2011年 10月 09日
ドン・カルロ |
今日のパリはとても寒かった。先日までの気持ち良い日和が嘘のよう。多分最高気温は15℃にも満たなかったでしょう。でも、この季節としては多分このくらいが普通なんだと思います。最近の狂った気温ですっかり甘やかされた体が、慣れない気温にひぃひぃと弱音を吐いているだけですね。
そんな秋らしい涼しい夜、ソファに座って膝まわりをすっぽりと膝掛けで包み、さてさて今日はなにをやっているかなぁとテレビをつけてみましたら、オペラでした。2008年のスカラ座公演で「ドン・カルロ」。
最近のオペラは演出家が趣向を凝らしているものが多くて、衣装も舞台設定も変わったものを見せられることが多いのですが、これは違いました。舞台装置はシンプルでしたが、衣装は時代設定に忠実で、裾を引くたっぷりしたドレスに美しいレースの襟飾りが付いたような、非常に贅沢な衣装に身を包んでいます。
わたしは、多分オーソドックスなものが好きなのです。だからこういう落ち着いた演出をしてもらえると、安心して音楽に身をまかせることができます。それが一番気持ちがいい。何よりもいいのは、演出者の意図をあれこれ考えなくてもいいことです。演出が勝り過ぎて音楽が霞んでしまうようなオペラはイヤなのです。
で、このスカラ座の「ドン・カルロ」は良かったです。
スッキリとした舞台も良かった。
美しい衣装でも十分目を楽しませてもらった。
歌い手もかなり頑張っていて聞き応えがあった。
それほど頻繁に演じられる曲ではないので、偶然でも観ることができてラッキーだったと思いました。
ヴェルディのオペラは、こう言ってはなんですが話自体は単純なことが多いです。例えば有名な「椿姫」も、あらすじなら1行くらいで終わってしまいます。ヒロインがいてヒーローがいて、でも恋は上手く行かなくて‥‥。
「ドン・カルロ」も、もちろんお約束の悲恋です。でも、そればかりではないところが、この作品の面白さです。悲恋が1つではないのです。王子が恋をした相手の王女は、王子の父である国王の妃になってしまう。国王は自分の妻の心が自分にないことを知って苦しみます。父親の妻になった女性を諦められない王子も苦しい。そして、その王子を恋い慕う別な娘もいます。そこに国の政治が絡んできます。更に宗教も介入してきます。王子の親友も関わってきます。事態は複雑なのです。どれもこれもが同じような重さで絡んで来る‥‥つまり、主役級の歌手が何人も必要なのです。
今回の顔ぶれはこうです。
ドン・カルロ(T)…スチュアート・ニール
エリザベッタ(S)…フィオレンツァ・チェドリンス
エボリ公女(MS)…ドローラ・ザージック
ロドリーゴ(Br)…ダリボール・イェニス
フィリッポ二世(B)…フェルッチョ・フルラネット
宗教裁判長(B)…アナトーリ・コチェルガ
指揮:リッカルド・シャイー
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
歌手のバランスがとれていて良かったと思います。でも、見終わった後で、やっぱりギャウロフが歌うフィリポ2世を聴きたくなりました。
今回フィリポ2世を歌っていたフルラネットが宗教裁判長役で、ギャウロフがフィリポ2世を歌っているものを見つけました。声の違い、わかるでしょうか。
これがフィリポ2世のアリア。切々とした男の歌なのです。
そういえば、最近パヴァロッティの再来と騒がれているテノール歌手がいるんだそうです。ヴィットリオ・グリゴロというその歌手の若々しい声を、このドン・カルロ役で聴いてみたかったなぁなどと夢想してしまいました。若さと、それゆえの危うさを秘めた声がぴったりの役ですからね。
これは「リゴレット」からです。
これは「椿姫」。
自分の日常生活の時間の流れ方とはまったく違うリズムに、ときどき身をゆだねてみるのも良いものであります。
そんな秋らしい涼しい夜、ソファに座って膝まわりをすっぽりと膝掛けで包み、さてさて今日はなにをやっているかなぁとテレビをつけてみましたら、オペラでした。2008年のスカラ座公演で「ドン・カルロ」。
最近のオペラは演出家が趣向を凝らしているものが多くて、衣装も舞台設定も変わったものを見せられることが多いのですが、これは違いました。舞台装置はシンプルでしたが、衣装は時代設定に忠実で、裾を引くたっぷりしたドレスに美しいレースの襟飾りが付いたような、非常に贅沢な衣装に身を包んでいます。
わたしは、多分オーソドックスなものが好きなのです。だからこういう落ち着いた演出をしてもらえると、安心して音楽に身をまかせることができます。それが一番気持ちがいい。何よりもいいのは、演出者の意図をあれこれ考えなくてもいいことです。演出が勝り過ぎて音楽が霞んでしまうようなオペラはイヤなのです。
で、このスカラ座の「ドン・カルロ」は良かったです。
スッキリとした舞台も良かった。
美しい衣装でも十分目を楽しませてもらった。
歌い手もかなり頑張っていて聞き応えがあった。
それほど頻繁に演じられる曲ではないので、偶然でも観ることができてラッキーだったと思いました。
ヴェルディのオペラは、こう言ってはなんですが話自体は単純なことが多いです。例えば有名な「椿姫」も、あらすじなら1行くらいで終わってしまいます。ヒロインがいてヒーローがいて、でも恋は上手く行かなくて‥‥。
「ドン・カルロ」も、もちろんお約束の悲恋です。でも、そればかりではないところが、この作品の面白さです。悲恋が1つではないのです。王子が恋をした相手の王女は、王子の父である国王の妃になってしまう。国王は自分の妻の心が自分にないことを知って苦しみます。父親の妻になった女性を諦められない王子も苦しい。そして、その王子を恋い慕う別な娘もいます。そこに国の政治が絡んできます。更に宗教も介入してきます。王子の親友も関わってきます。事態は複雑なのです。どれもこれもが同じような重さで絡んで来る‥‥つまり、主役級の歌手が何人も必要なのです。
今回の顔ぶれはこうです。
ドン・カルロ(T)…スチュアート・ニール
エリザベッタ(S)…フィオレンツァ・チェドリンス
エボリ公女(MS)…ドローラ・ザージック
ロドリーゴ(Br)…ダリボール・イェニス
フィリッポ二世(B)…フェルッチョ・フルラネット
宗教裁判長(B)…アナトーリ・コチェルガ
指揮:リッカルド・シャイー
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
歌手のバランスがとれていて良かったと思います。でも、見終わった後で、やっぱりギャウロフが歌うフィリポ2世を聴きたくなりました。
今回フィリポ2世を歌っていたフルラネットが宗教裁判長役で、ギャウロフがフィリポ2世を歌っているものを見つけました。声の違い、わかるでしょうか。
これがフィリポ2世のアリア。切々とした男の歌なのです。
そういえば、最近パヴァロッティの再来と騒がれているテノール歌手がいるんだそうです。ヴィットリオ・グリゴロというその歌手の若々しい声を、このドン・カルロ役で聴いてみたかったなぁなどと夢想してしまいました。若さと、それゆえの危うさを秘めた声がぴったりの役ですからね。
これは「リゴレット」からです。
これは「椿姫」。
自分の日常生活の時間の流れ方とはまったく違うリズムに、ときどき身をゆだねてみるのも良いものであります。
by poirier_AAA
| 2011-10-09 09:02
| 聴く
|
Comments(4)
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by
mtonosama at 2011-10-09 11:59
こんにちは。
こちらは3連休の真っただ中です。
だからといって、どこにも出かける訳ではなくウダウダ過ごしています。
あ、コタツを出しましたが。
オペラは「魔笛」のみ、という偏狭な好みのとのです。
でも、寒い日、ロッキングチェアに座り、ウィスキーを飲みながら
オペラというのもいいかもしれませんね。
しかし、コタツにオペラは合わないかも。
ウィスキーだけにしておきます(笑)
こちらは3連休の真っただ中です。
だからといって、どこにも出かける訳ではなくウダウダ過ごしています。
あ、コタツを出しましたが。
オペラは「魔笛」のみ、という偏狭な好みのとのです。
でも、寒い日、ロッキングチェアに座り、ウィスキーを飲みながら
オペラというのもいいかもしれませんね。
しかし、コタツにオペラは合わないかも。
ウィスキーだけにしておきます(笑)
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saheizi-inokori at 2011-10-09 12:00
ちょっとシェイクスピアを思わせますね。私はこのところ非日常なリズムが日常化してきました。^^!
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poirier_AAA at 2011-10-09 17:50
>mtonosamaさん、こんにちは。
日本は三連休ですか、いいですねぇ。
子どもたちがもうちょっと小さかったとき、食事時になるとおしゃべりがすごくて全然食事が進まないことがあったんです。思わずパパゲーノの歌を歌ってしまいましたよ。あんまりしゃべってばかりいると誰かに口を縫い付けられちゃうぞ!と脅かした、恐ろしい母親なのです。
こたつにウイスキーって、サントリーのCMみたいです。暖かい部屋で、グラスの氷がカランと動く音が聞こえたりして、なかなかシブいですよ〜。
日本は三連休ですか、いいですねぇ。
子どもたちがもうちょっと小さかったとき、食事時になるとおしゃべりがすごくて全然食事が進まないことがあったんです。思わずパパゲーノの歌を歌ってしまいましたよ。あんまりしゃべってばかりいると誰かに口を縫い付けられちゃうぞ!と脅かした、恐ろしい母親なのです。
こたつにウイスキーって、サントリーのCMみたいです。暖かい部屋で、グラスの氷がカランと動く音が聞こえたりして、なかなかシブいですよ〜。
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poirier_AAA at 2011-10-09 17:56
>saheiziさん、こんにちは。
佐平次さんはこのところ激しく非日常を味わっていらっしゃいますからねぇ。わたしは地味〜にテレビで雰囲気だけ感じています。
こういうものを観ていると、人間の本質に時代は関係ないんだなぁとつくづく思います。
佐平次さんはこのところ激しく非日常を味わっていらっしゃいますからねぇ。わたしは地味〜にテレビで雰囲気だけ感じています。
こういうものを観ていると、人間の本質に時代は関係ないんだなぁとつくづく思います。