2010年 02月 26日
イスラム① フランスのイスラム教徒 |
火曜日の夜、何気なくつけたテレビで「フランスのイスラム教徒(Musulmans de France)」というドキュメンタリ番組を放送していました。フランスには本当に多くのイスラム教徒、イスラム文化圏出身者がいます。彼らがどんな経緯でフランスに住むようになり、移民としてどんな立場にあったのか、全体像を知るためのとても良くできた番組でした。
年代によって以下のように3部に分けられ、主にマグレブ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)出身者にスポットをあてて話が進みました。
«Indigène (植民地の住人:1904-1945)»
«Immigrés (移民:1945-1981)»
«Français (フランス人:1981-2009)»
1904年、フランス北部の炭坑で働くため、当時植民地だったアルジェリアからアルジェリア人がやって来ました。それから約100年、2007年にニコラ・サルコジが3人の移民系女性を入閣させるに至るまでのアラブ系イスラム教徒の移民の歴史です。
イスラムは歴史的に常に無視できない勢力を持ち、文化的にも非常に豊かな存在なわけですが、ことフランスでの移民の歴史を見る限り、彼らの立場は決して良くありません。貧しい労働者として搾取され、あるいはフランス人の生活を脅かす存在として恐れられ、あるいはフランス社会の厄介者のように蔑まれることも多かったのです。
100年ということは、すでに移民の3世代目、4世代目が存在します。ひたすら故国に帰ることを夢見て異国で働いていた時代。やがて子どもが生まれ、フランスで家族の生活が始まります。2世代目は、家庭内ではイスラム文化圏の伝統を守り、外ではフランス人として教育を受けた、バイ・カルチャー世代です。両親の故郷はバカンスの行き先でしかありません。そして3世代目ともなると祖父母の国はもはや遠い記憶の彼方に押しやられ、イスラム教の戒律を守る意識も薄れ、フランスに生まれたフランス人と何ら変わらなくなります。
彼らの抱える問題は、メンタルな部分では完全にフランス人であるにもかかわらず、名前や外見によって依然として不利な立場におかれていることです。祖父母の時代とは違い、もう帰る国もなく、フランスだけが彼らの祖国です。にもかかわらず祖国は彼らをなかなか認めようとしない。その行き場のない閉塞感を土壌として、2005年のパリ郊外での暴動が起きたと言われています。
他のヨーロッパ諸国からの移民と比べても圧倒的に不利な立場にあった彼らが、それでも徐々にフランス社会に溶け込み、ついには3人の女性が入閣を果たすまでになった、これは画期的な同化の例なのではないかと個人的には思います。依然として移民絡みの問題はあとをたたず、移民の受け入れ方については試行錯誤が続いているわけですが、それでも(少なくとも初等教育では)公平な教育のチャンスを与え、自国の民として育てていくフランスのやり方には見習うべきところが多いと感じます。
番組の最後に、移民出身の男性が「恵まれた立場にはなかった自分たちだけれど、教育を受け、社会に立場を得ることで(移民社会が)十分に成熟したら、移民出身者からフランス社会に向けてきちんと発信することが出来るようになる。そうしたら2005年のような暴動は回避できるようになるはずだ」と発言していたのが印象に残りました。
また何人もの人たちが、9.11のことを挙げて「イスラム文化圏出身者のこれまでの努力がすべて無に帰すような衝撃的な出来事だった」と話していたのも印象的でした。
イスラム系移民をテーマにしていますが、移民の子のアイデンティティなど、出身国を問わない普遍的なテーマも多く含まれます。自分も移民としてフランス社会に生活している今、とてもじゃありませんが対岸の火事とは思えず、真剣に見ました。
この番組は3月11日にDVDとして発売されるそうです。現代フランス社会を知りたい人にとっては、良い参考になると思います。番組の大筋はこちらをどうぞ。
http://www.france5.fr/et-vous/France-5-et-vous/Dossiers-thematiques/Musulmans-de-France/p-5320-La-serie-documentaire.htm
年代によって以下のように3部に分けられ、主にマグレブ(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)出身者にスポットをあてて話が進みました。
«Indigène (植民地の住人:1904-1945)»
«Immigrés (移民:1945-1981)»
«Français (フランス人:1981-2009)»
1904年、フランス北部の炭坑で働くため、当時植民地だったアルジェリアからアルジェリア人がやって来ました。それから約100年、2007年にニコラ・サルコジが3人の移民系女性を入閣させるに至るまでのアラブ系イスラム教徒の移民の歴史です。
イスラムは歴史的に常に無視できない勢力を持ち、文化的にも非常に豊かな存在なわけですが、ことフランスでの移民の歴史を見る限り、彼らの立場は決して良くありません。貧しい労働者として搾取され、あるいはフランス人の生活を脅かす存在として恐れられ、あるいはフランス社会の厄介者のように蔑まれることも多かったのです。
100年ということは、すでに移民の3世代目、4世代目が存在します。ひたすら故国に帰ることを夢見て異国で働いていた時代。やがて子どもが生まれ、フランスで家族の生活が始まります。2世代目は、家庭内ではイスラム文化圏の伝統を守り、外ではフランス人として教育を受けた、バイ・カルチャー世代です。両親の故郷はバカンスの行き先でしかありません。そして3世代目ともなると祖父母の国はもはや遠い記憶の彼方に押しやられ、イスラム教の戒律を守る意識も薄れ、フランスに生まれたフランス人と何ら変わらなくなります。
彼らの抱える問題は、メンタルな部分では完全にフランス人であるにもかかわらず、名前や外見によって依然として不利な立場におかれていることです。祖父母の時代とは違い、もう帰る国もなく、フランスだけが彼らの祖国です。にもかかわらず祖国は彼らをなかなか認めようとしない。その行き場のない閉塞感を土壌として、2005年のパリ郊外での暴動が起きたと言われています。
他のヨーロッパ諸国からの移民と比べても圧倒的に不利な立場にあった彼らが、それでも徐々にフランス社会に溶け込み、ついには3人の女性が入閣を果たすまでになった、これは画期的な同化の例なのではないかと個人的には思います。依然として移民絡みの問題はあとをたたず、移民の受け入れ方については試行錯誤が続いているわけですが、それでも(少なくとも初等教育では)公平な教育のチャンスを与え、自国の民として育てていくフランスのやり方には見習うべきところが多いと感じます。
番組の最後に、移民出身の男性が「恵まれた立場にはなかった自分たちだけれど、教育を受け、社会に立場を得ることで(移民社会が)十分に成熟したら、移民出身者からフランス社会に向けてきちんと発信することが出来るようになる。そうしたら2005年のような暴動は回避できるようになるはずだ」と発言していたのが印象に残りました。
また何人もの人たちが、9.11のことを挙げて「イスラム文化圏出身者のこれまでの努力がすべて無に帰すような衝撃的な出来事だった」と話していたのも印象的でした。
イスラム系移民をテーマにしていますが、移民の子のアイデンティティなど、出身国を問わない普遍的なテーマも多く含まれます。自分も移民としてフランス社会に生活している今、とてもじゃありませんが対岸の火事とは思えず、真剣に見ました。
この番組は3月11日にDVDとして発売されるそうです。現代フランス社会を知りたい人にとっては、良い参考になると思います。番組の大筋はこちらをどうぞ。
http://www.france5.fr/et-vous/France-5-et-vous/Dossiers-thematiques/Musulmans-de-France/p-5320-La-serie-documentaire.htm
by poirier_AAA
| 2010-02-26 23:58
| 歴史と文化を学ぶ
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