2011年 04月 26日
フランスと日本のニュースから |
ベッドに行く前にとちらりと目を走らせたネット版のルモンドが、チェルノブイリ事故に関する記事をいくつか載せていました。今のところ最悪の原発事故とされているチェルノブイリ原発の事故が起ったのがいまから25年前の4月26日です。
チェルノブイリから25年経った今、今度は福島原発が事故を起こしている。当然話は福島原発に及びます。わたしが読んだのは「Les leçons de Tchernobyl n'ont pas été tirées(チェルノブイリの教訓は生かされていない)」という記事でした。きちんと訳す時間がないので、ざっと訳してみますと
(以下粗訳)
チェルノブイリの爆発によって汚染された地域では、出生率が低く死亡率が高い。これが事故と関係があることは明らかである。心血管疾患や癌による死亡者が増えている。また出生率の低下は主に男女共に生殖機能の低下と胎児の発育障害に起因している。事故後25年間の被曝(特にセシウムによる被曝)によって、人間の体は代謝障害と遺伝子損傷という大きなダメージを受けた。
ソ連崩壊後の3国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)はチェルノブイリの事故処理に対応し切れていない。主な理由は放射能が人体に与える影響についての客観的な資料が決定的に不足していることだ。情報規制の存在は、原子力ロビーとベラルーシの独裁体制の結託によってだいたい説明がつく。
体の自由を奪ったり死に至らしめたりする病を防ぐ意味で放射能防御を考えるためには、政治的な行動と正確な情報が必ず必要である。しかしこれが上手く機能しないことをわれわれは知っている。そしてまた今、福島でもそれを確認している。
(大幅に省略)
核武装と原発推進が2本の柱で同時進行して来たことは明らかである。それは例えばフランスのように不思議なパワーによって国境を守られた国であっても同じことだ。(フランスはチェルノブイリの放射能雲がフランスの国境に達する前に逸れたと発表した。それと同じように今は、北アフリカから逃げてイタリアの地方都市に辿り着いた難民たちがフランスを目指して乗った列車を阻んでいる)
チェルノブイリと福島の事故だけではない。未だに解決策が見つからない核廃棄物処理問題を考えても、わたしたちが原発からの段階的な脱出を考えるのはごく自然なことだ。
原発の代替は存在する。そして更に研究も進んでいる。だから2050年までの温室効果ガス削減目標を考えながら少しずつ脱原発を促進していこう。将来のヨーロッパのエネルギー事情と温室効果ガス削減効果は今後10年間の投資の行方にかかっている。原発促進派と再利用可能な発電システム推進派の力関係で言うなら、この“古き善き”原発技術に背を向け、継続的で責任ある未来をもたらす技術とともに歩むことをわれわれは選ぶのだ。
(粗訳終わり)
オリジナルはこちらで読めます。
http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/04/25/les-lecons-de-tchernobyl-n-ont-pas-ete-tirees_1512523_3232.html
かなり荒っぽい訳なので、とりあえずざっと内容を紹介するためのものだと思って読んで下さい。それでもこの記事の主旨が明確に「原発は問題がありすぎる。新しい、もっと人も環境も傷つけない方法を探そう」と提言していることはわかっていただけると思います。気持ちが良くなるほどはっきりとした記事です。市民の味方の新聞ならこうでなくっちゃいけません。
かたや日本のニュースを読んでいたら
(jiji.comからの転載)
福島第1原発事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部は23日、東電本社と経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会が別々に行っている記者会見を25日から一本化すると正式に発表した。毎日午後5時をめどに東電本社で行う。説明の食い違い解消が目的という。
会見には同本部事務局長の細野豪志首相補佐官も出席。記者は事前登録制となる。東電によると会見にはフリージャーナリストも参加可能だが、参加の可否は保安院が審査するといい、批判の声が出そうだ。
保安院の西山英彦審議官は参加記者に条件を付ける理由について、「メディアにふさわしい方に聞いていただきたいと考えている」と説明した。(2011/04/23)
「フリージャーナリストも参加可能だが、参加の可否は保安院が審査する」って何でしょうねぇ。会場に入れなかったジャーナリストは情報を世の中に伝えることができないんですけれど。こんな非常事態下でそんな「ボク聞けた人」「ボク聞けなかった人」なんて差ができちゃってもいいものなんでしょうか。そもそも国民全員に正しい情報を伝えるのが目的ならば、なんとしてもこの時間にここまで来い、全員にきいてもらわなきゃならないことがあるんだ、と脅してでも招集をかけるのが責任者の筋だと思うんですけれどね。おぉ、集まって欲しいのは「メディアに相応しい方」だけなんですね。あれですか、保安院というのは本職の原子力の安全対策については全然役に立たなかったけれど、今度は本業とは完全に畑違いのマスメディアのお目付役をやろうというのでしょうか。すごいですねぇ。始めから一兎を追えてない人が更に二兎を追おうとする。たいした自信ですねと言いたいところだけれど、本当に自分が見えなくなっているのですね。それとも日本にもフランスの「魔法の国境」みたいな強力な秘密兵器があるから余裕なんでしょうか。
国民の声にも耳を貸さず、恥ずかしげもなく情報操作して、これでは独裁国家と何も変わりません。お隣の独裁国家で核の事故が起きたと聞いてご覧なさいな。怖くて恐ろしくて生きた心地もしないから。そしてわたしはいま、日本のニュースを読みながら怖くて悲しくてたまらないのです。
チェルノブイリから25年経った今、今度は福島原発が事故を起こしている。当然話は福島原発に及びます。わたしが読んだのは「Les leçons de Tchernobyl n'ont pas été tirées(チェルノブイリの教訓は生かされていない)」という記事でした。きちんと訳す時間がないので、ざっと訳してみますと
(以下粗訳)
チェルノブイリの爆発によって汚染された地域では、出生率が低く死亡率が高い。これが事故と関係があることは明らかである。心血管疾患や癌による死亡者が増えている。また出生率の低下は主に男女共に生殖機能の低下と胎児の発育障害に起因している。事故後25年間の被曝(特にセシウムによる被曝)によって、人間の体は代謝障害と遺伝子損傷という大きなダメージを受けた。
ソ連崩壊後の3国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)はチェルノブイリの事故処理に対応し切れていない。主な理由は放射能が人体に与える影響についての客観的な資料が決定的に不足していることだ。情報規制の存在は、原子力ロビーとベラルーシの独裁体制の結託によってだいたい説明がつく。
体の自由を奪ったり死に至らしめたりする病を防ぐ意味で放射能防御を考えるためには、政治的な行動と正確な情報が必ず必要である。しかしこれが上手く機能しないことをわれわれは知っている。そしてまた今、福島でもそれを確認している。
(大幅に省略)
核武装と原発推進が2本の柱で同時進行して来たことは明らかである。それは例えばフランスのように不思議なパワーによって国境を守られた国であっても同じことだ。(フランスはチェルノブイリの放射能雲がフランスの国境に達する前に逸れたと発表した。それと同じように今は、北アフリカから逃げてイタリアの地方都市に辿り着いた難民たちがフランスを目指して乗った列車を阻んでいる)
チェルノブイリと福島の事故だけではない。未だに解決策が見つからない核廃棄物処理問題を考えても、わたしたちが原発からの段階的な脱出を考えるのはごく自然なことだ。
原発の代替は存在する。そして更に研究も進んでいる。だから2050年までの温室効果ガス削減目標を考えながら少しずつ脱原発を促進していこう。将来のヨーロッパのエネルギー事情と温室効果ガス削減効果は今後10年間の投資の行方にかかっている。原発促進派と再利用可能な発電システム推進派の力関係で言うなら、この“古き善き”原発技術に背を向け、継続的で責任ある未来をもたらす技術とともに歩むことをわれわれは選ぶのだ。
(粗訳終わり)
オリジナルはこちらで読めます。
http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/04/25/les-lecons-de-tchernobyl-n-ont-pas-ete-tirees_1512523_3232.html
かなり荒っぽい訳なので、とりあえずざっと内容を紹介するためのものだと思って読んで下さい。それでもこの記事の主旨が明確に「原発は問題がありすぎる。新しい、もっと人も環境も傷つけない方法を探そう」と提言していることはわかっていただけると思います。気持ちが良くなるほどはっきりとした記事です。市民の味方の新聞ならこうでなくっちゃいけません。
かたや日本のニュースを読んでいたら
(jiji.comからの転載)
福島第1原発事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部は23日、東電本社と経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会が別々に行っている記者会見を25日から一本化すると正式に発表した。毎日午後5時をめどに東電本社で行う。説明の食い違い解消が目的という。
会見には同本部事務局長の細野豪志首相補佐官も出席。記者は事前登録制となる。東電によると会見にはフリージャーナリストも参加可能だが、参加の可否は保安院が審査するといい、批判の声が出そうだ。
保安院の西山英彦審議官は参加記者に条件を付ける理由について、「メディアにふさわしい方に聞いていただきたいと考えている」と説明した。(2011/04/23)
「フリージャーナリストも参加可能だが、参加の可否は保安院が審査する」って何でしょうねぇ。会場に入れなかったジャーナリストは情報を世の中に伝えることができないんですけれど。こんな非常事態下でそんな「ボク聞けた人」「ボク聞けなかった人」なんて差ができちゃってもいいものなんでしょうか。そもそも国民全員に正しい情報を伝えるのが目的ならば、なんとしてもこの時間にここまで来い、全員にきいてもらわなきゃならないことがあるんだ、と脅してでも招集をかけるのが責任者の筋だと思うんですけれどね。おぉ、集まって欲しいのは「メディアに相応しい方」だけなんですね。あれですか、保安院というのは本職の原子力の安全対策については全然役に立たなかったけれど、今度は本業とは完全に畑違いのマスメディアのお目付役をやろうというのでしょうか。すごいですねぇ。始めから一兎を追えてない人が更に二兎を追おうとする。たいした自信ですねと言いたいところだけれど、本当に自分が見えなくなっているのですね。それとも日本にもフランスの「魔法の国境」みたいな強力な秘密兵器があるから余裕なんでしょうか。
国民の声にも耳を貸さず、恥ずかしげもなく情報操作して、これでは独裁国家と何も変わりません。お隣の独裁国家で核の事故が起きたと聞いてご覧なさいな。怖くて恐ろしくて生きた心地もしないから。そしてわたしはいま、日本のニュースを読みながら怖くて悲しくてたまらないのです。
by poirier_AAA
| 2011-04-26 09:53
| 世情を考える
|
Comments(4)
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at 2011-04-27 23:10
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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by
kanafr at 2011-04-28 07:39
朝まで生TVが結構好きで録画したのを見ていた時期もありましたが、いつも日本のジャーナリストという人達の発言している様子を見ると、がっかりするのは単なる知識の応酬しかないんですね。
誰々と知り合いなんだけど、こう言っていたとか、こんな事も知ってるぞ!しかなく、そこに自分の意見がない。
問い詰められても“そうも言えますが...”で何となくお茶を濁す。
新聞の論説も同じです。
フランスの新聞にいつも目を通している訳ではないですが、たまに読んだり発言を聞くと、日本のジャーナリストと違うなといつも思います。
日本はやはり御用ジャーナリストなんでしょうね。
誰々と知り合いなんだけど、こう言っていたとか、こんな事も知ってるぞ!しかなく、そこに自分の意見がない。
問い詰められても“そうも言えますが...”で何となくお茶を濁す。
新聞の論説も同じです。
フランスの新聞にいつも目を通している訳ではないですが、たまに読んだり発言を聞くと、日本のジャーナリストと違うなといつも思います。
日本はやはり御用ジャーナリストなんでしょうね。
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by
poirier_AAA at 2011-04-28 17:06
>鍵コメさん、こんにちは。
腹が立ちますね。責任ある立場の人たちが自分の利害だけにこだわって物を見ず、発言力の小さな市民が一生懸命頑張って日本を守っている、そんなふうに外からは見えます。頑張って生活を守ろうと努力されている方々に心からエールを送ります!
腹が立ちますね。責任ある立場の人たちが自分の利害だけにこだわって物を見ず、発言力の小さな市民が一生懸命頑張って日本を守っている、そんなふうに外からは見えます。頑張って生活を守ろうと努力されている方々に心からエールを送ります!
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by
poirier_AAA at 2011-04-28 17:12
>kanafrさん、3度目のこんにちは。
今回の「メディアに相応しい方」という部分に、猛烈に腹が立ちました。それに、東電(監視される側)と保安院&安全委員会(監視する側)が一緒に会見するなんて、普通に考えれば有り得ません。それがほとんど騒がれずに受け入れられていること、大手マスコミが全然危機感を呈していないことが非常に恐ろしいです。しかも被災地以外の場所では以前のような雰囲気に戻っているとも聞きますし。日本はどうなっちゃうんだ!と思っています。
今回の「メディアに相応しい方」という部分に、猛烈に腹が立ちました。それに、東電(監視される側)と保安院&安全委員会(監視する側)が一緒に会見するなんて、普通に考えれば有り得ません。それがほとんど騒がれずに受け入れられていること、大手マスコミが全然危機感を呈していないことが非常に恐ろしいです。しかも被災地以外の場所では以前のような雰囲気に戻っているとも聞きますし。日本はどうなっちゃうんだ!と思っています。