2011年 04月 21日
福島の子どもたちのこと |
先日書いた記事がきっかけとなり、福島県にお住まいのmikttymama さんを知りました。頂いたメッセージを部分的に公開するお許しを得ましたので、こちらで紹介したいと思います。同じように小さい子どもを抱える母親として、彼女の語る話は他人事と思えません。
*****
私は福島県郡山市(原発から55km)のものです。娘が3人おります。現在のこちらの環境放射能の数値は1.8マイクロシーベルト/h。これがどういうことかと言えば、今自主避難を要請されている飯舘村の1/2ほど、計画的避難区域に指定されている、20~30km圏内の南相馬原町区が0.3マイクロシーベルト/h(浪江町などはもっと高い)。この状態で、長女は普通に集団登校しています。上の数値は環境放射能測定値であり、土埃がついた靴や、放射性物質が濃縮された側溝などの数値はもっと高いような状態です。昨日は大雨。郡山市で一番数値が高い(飯舘村と同じぐらい)地区の小学生が、半ズボン、カッパもマスクもせずに普通に傘だけをさして下校途中なのを見ました。自治体の放射線窓口に問い合わせしたところ、「文科省の方で学校生活に対する指針が今策定されているところです。遅くなって申し訳ありません。」そのような返答。ありえないことだと思いませんか?余震に怯え、放射能に怯え、特に小さい子供がいる私たちは日々一喜一憂しています。
(mikttymamaさんのブログ『ふくしま「I-e」ごはん』は左コラムのリンクからご覧頂けます。)
*****
新学期も始まってだいぶ経つ19日、文科省の指針が出ました。それに関する記事がこちらです。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E3EBE2E1868DE3EBE2E6E0E2E3E39180EAE2E2E2
念のため一部を抜粋しておきます。
(開始)
文部科学省と厚生労働省は19日、福島第1原子力発電所から20キロ以上離れ、計画的避難区域などにも入らない福島県内の学校や幼稚園・保育園が校舎や校庭を利用する際の放射線量の基準を発表した。屋外での放射線量の計測値が毎時3.8マイクロシーベルト以上となった場合、校庭・園庭の使用や屋外での活動を制限する。同日、県教育委員会などに通知した。
屋外活動が制限されるのは福島市と郡山市、伊達市の計13の小中学校と幼稚園・保育園で、対象の子供は約3500人。対象施設では屋外活動を1日あたり1時間以内とし幼稚園・保育園は砂場の利用を控える。
屋外活動が制限される13の施設のうち、福島第1原発から最も遠いのが64.3キロ離れた福島市内の小学校。一方最も近いのは同55.4キロメートルの伊達市内の小学校。
1日に屋内で過ごすのを16時間、屋外は8時間と仮定。屋外で許容される被曝(ひばく)量を毎時3.8マイクロシーベルト未満と算出した。「通常の子供の行動パターンでは屋外にいる時間はもっと短い。念のため慎重な数値を設定した」(文科省)という。高校などもこの数値を参考に活動方針を決めるのが望ましいとしている。
放射線量の調査は毎週行い、2回連続で基準を下回れば制限を解除する。幼稚園と保育園、小学校は地面から高さ50センチ、中学校は高さ1メートルの場所で計測する
この基準は学校の夏休みが終わる8月末までを対象期間にし、その後に見直す。対象外の学校も含め、屋外活動後の手洗いやうがい、土ぼこりが多い時は窓を閉めるといった留意点も示した。
(抜粋終わり)
ちなみに「放射線管理区域」いう法令で定められた区域があります。その設定基準のひとつをみますと
・外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv
とあります。3ヶ月で1.3mSv(1300μSv)ですから、これを時間当たりに直すと
1300μSv÷3(月)÷30(日)÷24(時間)=0.6μSvです。
この0.6という数字は武田邦彦さんのところにもありましたので多分あっていると思います。(もし違っていたら教えて下さい)
つまり、一時間当たりの放射線量が0.6μSvを超える場所は「法律」で「放射線管理区域」とされ、用事のない人以外は立ち入ってはならない場所になるのです。
それを念頭において子どもたちの安全を守るための基準値をみると愕然とします。3.8です。3.8μSvという値は、今回の事故後に日本政府が改めた線量限度である年間20mSvをもとに計算された数字です。1時間当たりの線量が3.8μSvに達しなければ特に制限もなく「普通に」外で遊べるわけで、砂埃をたてながらサッカーをしたり、地面で腕立て伏せすることも、砂遊びすることもできてしまうのです。少しでも被曝を防いでやろうという考え方からすると、随分乱暴に思われます。国は基準を出したのだから、あとは親なり学校なりが判断しろと言うことでしょうか?
わたしは郡山市のHPにも行ってみました。ここでも学校周辺の放射線量を見られるようになっているのです。でもね、ここでもびっくりしました。今日は4月の21日、この頁で見られるのは4月10日前に採取された結果ばかりなのです。採取してから結果が公表されるまでに更に数日かかります。親が自分で判断しようと思っても、頼りになる数字が見つかりません。しまった!数字が高いじゃないかと思っても、すでに何日も前のことで取り返しがつきません。そもそも数値の計測が週1回しか行われないのです。
やりきれないと思うのは、対象が子どもだからです。大人には選択肢があります。自分の生活のことは自分で判断して決められるし、安全対策だって自分なりの線引きができます。でも子どもにはそれができません。学校が始まると言われれば毎日学校に通うし、先生が体育の時間だからサッカーしようと言えばサッカーをするでしょう。親が作った料理も給食で出された料理も、彼らは用意されたものを食べるだけです。自分で自分の身を守れない子どもだから、大人が守ってやるしかないではありませんか。なんとかしてやれないものでしょうか?
事故が起きてしまったことはもうどうしようもありません。
でもせめて、罪もない子どもたちの健康だけは最低限守ってやらなければなりませんよね。しらないうちに健康を損なう可能性にさらされ、しかも大人になって眺めた国は汚れた大地と水ばかり、地元の牧場で育てた牛のミルクを飲むこともできなければ海で魚を釣って食べることもできない、それでは子どもたちがあんまり可哀想です。
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私は福島県郡山市(原発から55km)のものです。娘が3人おります。現在のこちらの環境放射能の数値は1.8マイクロシーベルト/h。これがどういうことかと言えば、今自主避難を要請されている飯舘村の1/2ほど、計画的避難区域に指定されている、20~30km圏内の南相馬原町区が0.3マイクロシーベルト/h(浪江町などはもっと高い)。この状態で、長女は普通に集団登校しています。上の数値は環境放射能測定値であり、土埃がついた靴や、放射性物質が濃縮された側溝などの数値はもっと高いような状態です。昨日は大雨。郡山市で一番数値が高い(飯舘村と同じぐらい)地区の小学生が、半ズボン、カッパもマスクもせずに普通に傘だけをさして下校途中なのを見ました。自治体の放射線窓口に問い合わせしたところ、「文科省の方で学校生活に対する指針が今策定されているところです。遅くなって申し訳ありません。」そのような返答。ありえないことだと思いませんか?余震に怯え、放射能に怯え、特に小さい子供がいる私たちは日々一喜一憂しています。
(mikttymamaさんのブログ『ふくしま「I-e」ごはん』は左コラムのリンクからご覧頂けます。)
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新学期も始まってだいぶ経つ19日、文科省の指針が出ました。それに関する記事がこちらです。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E3EBE2E1868DE3EBE2E6E0E2E3E39180EAE2E2E2
念のため一部を抜粋しておきます。
(開始)
文部科学省と厚生労働省は19日、福島第1原子力発電所から20キロ以上離れ、計画的避難区域などにも入らない福島県内の学校や幼稚園・保育園が校舎や校庭を利用する際の放射線量の基準を発表した。屋外での放射線量の計測値が毎時3.8マイクロシーベルト以上となった場合、校庭・園庭の使用や屋外での活動を制限する。同日、県教育委員会などに通知した。
屋外活動が制限されるのは福島市と郡山市、伊達市の計13の小中学校と幼稚園・保育園で、対象の子供は約3500人。対象施設では屋外活動を1日あたり1時間以内とし幼稚園・保育園は砂場の利用を控える。
屋外活動が制限される13の施設のうち、福島第1原発から最も遠いのが64.3キロ離れた福島市内の小学校。一方最も近いのは同55.4キロメートルの伊達市内の小学校。
1日に屋内で過ごすのを16時間、屋外は8時間と仮定。屋外で許容される被曝(ひばく)量を毎時3.8マイクロシーベルト未満と算出した。「通常の子供の行動パターンでは屋外にいる時間はもっと短い。念のため慎重な数値を設定した」(文科省)という。高校などもこの数値を参考に活動方針を決めるのが望ましいとしている。
放射線量の調査は毎週行い、2回連続で基準を下回れば制限を解除する。幼稚園と保育園、小学校は地面から高さ50センチ、中学校は高さ1メートルの場所で計測する
この基準は学校の夏休みが終わる8月末までを対象期間にし、その後に見直す。対象外の学校も含め、屋外活動後の手洗いやうがい、土ぼこりが多い時は窓を閉めるといった留意点も示した。
(抜粋終わり)
ちなみに「放射線管理区域」いう法令で定められた区域があります。その設定基準のひとつをみますと
・外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv
とあります。3ヶ月で1.3mSv(1300μSv)ですから、これを時間当たりに直すと
1300μSv÷3(月)÷30(日)÷24(時間)=0.6μSvです。
この0.6という数字は武田邦彦さんのところにもありましたので多分あっていると思います。(もし違っていたら教えて下さい)
つまり、一時間当たりの放射線量が0.6μSvを超える場所は「法律」で「放射線管理区域」とされ、用事のない人以外は立ち入ってはならない場所になるのです。
それを念頭において子どもたちの安全を守るための基準値をみると愕然とします。3.8です。3.8μSvという値は、今回の事故後に日本政府が改めた線量限度である年間20mSvをもとに計算された数字です。1時間当たりの線量が3.8μSvに達しなければ特に制限もなく「普通に」外で遊べるわけで、砂埃をたてながらサッカーをしたり、地面で腕立て伏せすることも、砂遊びすることもできてしまうのです。少しでも被曝を防いでやろうという考え方からすると、随分乱暴に思われます。国は基準を出したのだから、あとは親なり学校なりが判断しろと言うことでしょうか?
わたしは郡山市のHPにも行ってみました。ここでも学校周辺の放射線量を見られるようになっているのです。でもね、ここでもびっくりしました。今日は4月の21日、この頁で見られるのは4月10日前に採取された結果ばかりなのです。採取してから結果が公表されるまでに更に数日かかります。親が自分で判断しようと思っても、頼りになる数字が見つかりません。しまった!数字が高いじゃないかと思っても、すでに何日も前のことで取り返しがつきません。そもそも数値の計測が週1回しか行われないのです。
やりきれないと思うのは、対象が子どもだからです。大人には選択肢があります。自分の生活のことは自分で判断して決められるし、安全対策だって自分なりの線引きができます。でも子どもにはそれができません。学校が始まると言われれば毎日学校に通うし、先生が体育の時間だからサッカーしようと言えばサッカーをするでしょう。親が作った料理も給食で出された料理も、彼らは用意されたものを食べるだけです。自分で自分の身を守れない子どもだから、大人が守ってやるしかないではありませんか。なんとかしてやれないものでしょうか?
事故が起きてしまったことはもうどうしようもありません。
でもせめて、罪もない子どもたちの健康だけは最低限守ってやらなければなりませんよね。しらないうちに健康を損なう可能性にさらされ、しかも大人になって眺めた国は汚れた大地と水ばかり、地元の牧場で育てた牛のミルクを飲むこともできなければ海で魚を釣って食べることもできない、それでは子どもたちがあんまり可哀想です。
by poirier_AAA
| 2011-04-21 22:41
| 世情を考える
|
Comments(4)
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kanafr at 2011-04-22 07:33
リンクさせていただいている方の記事で、参議議員会館で行われた文科省の役人3名と安全委員会1名が住民からの質問に対し、ほとんど何にも答えられず2時間弱を無駄にし最後は「持ち帰って...」の宿題にしたというのを読んで、本当に腹が立ちました。
まったく人ごとなんですよ。彼らは!
まったく人ごとなんですよ。彼らは!
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mikttymama at 2011-04-22 11:25
そうなのですよ、事故が起きたのは仕方がない。そこはもうあきらめています。だから、どうすればここで安全に「暮らせるのか」を毎日必死に考えています。家をシェルターのようにして食べて寝て過ごす。それは暮らしではないのです。
学校へ行ったら校庭で伸び伸び遊んで運動をし、かえってきたらおやつを食べてまた友達と外で思いっきり遊ぶ。休みの日はお弁当を持って公園や海、山に。春はお花見にピクニック。夏は海水浴や湖水浴、潮干狩り。秋は紅葉散策にキャンプやイモ煮会。冬はスキーにスノーボード・・・。
こんなことが当たり前だった福島を、今完全に奪われています。
本当に豊かな場所でした。だからこそ私は仕事も結婚も、人生の全てをここですごそうとしていたのです。それを原子力というものが奪い去った。
おっしゃる通り、子どもたちがかわいそうでなりません。
悲観的になってばかりもいられませんので、行動してゆかなくては。
学校へ行ったら校庭で伸び伸び遊んで運動をし、かえってきたらおやつを食べてまた友達と外で思いっきり遊ぶ。休みの日はお弁当を持って公園や海、山に。春はお花見にピクニック。夏は海水浴や湖水浴、潮干狩り。秋は紅葉散策にキャンプやイモ煮会。冬はスキーにスノーボード・・・。
こんなことが当たり前だった福島を、今完全に奪われています。
本当に豊かな場所でした。だからこそ私は仕事も結婚も、人生の全てをここですごそうとしていたのです。それを原子力というものが奪い去った。
おっしゃる通り、子どもたちがかわいそうでなりません。
悲観的になってばかりもいられませんので、行動してゆかなくては。
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poirier_AAA at 2011-04-22 15:56
>kanafrさん、こんにちは。
梟通信さんのブログですよね。わたしも毎日読んでいます(1年以上も前に知ったキッカケは「本」だったんですよ)
この記事を書き上げたあとで梟さんの参議院議員会館でのことを読みました。実際にすぐに行動を起こして下さっている方がいることを知って本当に有難く思いました。その人たちの言葉に比べてお役人の言葉のなんと空虚なことか。同じ赤い血が流れているとは到底考えられません。国の内側がとことん腐ってると思います。
梟通信さんのブログですよね。わたしも毎日読んでいます(1年以上も前に知ったキッカケは「本」だったんですよ)
この記事を書き上げたあとで梟さんの参議院議員会館でのことを読みました。実際にすぐに行動を起こして下さっている方がいることを知って本当に有難く思いました。その人たちの言葉に比べてお役人の言葉のなんと空虚なことか。同じ赤い血が流れているとは到底考えられません。国の内側がとことん腐ってると思います。
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poirier_AAA at 2011-04-22 16:04
>mikttymamaさん、こんにちは。
「家をシェルターのようにして食べて寝て過ごす。それは暮らしではないのです」という部分、政治家やお役人に聞かせてやりたいです。彼らのやり方を見ていると、命があるんだからよかったでしょ、とりあえず生きていられるんだから文句ないでしょ、という考え方が透けて見えます。そうではないですよね。人間には人間らしく「普通に」暮らす権利があるのです。それを守ろうとしない日本と言う国が情けなくてたまりません。
それでも救いがあると思うのは、さっそく子どもを守るために立ち上がった人たちがたくさんいること、mikttymamaさんのお子さんの学校の先生のように、親身になってくれる教育関係者がいることだと思います。そう、大人が行動しなければ、ですよね。
「家をシェルターのようにして食べて寝て過ごす。それは暮らしではないのです」という部分、政治家やお役人に聞かせてやりたいです。彼らのやり方を見ていると、命があるんだからよかったでしょ、とりあえず生きていられるんだから文句ないでしょ、という考え方が透けて見えます。そうではないですよね。人間には人間らしく「普通に」暮らす権利があるのです。それを守ろうとしない日本と言う国が情けなくてたまりません。
それでも救いがあると思うのは、さっそく子どもを守るために立ち上がった人たちがたくさんいること、mikttymamaさんのお子さんの学校の先生のように、親身になってくれる教育関係者がいることだと思います。そう、大人が行動しなければ、ですよね。