2010年 08月 02日
高校生が選ぶ文学賞 |
フランスの文学賞のひとつに「高校生が選ぶゴンクール賞(Prix Goncourt des lycéens)」というのがあります。名前だけは知っていたけれど、実際どんなものなのか興味を持って調べた事はありませんでした。詳細はこちらをご参考に。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200703050225.html
最近たまたま縁あって手にした小説が、2000年にこの賞をとった作品でした。
Ahmadou Kourouma「Allah n'est pas obligé」
アマドゥ・クルマ著「アラーの神にもいわれはない」(邦訳あり)
まだ最後のページまで辿り着いていませんが、すごいです。語られる話の内容もさることながら、語り独特の繰り返し、独特のフランス語が揃って、他の誰にも真似できないような作品を作り上げていると感じます。読み始めた当初は「なんだ、このフランス語は?」と思ったのが、あっというまに引き込まれて読むのを止められなくなりました。
肝心の本の感想はまた別の機会に書くとして、今日お伝えしたいのは、この本を高校生が評価したという事実です。他にどんな本がこの賞をとっているんだろうと調べてみますと、
2007年 ブロデックの報告書フィリップ・クローデル
2006年 マグヌス シルヴィー・ジェルマン
2004年 ある秘密 フィリップ・グランベール
2003年 ファラゴ ヤン・アペリ
2001年 碁を打つ女 シャンサ
2000年 アラーの神にもいわれはない アマドゥ・クルマ
1995年 フランスの遺言書 アンドレイ・マキーヌ
日本語に翻訳されている本だけでも、これだけあります。
正直に告白すると「碁を打つ女」と「フランスの遺言書」は東京にいた時に原書を買っておりました。評価が高かったので、是非読まなきゃと思ったのです。でも、フランス語で読むのに耐えられなくて最初の20ページあたりで挫折しました。この2冊も高校生が選んでいたとは!
こうしてまじまじと選ばれた作品を眺めてみると、フランスの高校生はかなり重い話を選んでいるなぁと感じます。歴史を背負った話、とでも言いましょうか。
例えば、今読んでいる「アラーの神にもいわれはない」はコートジボワールの少年兵の話ですし、「碁を打つ女」は日本軍が満州にいた時代の話、「フランスの遺言書」は20世紀をフランスとロシアで生きた祖母の記憶をたどる話、「ブロデック」「マグヌス」「ある秘密」はどれもナチスやホロコーストが絡む話のようです。
フランス人と一口で言ってもルーツは本当にいろいろです。地続きの隣国、すぐ向こうのアフリカ大陸、中東という地理的環境も、否応なく歴史に目を向けさせます。気になり始めたら無関心ではいられません。子どもから大人になろうという多感な時期に、こういった作品に触れて考える機会を持てるなんて実に絶妙なタイミング、とてもラッキーな経験なのではと思います。
高校生は、読む本のカテゴリーで言ったら、もう子どもではありません。大人と同じものを読めるんですよね。自分の高校生時代を考えてみると、ろくな本を読んでいなかったなぁと思います。読んではいたけれど、夢物語系が多かったです。いい国語の先生のおかげで「舞姫」とか「シーシュポスの神話」なんかを情熱を持って読んだことはよく覚えていますが、いわゆる新作として世に出てくる本を手に取ることはありませんでした。あの頃、こういった歴史が絡む読み応えのある小説を読んでいたら、どうだっただろう?皆で同じ本を読んで、ああだこうだと議論する機会があったらどうだっただろう? そんなことを考えてしまいます。
フランスの高校生、侮るべからず。しばらくは高校生が選んだ作品を集中的に読んでみようかなぁと思っています。とりあえずは、東京時代に買ったまま読み終わっていない2冊の完読を目指そう。夏休みの荷物に入れておかなきゃ。
(昨日、ふらりと寄ったfnacでまた本を買ってしまいました。件の「マグヌス」とペーパーバックになった「The lost symbol」。新しく本を買う時は、読み終わっていない本を全部読んでからにしてよ〜という夫の言葉が聞こえてきます・・・)
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200703050225.html
最近たまたま縁あって手にした小説が、2000年にこの賞をとった作品でした。
Ahmadou Kourouma「Allah n'est pas obligé」
アマドゥ・クルマ著「アラーの神にもいわれはない」(邦訳あり)
まだ最後のページまで辿り着いていませんが、すごいです。語られる話の内容もさることながら、語り独特の繰り返し、独特のフランス語が揃って、他の誰にも真似できないような作品を作り上げていると感じます。読み始めた当初は「なんだ、このフランス語は?」と思ったのが、あっというまに引き込まれて読むのを止められなくなりました。
肝心の本の感想はまた別の機会に書くとして、今日お伝えしたいのは、この本を高校生が評価したという事実です。他にどんな本がこの賞をとっているんだろうと調べてみますと、
2007年 ブロデックの報告書フィリップ・クローデル
2006年 マグヌス シルヴィー・ジェルマン
2004年 ある秘密 フィリップ・グランベール
2003年 ファラゴ ヤン・アペリ
2001年 碁を打つ女 シャンサ
2000年 アラーの神にもいわれはない アマドゥ・クルマ
1995年 フランスの遺言書 アンドレイ・マキーヌ
日本語に翻訳されている本だけでも、これだけあります。
正直に告白すると「碁を打つ女」と「フランスの遺言書」は東京にいた時に原書を買っておりました。評価が高かったので、是非読まなきゃと思ったのです。でも、フランス語で読むのに耐えられなくて最初の20ページあたりで挫折しました。この2冊も高校生が選んでいたとは!
こうしてまじまじと選ばれた作品を眺めてみると、フランスの高校生はかなり重い話を選んでいるなぁと感じます。歴史を背負った話、とでも言いましょうか。
例えば、今読んでいる「アラーの神にもいわれはない」はコートジボワールの少年兵の話ですし、「碁を打つ女」は日本軍が満州にいた時代の話、「フランスの遺言書」は20世紀をフランスとロシアで生きた祖母の記憶をたどる話、「ブロデック」「マグヌス」「ある秘密」はどれもナチスやホロコーストが絡む話のようです。
フランス人と一口で言ってもルーツは本当にいろいろです。地続きの隣国、すぐ向こうのアフリカ大陸、中東という地理的環境も、否応なく歴史に目を向けさせます。気になり始めたら無関心ではいられません。子どもから大人になろうという多感な時期に、こういった作品に触れて考える機会を持てるなんて実に絶妙なタイミング、とてもラッキーな経験なのではと思います。
高校生は、読む本のカテゴリーで言ったら、もう子どもではありません。大人と同じものを読めるんですよね。自分の高校生時代を考えてみると、ろくな本を読んでいなかったなぁと思います。読んではいたけれど、夢物語系が多かったです。いい国語の先生のおかげで「舞姫」とか「シーシュポスの神話」なんかを情熱を持って読んだことはよく覚えていますが、いわゆる新作として世に出てくる本を手に取ることはありませんでした。あの頃、こういった歴史が絡む読み応えのある小説を読んでいたら、どうだっただろう?皆で同じ本を読んで、ああだこうだと議論する機会があったらどうだっただろう? そんなことを考えてしまいます。
フランスの高校生、侮るべからず。しばらくは高校生が選んだ作品を集中的に読んでみようかなぁと思っています。とりあえずは、東京時代に買ったまま読み終わっていない2冊の完読を目指そう。夏休みの荷物に入れておかなきゃ。
by poirier_AAA
| 2010-08-02 19:29
| フランス語を読む
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