けてもらえることなんて、ほぼ絶対に有り得ない。でも、夫が症状を力説したためか「今日は予約でいっぱいだけど、特別診てあげましょう」ということになった。
診てもらった結果、左耳だけ中耳炎だと言われて左耳用の薬の処方箋が出た。抗生物質の点耳薬と痛み止め。この処方箋の字が、ものすごく読み難い。外国人だから読めないのかと思っていたけれど、フランス人でも読めないことが多いんだそうだ。夫曰く、医者の悪筆は有名な話だよ、と。
でも、このミミズが這ったようだったりカナ釘流だったりする手書きの処方箋を薬局に持っていくと、あら不思議。薬剤師はなんの迷いもなく読んでしまう。字が汚くて薬を間違えたりしないんだろうかといつも心配してしまうけれど、ちゃんと正しい薬が出てくる。さすがプロです。
保険があるので、子どもがよく使う薬なんかはお金を一銭も払うことなく手に入る。でも、日本だったら正確に必要な分の薬を量って渡してくれるのに対して、こちらの薬は箱単位で出てくる。薬と一緒に医者の処方箋も戻ってくる。処方箋はすごく大事なのだ。なぜならここに「○○の薬は1日○回、△日間飲む」という大事な情報が書いてあるから。当然これも読み難いわけで、つまり患者は医者が書きながら説明するのを必死で覚えておくか、さもなければ薬局できちんと教えてもらうしかない。
箱単位で出るから、当然余る。余った薬はどうするかというと、解熱剤みたいなよく使う薬は家庭の常備薬として置いておいて、それ以外の勝手に使わない方がいい薬は薬局に返しにいく。使用期限の過ぎた薬も同じ。薬はゴミ箱に捨てないで全部薬局に持っていく。余分に出して残りを捨てるなんて無駄だし、第一誤飲の原因になるとわたしなどは思うけれど、これがフランス式。
とはいいながら、必ずしも薬が「余る」とは限らないのがまたフランスなり。薬剤師によっては「7日分必要なのに、この箱には4日分しか入ってないよ」という箱を1箱しか渡してくれないこともある。これは計算ができていないだけなので、ちゃんと処方箋を示して追加分を貰わないといけない。
それとは別に、わざと少なめに渡されることもある。保険がきかない薬で、ホメオパシーとかオリゴテラビーだのといった効き目がはっきりとわかるとは限らない薬、患者の好みで使ったり使わなかったりするような類いの薬だと「とりあえず1箱出しておくから。もっと続けて使いたかったらその時にいらっしゃい」と言われたりする。
さて、息子A。左耳に引き続いて右耳まで痛くなった。しかも首のリンパ腺までグリングリンに腫れて痛さで泣き叫んでいる。当然、耳鼻科に電話した。ところが今回は先生は診てくれなかった。左耳と同じことなんだから左耳に処方した薬を右耳にも使えばいいのよ。リンパ腺が腫れるのも普通の反応なので心配しなくても大丈夫、と電話で言われたそうだ(夫談)。
そのくらい言われなくたってわかります。問題は、必要な薬が両耳分には足りないってことなのよっ!この薬は処方箋がなくちゃ貰えないのよっ!というわけで、もう1回医者に電話して処方箋だけ受け取りに耳鼻科に行き、ようやく右耳の薬もゲット。息子Aもようやく少し落ち着いて来た。
中耳炎の耳垂れがなかなか止まらないって、日本語で検索すると「すぐに医者に行きなさい」という怖い説明がたくさん出てくる。でも、それで慌てて医者に連れて行ったら「あら、水が出て良かったわね」と言われた。所変われば受け取り方もこんなにちがうものなのねぇ。
そんなこんなで、医者に行くたびにいろいろと文化の違いや医療事情の不思議を目の当たりにする思いのフランス生活なのであります。
P.S. そういえばフランスでは、医者に診てもらったら帰る時に握手することが多い。初めて医者から手をさし出された時にはびっくり仰天しました。
息子A、中耳炎の激痛でぎゃあぎゃあ叫んでいた水曜日の朝、慌てて耳鼻科に連絡した。普通はよほどのことでもない限り当日に予約を受け付けてもらえることなんて、ほぼ絶対に有り得ない。でも、夫が症状を力説したためか「今日は予約でいっぱいだけど、特別診てあげましょう」ということになった。
診てもらった結果、左耳だけ中耳炎だと言われて左耳用の薬の処方箋が出た。抗生物質の点耳薬と痛み止め。この処方箋の字が、ものすごく読み難い。外国人だから読めないのかと思っていたけれど、フランス人でも読めないことが多いんだそうだ。夫曰く、医者の悪筆は有名な話だよ、と。
でも、このミミズが這ったようだったりカナ釘流だったりする手書きの処方箋を薬局に持っていくと、あら不思議。薬剤師はなんの迷いもなく読んでしまう。字が汚くて薬を間違えたりしないんだろうかといつも心配してしまうけれど、ちゃんと正しい薬が出てくる。さすがプロです。
保険があるので、子どもがよく使う薬なんかはお金を一銭も払うことなく手に入る。でも、日本だったら正確に必要な分の薬を量って渡してくれるのに対して、こちらの薬は箱単位で出てくる。薬と一緒に医者の処方箋も戻ってくる。処方箋はすごく大事なのだ。なぜならここに「○○の薬は1日○回、△日間飲む」という大事な情報が書いてあるから。当然これも読み難いわけで、つまり患者は医者が書きながら説明するのを必死で覚えておくか、さもなければ薬局できちんと教えてもらうしかない。
箱単位で出るから、当然余る。余った薬はどうするかというと、解熱剤みたいなよく使う薬は家庭の常備薬として置いておいて、それ以外の勝手に使わない方がいい薬は薬局に返しにいく。使用期限の過ぎた薬も同じ。薬はゴミ箱に捨てないで全部薬局に持っていく。余分に出して残りを捨てるなんて無駄だし、第一誤飲の原因になるとわたしなどは思うけれど、これがフランス式。
とはいいながら、必ずしも薬が「余る」とは限らないのがまたフランスなり。薬剤師によっては「7日分必要なのに、この箱には4日分しか入ってないよ」という箱を1箱しか渡してくれないこともある。これは計算ができていないだけなので、ちゃんと処方箋を示して追加分を貰わないといけない。
それとは別に、わざと少なめに渡されることもある。保険がきかない薬で、ホメオパシーとかオリゴテラビーだのといった効き目がはっきりとわかるとは限らない薬、患者の好みで使ったり使わなかったりするような類いの薬だと「とりあえず1箱出しておくから。もっと続けて使いたかったらその時にいらっしゃい」と言われたりする。
さて、息子A。左耳に引き続いて右耳まで痛くなった。しかも首のリンパ腺までグリングリンに腫れて痛さで泣き叫んでいる。当然、耳鼻科に電話した。ところが今回は先生は診てくれなかった。左耳と同じことなんだから左耳に処方した薬を右耳にも使えばいいのよ。リンパ腺が腫れるのも普通の反応なので心配しなくても大丈夫、と電話で言われたそうだ(夫談)。
そのくらい言われなくたってわかります。問題は、必要な薬が両耳分には足りないってことなのよっ!この薬は処方箋がなくちゃ貰えないのよっ!というわけで、もう1回医者に電話して処方箋だけ受け取りに耳鼻科に行き、ようやく右耳の薬もゲット。息子Aもようやく少し落ち着いて来た。
中耳炎の耳垂れがなかなか止まらないって、日本語で検索すると「すぐに医者に行きなさい」という怖い説明がたくさん出てくる。でも、それで慌てて医者に連れて行ったら「あら、水が出て良かったわね」と言われた。所変われば受け取り方もこんなにちがうものなのねぇ。
そんなこんなで、医者に行くたびにいろいろと文化の違いや医療事情の不思議を目の当たりにする思いのフランス生活なのであります。
P.S. そういえばフランスでは、医者に診てもらったら帰る時に握手することが多い。初めて医者から手をさし出された時にはびっくり仰天しました。
by poirier_AAA
| 2012-04-07 16:06
| 子どもと暮らす
|
Comments(8)
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Mtonosama at 2012-04-08 06:54
医者に行くのも戦いですね。
ああ、それにしても長男の中耳炎受難時代を思い出します。
子どもも赤ん坊、こちらも母親初心者。
引っ越したばかりで、どこの医者に行けばいいかわからず、
なんとか評判を聞いて出向いた医者は保険がきかない・・・・・
あげく入院までしたので、お金がザラザラと音を立てて出ていった
恐ろしい時期でした。
そうまでしたのに、その後何度も再発したんですから。プンプン。
くれぐれもお大事に。
ああ、それにしても長男の中耳炎受難時代を思い出します。
子どもも赤ん坊、こちらも母親初心者。
引っ越したばかりで、どこの医者に行けばいいかわからず、
なんとか評判を聞いて出向いた医者は保険がきかない・・・・・
あげく入院までしたので、お金がザラザラと音を立てて出ていった
恐ろしい時期でした。
そうまでしたのに、その後何度も再発したんですから。プンプン。
くれぐれもお大事に。
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stanislowski
at 2012-04-08 14:39
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両耳から耳垂れなんてものすごく痛いのに、A君その後いかがですか?緊急の時なのに診てくれないって・・・そんなぁ。ドイツと随分違いますね。我が家はドイツの健康保険に加入していますが、緊急時は、
1.休日の当番医に電話で予約して診てもらう。2.大学病院の急患受付に直接行って診てもらう。
冬の時期は(こども)毎週のように(我が家の場合2)に行ってました。大学病院でも当直は頻繁に変わるのに、うちの娘はドクターに顔を覚えられていました。
当日でも、主治医の小児科医に電話して、診療時間内であれば緊急枠に組み込んでもらえますから(待ち時間は長いですが)、フランスとの違いはちょっと驚きました。
どうぞお大事にね。そしてよいイースター休暇をお過ごしくださいませ。
1.休日の当番医に電話で予約して診てもらう。2.大学病院の急患受付に直接行って診てもらう。
冬の時期は(こども)毎週のように(我が家の場合2)に行ってました。大学病院でも当直は頻繁に変わるのに、うちの娘はドクターに顔を覚えられていました。
当日でも、主治医の小児科医に電話して、診療時間内であれば緊急枠に組み込んでもらえますから(待ち時間は長いですが)、フランスとの違いはちょっと驚きました。
どうぞお大事にね。そしてよいイースター休暇をお過ごしくださいませ。
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coco
at 2012-04-08 19:08
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ふふふ、私も依然フランスで具合が悪くなったときに
無理やりコネを使って予約をねじ込んでもらったという
経験あり。。。待てるような病気なら病院になんか行かない
よーとちょっとびっくりしました。。
そして同じく処方箋がぐっちゃぐちゃ・・私の場合は
薬局の人も理解不能で先生に確認の電話してたwww
無理やりコネを使って予約をねじ込んでもらったという
経験あり。。。待てるような病気なら病院になんか行かない
よーとちょっとびっくりしました。。
そして同じく処方箋がぐっちゃぐちゃ・・私の場合は
薬局の人も理解不能で先生に確認の電話してたwww
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kanafr at 2012-04-09 05:23
バタバタしていて、伺う事ができない間に大変なことが起きていたんですね。
こういう時は、お近くに大きな総合病院があればそこの救急に飛び込むという方法があります。そうすればすぐに見てもらえますよ。
もう使わない薬は、期限切れの物も含めアフリカなどに送ると聞いた事があります。薬がない国では、貴重な薬になるそうです。期限切れでもいいのかって言うのが、凄く疑問なんですけどね。
こういう時は、お近くに大きな総合病院があればそこの救急に飛び込むという方法があります。そうすればすぐに見てもらえますよ。
もう使わない薬は、期限切れの物も含めアフリカなどに送ると聞いた事があります。薬がない国では、貴重な薬になるそうです。期限切れでもいいのかって言うのが、凄く疑問なんですけどね。
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poirier_AAA at 2012-04-09 17:15
>mtonosamaさん、こんにちは。
お返事が遅くなってしまって失礼しました。
子どもが復活したので、招待されていた復活祭の宴会に出かけて食い倒れしておりました。
お金がざらざら、、、その感じ、すごくよくわかります。健康でも病気でも、子どもはいつも待ったなしですですよね。
中耳炎は、薬ではなく体の成長によって自然に治ると言う人もいます。一度つきあいが始まったら3年くらいは覚悟しないと駄目らしいです。我が家は3年目に達したので、そろそろ卒業して欲しいなぁと思っていたところでした。最後に近くなって来たので、中耳炎も出血大サービスに打って出たのかなぁなどと、今となると思ったりしますよ。
お返事が遅くなってしまって失礼しました。
子どもが復活したので、招待されていた復活祭の宴会に出かけて食い倒れしておりました。
お金がざらざら、、、その感じ、すごくよくわかります。健康でも病気でも、子どもはいつも待ったなしですですよね。
中耳炎は、薬ではなく体の成長によって自然に治ると言う人もいます。一度つきあいが始まったら3年くらいは覚悟しないと駄目らしいです。我が家は3年目に達したので、そろそろ卒業して欲しいなぁと思っていたところでした。最後に近くなって来たので、中耳炎も出血大サービスに打って出たのかなぁなどと、今となると思ったりしますよ。
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poirier_AAA at 2012-04-09 17:54
>stanislowskiさん、こんにちは。
お返事が遅くなってしまって失礼しました。
ずいぶん脅かしてしまいましたけれど、結果的には問題なくて、おかげさまで息子も順調に回復に向かっています。
もちろんフランスにも救急は存在しますし、いざとなれば出張ドクターを頼むこともできます。そういうシステムがあることは知っていましたが、実を言うとそこまで緊急ではないと感じたので利用しませんでした。本当に危ないと思ったら、誰が何と言おうと迷わず駆け込んでいたと思います。
うちの子どもたちはちょこちょこ風邪はひくものの基本的には健康なので、少しくらい具合が悪くても熱が上がっても、体力さえ回復すれば回復するはずとわたしは思っているのです。だから多少のことでは医者にも連れて行きません。でも、今回ばかりは39度台が何日も続いたため、症状が治まるのと体力が落ち始めるのとどちらが先だろうかと毎日ジリジリする思いで観察していました。点耳薬がなかなか効き始めなくて焦りましたよ。
幼稚園くらいまでは子どもって病院の常連さんですよね。でも、大きくなるに従ってどんどんと丈夫になってくるはず。あともう少しの辛抱だ!ですよ。
お返事が遅くなってしまって失礼しました。
ずいぶん脅かしてしまいましたけれど、結果的には問題なくて、おかげさまで息子も順調に回復に向かっています。
もちろんフランスにも救急は存在しますし、いざとなれば出張ドクターを頼むこともできます。そういうシステムがあることは知っていましたが、実を言うとそこまで緊急ではないと感じたので利用しませんでした。本当に危ないと思ったら、誰が何と言おうと迷わず駆け込んでいたと思います。
うちの子どもたちはちょこちょこ風邪はひくものの基本的には健康なので、少しくらい具合が悪くても熱が上がっても、体力さえ回復すれば回復するはずとわたしは思っているのです。だから多少のことでは医者にも連れて行きません。でも、今回ばかりは39度台が何日も続いたため、症状が治まるのと体力が落ち始めるのとどちらが先だろうかと毎日ジリジリする思いで観察していました。点耳薬がなかなか効き始めなくて焦りましたよ。
幼稚園くらいまでは子どもって病院の常連さんですよね。でも、大きくなるに従ってどんどんと丈夫になってくるはず。あともう少しの辛抱だ!ですよ。
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poirier_AAA at 2012-04-09 18:10
>cocoさん、
悪筆のプロの薬剤師まで読めないほどの字だなんて、その先生の字は相当凄かったのですねぇ。
病気って別に計画してなるわけじゃないですものね。一番不安な時にすぐ診てもらえる、それだけで精神的にはずいぶん救われると思います。フランスでは待合室で過ごす時間が短いのが助かるけれど、具合が悪い時に苦労せずにすぐ診てもらえるシステムが整ったら良いですよね。
悪筆のプロの薬剤師まで読めないほどの字だなんて、その先生の字は相当凄かったのですねぇ。
病気って別に計画してなるわけじゃないですものね。一番不安な時にすぐ診てもらえる、それだけで精神的にはずいぶん救われると思います。フランスでは待合室で過ごす時間が短いのが助かるけれど、具合が悪い時に苦労せずにすぐ診てもらえるシステムが整ったら良いですよね。
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poirier_AAA at 2012-04-09 18:20
>kanafrさん、
わたしが聞いた救急の話は、大急ぎで行ったのに4時間も5時間も待たされたとか、救急は救急にあらず、1日待ってかかりつけ医に頼み込む方がマシとかいう悪い話ばかりなんですが、これは病院によっても違うのでしょうか?
薬局に返した薬がそんなふうにお役に立っているとは知りませんでした。でも、期限切れの薬ってどうなんでしょうねぇ?そういうものでもないよりはマシなのでしょうか。先頃、日本の汚染食品を途上国の食料支援に回すという話を聞いたのですが、なんだか似たような話だなぁと思ってしまいました。
わたしが聞いた救急の話は、大急ぎで行ったのに4時間も5時間も待たされたとか、救急は救急にあらず、1日待ってかかりつけ医に頼み込む方がマシとかいう悪い話ばかりなんですが、これは病院によっても違うのでしょうか?
薬局に返した薬がそんなふうにお役に立っているとは知りませんでした。でも、期限切れの薬ってどうなんでしょうねぇ?そういうものでもないよりはマシなのでしょうか。先頃、日本の汚染食品を途上国の食料支援に回すという話を聞いたのですが、なんだか似たような話だなぁと思ってしまいました。