2011年 05月 20日
三角形はつらいよ |
しばらく前のこと。テレビでクラシックのコンサートを見ていた。ダニエル・ハーディング指揮コンセルトヘボウのマーラーの交響曲第1番。
そこに息子2人が揃ってやって来た。
最近、息子たちはなんとなく音楽に興味を示し始めた。それがわかっているので、わたしもちょっとサービス精神を発揮したくなったのだ。「見ていてご覧。この曲にはトライアングルが出てくるんだよ」と言ってしまった。(息子たちは最近トライアングルという楽器の存在を知ったばかり)
しかし、口に出した直後に激しく後悔。
オーケストラの演奏映像の中からトライアングル奏者が映っている部分を見つけるのは、これは至難の業だ。お年玉付き年賀はがきで切手シートを当てるほうが、確率的には絶対に簡単だと思う。
トライアングルはほとんど隠し味効果で使われる。甘みを引き立てるのに塩をひとつまみ入れるようなもの。隠し味の塩が派手に目立ってしまったらバランスが台無しになっちゃう。そして、トライアングルが活躍する場面の多くは、他の楽器もけっこう派手に鳴らしているときであり、ということは何の変哲もない金属製の三角形より、もっと映像映えする素材が他にゴロゴロあるということなのだ。同じ打楽器パートでも、ティンパニとかシンバルの方に普通は目が行ってしまうし。
というわけで、例えば「巨人」のようにトライアングルの出番がかなり多い曲であっても、実際に楽器の姿を拝むのはとても難しい。見られたらラッキー♡くらいなものだ。案の定この日も、映ったと思えば三角形の底辺だけだったり、シンバル奏者の影に隠れてしまったり、ついに全部映った!と思っても地味な形なのであんまり良く見えなかったり、不発続きであった。
そんな苦い経験をしたばかりだったので、昨日の「大地の歌」繋がりでYouTubeを物色していてトライアングルの主役級映像を見つけたときは、思わず歓喜の声を上げてしまった。第3楽章「青春について」の冒頭部分。トライアングルが大映しになっている。やったー!
トライアングルの映像が息子たち以外に喜ばれるとはあんまり思えないんだけど、せっかく見つけたのでご参考までにどうぞ。
ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ
http://www.youtube.com/watch?v=geFkFXFpLdQ&feature=related
バーンスタイン指揮イスラエル・フィル
http://www.youtube.com/watch?v=lb9KnrrvDc8
ところで、この2つのトライアングル映像を見て、違いに気づかれた方はいらっしゃるだろうか?
答えは簡単。叩いている場所が違う。それから持ち方が違う。1人はぶら下げて手のひらで包み込むように持っているし、もう1人はクリップを取り付けて本体をつまむような微妙な持ち方をしている。ここに、トライアングル演奏の奥深さを感じていただきたい!
とりたてて難しそうにも見えない三角形の打楽器。幼稚園児だって間違いなく音が出せる楽器だから簡単でしょ、と普通の人は思う。でも違うの。オーケストラのトライアングル奏者に求められる繊細さと技術は、幼稚園のお遊戯会で求められるものとは似て非なるものだ。
トライアングル。素人はどこで出てくるのか気にもしない。でも指揮者はちゃんと聞いている。そして注文するのだ。「ちょっと、そこのトライアングルの音、どうにかならない?」「ちょっと叩く場所を変えてみようか」「もうちょっとキラキラ目立つように」「ダメダメ。それじゃ品がなさ過ぎ」トライアングルが、外見の地味さに反して神経を使う楽器であることを、わたしはオーケストラに入って初めて知った。
そういえば、これまたよく言われるんだけれど、打楽器の人たちが曲の最後の一打だけのためにずーっと座って待っているのって暇そうで可哀想だよねとか、同じギャラをもらうなんて不公平じゃないかという人もいる。
とんでもない!ちょっと想像してみてほしい。ずーっと待っていて、いきなり「さあここでベストの一打を打て」と望まれることのプレッシャーを。ほとんど演奏しっぱなしで休みが少ないパートは、そりゃあ体力的には辛いけど、一音にかかるプレッシャーと云う点で見たらずっと楽だと思う。出ずっぱりのパートに求められるのは持続力、一打入魂のシンバル奏者やトライアングル奏者に求められるのは、これは正確な技術と勝負強さみたいなものじゃないだろうか。そして、シンバルは目立つので、その一打の瞬間に映してもらえることもある。でも、トライアングルは。。。
人目につかないところで技を磨き、地道に活躍しているトライアングル奏者に、もっと温かいまなざしを!
《おまけ》
「巨人」の映像でトライアングルを探していて見つけたもの。
熱いドゥダメル氏の指揮でどうぞ。演奏はロサンジェルス・フィル。
http://www.youtube.com/watch?v=NR7RjWABRO4&feature=related
10:40あたりからがおすすめ。バス・ドラム奏者の肩のあたりからトライアングル奏者の手首が突き出して楽器を持っているのが何回か映る。見難いけれど、その手から三角形がぶら下がっているんだと思って目を凝らしてみて下さい。ほーら銀色の△が見えて来た。音も聞こえてきたでしょ。
ホルン奏者が総立ちになっちゃったりして、
金管も打楽器もここぞとばかりに頑張っている。
ドゥダメル氏の笑顔も健在なり。
なんというか、血湧き肉踊る感じで盛り上がって終わる曲なのです。
そこに息子2人が揃ってやって来た。
最近、息子たちはなんとなく音楽に興味を示し始めた。それがわかっているので、わたしもちょっとサービス精神を発揮したくなったのだ。「見ていてご覧。この曲にはトライアングルが出てくるんだよ」と言ってしまった。(息子たちは最近トライアングルという楽器の存在を知ったばかり)
しかし、口に出した直後に激しく後悔。
オーケストラの演奏映像の中からトライアングル奏者が映っている部分を見つけるのは、これは至難の業だ。お年玉付き年賀はがきで切手シートを当てるほうが、確率的には絶対に簡単だと思う。
トライアングルはほとんど隠し味効果で使われる。甘みを引き立てるのに塩をひとつまみ入れるようなもの。隠し味の塩が派手に目立ってしまったらバランスが台無しになっちゃう。そして、トライアングルが活躍する場面の多くは、他の楽器もけっこう派手に鳴らしているときであり、ということは何の変哲もない金属製の三角形より、もっと映像映えする素材が他にゴロゴロあるということなのだ。同じ打楽器パートでも、ティンパニとかシンバルの方に普通は目が行ってしまうし。
というわけで、例えば「巨人」のようにトライアングルの出番がかなり多い曲であっても、実際に楽器の姿を拝むのはとても難しい。見られたらラッキー♡くらいなものだ。案の定この日も、映ったと思えば三角形の底辺だけだったり、シンバル奏者の影に隠れてしまったり、ついに全部映った!と思っても地味な形なのであんまり良く見えなかったり、不発続きであった。
そんな苦い経験をしたばかりだったので、昨日の「大地の歌」繋がりでYouTubeを物色していてトライアングルの主役級映像を見つけたときは、思わず歓喜の声を上げてしまった。第3楽章「青春について」の冒頭部分。トライアングルが大映しになっている。やったー!
トライアングルの映像が息子たち以外に喜ばれるとはあんまり思えないんだけど、せっかく見つけたのでご参考までにどうぞ。
ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ
http://www.youtube.com/watch?v=geFkFXFpLdQ&feature=related
バーンスタイン指揮イスラエル・フィル
http://www.youtube.com/watch?v=lb9KnrrvDc8
ところで、この2つのトライアングル映像を見て、違いに気づかれた方はいらっしゃるだろうか?
答えは簡単。叩いている場所が違う。それから持ち方が違う。1人はぶら下げて手のひらで包み込むように持っているし、もう1人はクリップを取り付けて本体をつまむような微妙な持ち方をしている。ここに、トライアングル演奏の奥深さを感じていただきたい!
とりたてて難しそうにも見えない三角形の打楽器。幼稚園児だって間違いなく音が出せる楽器だから簡単でしょ、と普通の人は思う。でも違うの。オーケストラのトライアングル奏者に求められる繊細さと技術は、幼稚園のお遊戯会で求められるものとは似て非なるものだ。
トライアングル。素人はどこで出てくるのか気にもしない。でも指揮者はちゃんと聞いている。そして注文するのだ。「ちょっと、そこのトライアングルの音、どうにかならない?」「ちょっと叩く場所を変えてみようか」「もうちょっとキラキラ目立つように」「ダメダメ。それじゃ品がなさ過ぎ」トライアングルが、外見の地味さに反して神経を使う楽器であることを、わたしはオーケストラに入って初めて知った。
そういえば、これまたよく言われるんだけれど、打楽器の人たちが曲の最後の一打だけのためにずーっと座って待っているのって暇そうで可哀想だよねとか、同じギャラをもらうなんて不公平じゃないかという人もいる。
とんでもない!ちょっと想像してみてほしい。ずーっと待っていて、いきなり「さあここでベストの一打を打て」と望まれることのプレッシャーを。ほとんど演奏しっぱなしで休みが少ないパートは、そりゃあ体力的には辛いけど、一音にかかるプレッシャーと云う点で見たらずっと楽だと思う。出ずっぱりのパートに求められるのは持続力、一打入魂のシンバル奏者やトライアングル奏者に求められるのは、これは正確な技術と勝負強さみたいなものじゃないだろうか。そして、シンバルは目立つので、その一打の瞬間に映してもらえることもある。でも、トライアングルは。。。
人目につかないところで技を磨き、地道に活躍しているトライアングル奏者に、もっと温かいまなざしを!
《おまけ》
「巨人」の映像でトライアングルを探していて見つけたもの。
熱いドゥダメル氏の指揮でどうぞ。演奏はロサンジェルス・フィル。
http://www.youtube.com/watch?v=NR7RjWABRO4&feature=related
10:40あたりからがおすすめ。バス・ドラム奏者の肩のあたりからトライアングル奏者の手首が突き出して楽器を持っているのが何回か映る。見難いけれど、その手から三角形がぶら下がっているんだと思って目を凝らしてみて下さい。ほーら銀色の△が見えて来た。音も聞こえてきたでしょ。
ホルン奏者が総立ちになっちゃったりして、
金管も打楽器もここぞとばかりに頑張っている。
ドゥダメル氏の笑顔も健在なり。
なんというか、血湧き肉踊る感じで盛り上がって終わる曲なのです。
by poirier_AAA
| 2011-05-20 16:59
| 聴く
|
Comments(4)
Commented
by
coco
at 2011-05-21 22:30
x
お久しぶりのコメントです~!!!
ご心配おかけしちゃってすみません。それからありがとう
ございます。
私、実はずっとブラスバンドに入ってたんですよ~。
前の方に並んで座ってる私にとって後ろの方で頑張る
パーカションさんは結構憧れで不思議な楽器を操って
たのを覚えてます。トライアングルも持つ場所、叩く位置
の違いで全然違うのだぁと言われた時は感動したものです。
トライアングルの音が入ってるとそれだけでちょっちょ
幻想的になったり、非現実的になったりと色んな効果が
あって本当にステキだと思います。私も好きですよ♪
特に出番が殆どなくじっと待ってる人が楽譜をめくる
瞬間が♪
ご心配おかけしちゃってすみません。それからありがとう
ございます。
私、実はずっとブラスバンドに入ってたんですよ~。
前の方に並んで座ってる私にとって後ろの方で頑張る
パーカションさんは結構憧れで不思議な楽器を操って
たのを覚えてます。トライアングルも持つ場所、叩く位置
の違いで全然違うのだぁと言われた時は感動したものです。
トライアングルの音が入ってるとそれだけでちょっちょ
幻想的になったり、非現実的になったりと色んな効果が
あって本当にステキだと思います。私も好きですよ♪
特に出番が殆どなくじっと待ってる人が楽譜をめくる
瞬間が♪
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by
poirier_AAA at 2011-05-22 00:04
>cocoさん、こんにちは。
お元気そうでよかったです。ほっ。
ブラスバンドで前の方というとクラリネットとかフルートでしょうか?わたしも中学時代はブラスバンドでフルートを吹いていたんですよ。
打楽器ってすごく難しいパートだと思うんですよ。だって、アマチュア団体の打楽器奏者って曲によっていろいろな楽器を持ち替えなきゃなりませんもんね。グロッケンもマラカスもスネアドラムもシンバルもティンパニもトライアングルも、みんな巧くやれなんて大変すぎですよねぇ。それだけに彼らの活躍にはいつも感動してしまうのです。
お元気そうでよかったです。ほっ。
ブラスバンドで前の方というとクラリネットとかフルートでしょうか?わたしも中学時代はブラスバンドでフルートを吹いていたんですよ。
打楽器ってすごく難しいパートだと思うんですよ。だって、アマチュア団体の打楽器奏者って曲によっていろいろな楽器を持ち替えなきゃなりませんもんね。グロッケンもマラカスもスネアドラムもシンバルもティンパニもトライアングルも、みんな巧くやれなんて大変すぎですよねぇ。それだけに彼らの活躍にはいつも感動してしまうのです。
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by
petitecoco at 2011-05-22 01:47
うわっ!!
私もフルートです♪
私もフルートです♪
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by
poirier_AAA at 2011-05-22 01:52