2010年 11月 30日
中世の音楽と楽器 |
最近とても気になっているものがありまして、今日はその話です。
そのものと言いますのが「Le Royaume Oublié: La Tragédie Cathare(忘れられた王国:カタリ派の悲劇」と名付けられたコンサートです。
2010年7月27日、フランスはナルボンヌのフォンフロワド修道院(L'abbaye de fontfroide)で行われたコンサート。演奏しているのはエスペリオンXXI(Hespèrion XXI)とLa Capella Reial de Catalunya、指揮がジョルディ・サヴァール(Jordi Savall)です。
テレビで偶然見かけた時はもう番組終了直前、ほんの10分くらいしか見られなかったのです。それなのに、妙に気になって気になって仕方なくなってしまったのは、
1)使われている楽器が、これまで見たこともないようなものばかりだった
2)いくつかの言語による語りが入る
3)耳慣れない旋律と歌い方
4)忘れられた王国って何のこと?背景が知りたい
とまあ、こんな理由からです。
物語や歴史的背景は後で話すとして、まず興味深いのが楽器でした。
ものすごく幅の広いリードを使う楽器、斜めにくわえて演奏する笛、バグパイプの従兄弟みたいな楽器、小さいヴァイオリンのような形なのに膝に乗せて縦に構えて演奏する弦楽器、尺八みたいな笛。ベルもあれば、金属製の茶さじみたいなもので叩く弦楽器もある。リュートの胴体みたいな形でハンドルをぐるぐる回して演奏するもの、胡弓みたいなものもあれば三角形のギターみたいなものもあります。どれもこれも、こんな楽器があったの?こんな音がするの?というものばかり。これは本当に面白く見ました。
なんとYouTubeにアップしてくれた人がいたようなので、是非見てみて下さい。
一番始めの部分がこちらです。
http://www.youtube.com/watch?v=U1wY8Idr1gU&feature=related
続々と面白い楽器が出てくるので、できれば続きも見てみて下さい。
カタリ派の悲劇と副題がついていますが、つまりこの忘れられた王国というのはカタリ派の王国を指しています。カタリ派というのはキリスト教の一派。10世紀頃に発祥し北部イタリアから南フランスを中心に広がりました。12世紀から13世紀にかけてが最盛期だったようです。カタリ派の極端な禁欲主義を始めとする教えは、腐敗し現世の欲にまみれたローマ・カトリック教会を震撼させ、カタリ派を異端として弾圧する動きが起きます。カタリ派が広まった南フランス(オクシタニア)はまた、当時北フランスを手中に収めたフランス王フィリップ2世が、自らの支配下に置きたいと狙う土地でもありました。
利害の一致した教会と王家が手を結び、異端カタリ派を征伐するためのアルビジョワ十字軍が編成されます。1209年から派遣が始まった十字軍は1215年までにほぼ征伐を終え、最後まで抗ったトゥールーズ伯との和平が1229年に結ばれたことで任務を終結します。しかし、引き続き異端審問と名を変えて宗教弾圧は行われたそうです。カタリ派はこうして離散、消滅します。そして南フランスがフランス王国の支配下に入ったことで、実質的にオクシタニアの文化も消滅したと考えられています。
このコンサートは、失われたオクシタニアの文化に対するオマージュでもあります。一番最初に白髪の男性がフランス語で長い語りをしていますが、ここでカタリ派の土地であった南フランス(オクシタニア)の歴史的文化的背景が説明されています。
音楽はカタリ派のものというわけではなく、当時南フランスで盛んだったトゥルバトゥールの音楽を中心に、各時代(950年頃から1460年にかけて)の音楽を取り入れて再現しているようです。イスラムからの影響も色濃く感じられます。
中世と呼んで一括りにするにはあまりにも長い期間。しかしこのルネサンス前のヨーロッパには何か非常に強く惹かれるものがあります。どこからどう手をつけたらいいのかまだ手がかりは掴めないものの、自分なりに確固とした時代のイメージをつかんでみたいとあらためて思いを馳せたことでした。
そのものと言いますのが「Le Royaume Oublié: La Tragédie Cathare(忘れられた王国:カタリ派の悲劇」と名付けられたコンサートです。
2010年7月27日、フランスはナルボンヌのフォンフロワド修道院(L'abbaye de fontfroide)で行われたコンサート。演奏しているのはエスペリオンXXI(Hespèrion XXI)とLa Capella Reial de Catalunya、指揮がジョルディ・サヴァール(Jordi Savall)です。
テレビで偶然見かけた時はもう番組終了直前、ほんの10分くらいしか見られなかったのです。それなのに、妙に気になって気になって仕方なくなってしまったのは、
1)使われている楽器が、これまで見たこともないようなものばかりだった
2)いくつかの言語による語りが入る
3)耳慣れない旋律と歌い方
4)忘れられた王国って何のこと?背景が知りたい
とまあ、こんな理由からです。
物語や歴史的背景は後で話すとして、まず興味深いのが楽器でした。
ものすごく幅の広いリードを使う楽器、斜めにくわえて演奏する笛、バグパイプの従兄弟みたいな楽器、小さいヴァイオリンのような形なのに膝に乗せて縦に構えて演奏する弦楽器、尺八みたいな笛。ベルもあれば、金属製の茶さじみたいなもので叩く弦楽器もある。リュートの胴体みたいな形でハンドルをぐるぐる回して演奏するもの、胡弓みたいなものもあれば三角形のギターみたいなものもあります。どれもこれも、こんな楽器があったの?こんな音がするの?というものばかり。これは本当に面白く見ました。
なんとYouTubeにアップしてくれた人がいたようなので、是非見てみて下さい。
一番始めの部分がこちらです。
http://www.youtube.com/watch?v=U1wY8Idr1gU&feature=related
続々と面白い楽器が出てくるので、できれば続きも見てみて下さい。
カタリ派の悲劇と副題がついていますが、つまりこの忘れられた王国というのはカタリ派の王国を指しています。カタリ派というのはキリスト教の一派。10世紀頃に発祥し北部イタリアから南フランスを中心に広がりました。12世紀から13世紀にかけてが最盛期だったようです。カタリ派の極端な禁欲主義を始めとする教えは、腐敗し現世の欲にまみれたローマ・カトリック教会を震撼させ、カタリ派を異端として弾圧する動きが起きます。カタリ派が広まった南フランス(オクシタニア)はまた、当時北フランスを手中に収めたフランス王フィリップ2世が、自らの支配下に置きたいと狙う土地でもありました。
利害の一致した教会と王家が手を結び、異端カタリ派を征伐するためのアルビジョワ十字軍が編成されます。1209年から派遣が始まった十字軍は1215年までにほぼ征伐を終え、最後まで抗ったトゥールーズ伯との和平が1229年に結ばれたことで任務を終結します。しかし、引き続き異端審問と名を変えて宗教弾圧は行われたそうです。カタリ派はこうして離散、消滅します。そして南フランスがフランス王国の支配下に入ったことで、実質的にオクシタニアの文化も消滅したと考えられています。
このコンサートは、失われたオクシタニアの文化に対するオマージュでもあります。一番最初に白髪の男性がフランス語で長い語りをしていますが、ここでカタリ派の土地であった南フランス(オクシタニア)の歴史的文化的背景が説明されています。
音楽はカタリ派のものというわけではなく、当時南フランスで盛んだったトゥルバトゥールの音楽を中心に、各時代(950年頃から1460年にかけて)の音楽を取り入れて再現しているようです。イスラムからの影響も色濃く感じられます。
中世と呼んで一括りにするにはあまりにも長い期間。しかしこのルネサンス前のヨーロッパには何か非常に強く惹かれるものがあります。どこからどう手をつけたらいいのかまだ手がかりは掴めないものの、自分なりに確固とした時代のイメージをつかんでみたいとあらためて思いを馳せたことでした。
by poirier_AAA
| 2010-11-30 19:10
| 聴く
|
Comments(2)
はじめまして。
サヴァールのコンサートがフォンフロワドであったのを初めて知りました。紹介されているyoutubeの朗読を聞くと、オック語はほんとうに音楽的に思えました。
コンサートと同じ名前のCDが発売されていて、膨大なブックレットにオック語版も入っていてさすがと思いました。
サヴァールのコンサートがフォンフロワドであったのを初めて知りました。紹介されているyoutubeの朗読を聞くと、オック語はほんとうに音楽的に思えました。
コンサートと同じ名前のCDが発売されていて、膨大なブックレットにオック語版も入っていてさすがと思いました。
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by
poirier_AAA at 2010-12-03 17:16
>びるねさん
はじめまして。実は「忘れられた王国」の情報収集中にびるねさんのサイトを拝見しておりました。フォンフロワドでのコンサート、すでにCDや背景をご存知のびるねさんは、更に興味深くご覧になったことでしょう。
わたしは、恥ずかしながらサヴァール=「めぐりあう朝」どまりでして、この「忘れられた王国」を偶然見て、サヴァールの意欲的な活動にとても感心しました。オック語を聞いたのも初めてのことです。すこし開拓してみようと思っています。
はじめまして。実は「忘れられた王国」の情報収集中にびるねさんのサイトを拝見しておりました。フォンフロワドでのコンサート、すでにCDや背景をご存知のびるねさんは、更に興味深くご覧になったことでしょう。
わたしは、恥ずかしながらサヴァール=「めぐりあう朝」どまりでして、この「忘れられた王国」を偶然見て、サヴァールの意欲的な活動にとても感心しました。オック語を聞いたのも初めてのことです。すこし開拓してみようと思っています。